3 ほころび始める王国《追放者SIDE》
追放者サイドです。次回は主人公サイドに戻ります。
SIDE ゲーテラ
王宮の一室で、三人の男たちが談笑していた。
「ふん、ようやく忌々しいフレイめがいなくなったか」
「ははは、せいせいしたわ。奴に不利な証言をしてくれて感謝するぞ」
「ありがとうございます、大臣、補佐官」
彼らは王国の内務大臣ゲーテラとその補佐官ラギス、そして宮廷魔術師の筆頭を務める男ジューガだ。
「よりいっそう我らのために尽くせよ、ジューガ」
「はっ」
「しかし、あいつの実力はかなり高かったのでしょう、父上?」
補佐官が言った。
彼は大臣の息子である。
大臣が引退した後は、彼がその座を引き継ぐことになっている。
「国外に追いやってしまって大丈夫なんですか?」
「その話は散々しただろう」
「いざいなくなると、やはり不安で……」
「いいか。今までの成果を見ると、確かに奴の実力はなかなかのものだ」
ここでの『成果』とは、もちろん改竄する前のものだ。
彼らはフレイの仕事の成果報告を書き換え、王に渡していたのである。
特にここ最近の成果はかなり低く書いておいた。
おかげで、王もフレイは宮廷魔術師を務めるだけの能力がない、と判断してくれたようだ。
「認めたくはありませぬが……純粋な魔法の実力なら、間違いなく彼が一番でしょうな」
「ふふ、宮廷魔術師筆頭ともあろうお前が、弱気なことでは困るぞ」
「無論、それはここだけの話でございます」
「うむ」
大臣はうなずき、
「まあ、フレイの実力は高い。そこは認めてやろう。だが、しょせんたった一人の魔法使いができることなど、たかが知れている」
「そういえば、彼はあの伝説の魔法使い『大賢者リディア』の子孫だということでしたね」
「はははは、戯言ですよ」
補佐官の言葉に筆頭魔法使いが笑った。
「リディアなど実在すら疑われる超古代の魔法使いです。仮に実在したとして、その子孫であるかどうかなど証拠もありませんし。奴が自分の名前に箔をつけるために、でたらめを言っているだけでしょう」
「とにかく追放できてよかった。魔法はこの国の要。それを統べる地位にある者が、我らの言いなりにならないようでは何かと不都合だからな」
大臣が笑う。
「無論、お前はそうではないと信じているぞ」
「私の忠誠は、大臣に捧げておりますゆえ」
宮廷魔術師が深々と頭を下げた。
と、懐に入れた魔導装置がヴーンと振動した。
「──通信が入った。少し失礼する」
言って、大臣が通信機を取る。
携帯用の魔導通信機である。
高価な魔導装置を使った最新機器で、王国でこれを持っているのは国王と数人の大臣だけだった。
「では、私は席を外しましょうか」
「いや、かまわん。お前も聞いておけ」
席を立とうとした筆頭魔法使いを、大臣が止める。
「南の森に、魔獣が出現したとのことです!」
受信機から報告が聞こえてきた。
「対魔獣用の結界があるだろう。よほど強い個体でなければ、国内には入ってこれんはずだ」
「それが……結界を破壊できるほど強力な魔獣の様子で……」
「ならば担当の宮廷魔術師や魔法戦団に迎撃させろ」
「そ、それが──」
相手は一瞬言い淀み、
「宮廷魔術師──いえ、元宮廷魔術師第三席、フレイ・リディア様が迎撃担当でして……」
「ちっ、奴が担当か。なら、魔法戦団を向かわせろ」
「魔法戦団はすでに迎撃に向かったのですが……一部隊が敗走。増援を要請しています!」
「一部隊がまるまる敗走だと? 普段はあっさり撃退していただろう」
「普段は実質……フレイ様がお一人で追い払っていたので……」
「なんだと……?」
大臣は驚いた。
フレイ一人がいないだけで魔獣に苦戦するとは。
いや、魔法戦団がたるんでいるだけだ。
「……なら増援を送れ」
彼が抜けたくらいで、王国の対魔獣戦力が揺らぐことなどあり得ない──。
大臣はそう考えていた。
──フレイがいなくなったことで、今後の王国が大規模な魔獣災害に襲われることも。
──大臣たちはその責任を問われ、罪人として裁判にかけられることも。
今はまだ想像もしていなかった。






