3 到着
移動手段は例によって英霊の一人、『暁の竜人』ジルが変身した竜である。
その竜に乗り、あっという間にキラルの国境付近にたどり着いた。
すでに戦闘が始まってから、それなりの時間が経っているようだった。
魔法戦団は防御に徹しながら魔獣2体と交戦し、少しずつ後退している。
あちこちから火の手が上がっていた。
と、一人の魔術師が地面にうずくまっているのが見えた。
「そこに降りてくれ、ジル」
「りょーかいっ」
元気よくうなずいて、急降下するジル。
途中近づいてきた魔獣を、ドラゴンブレスで追い払い、魔術師の側に着地する。
「ありがとう。いったん戻ってくれ、ジル」
「はいはーい、またのご利用をお待ちしてまーす」
ジルの姿が光とともに消える。
彼女は戦闘力はそれほど高くないため、いったん元の異空間に戻ってもらったのだ。
俺は魔術師の方を向き直る。
「フレイ……先輩……!?」
秀麗な顔立ちをした黒髪の青年だった。
「カイルか……?」
キラル王国での俺の後輩魔術師――カイルだ。
体のあちこちから血を流している。
吐血に裂傷、火傷、たぶん骨折もしているだろう。
こんなになるまで戦ったのか……。
「大丈夫か」
「な、なんとか……」
「今、手当てをする。適切な英霊を選出してくれ」
『この者の治療に適切な能力を持つ英霊を召喚します』
俺の前で閃光が弾け、一人の女が現れた。
「『紅の聖女』スカーレット、参上ですわ」
三つ編みにした赤い髪と赤い僧衣の美女だ。
「彼がひどい怪我を負っている。手当を頼めるか、スカーレット」
「主様の仰せのままに。治癒呪文を使いますわね」
スカーレットはカイルの側にしゃがみこんだ。
「【聖神の癒やし】」
呪文とともに白い輝きがあふれる。
「な、治った……! 体が、完全に――?」
カイルは驚いた顔だ。
「信じられない……我が国の大神官でもこれほどの治癒呪文は使えないはず……」
「彼女は史上最高と謳われる聖女だ。治癒呪文の効果も桁違いなんだよ」
俺はカイルに微笑んだ。
「史上最高の聖女……?」
「お前は魔法戦団に指示を出して、後ろに下がらせてくれ。今から俺が魔族と魔獣を討つ」
「まさか、フレイさん一人で……?」
「討ちもらしがあったときは、お前たちで足止めしてくれ。気づき次第、俺がそいつを討つ」
言って、俺はニヤリと笑った。
「いや、『俺たち』が、だな。俺には最強の味方が数えきれないほどいるんだ。だから安心して見ていてくれ」
「な、何を、言って……?」
俺は彼に背を向け、進みだす。
前方には巨大な魔獣が何体も立ちはだかっていた。
さらにその上空に人型のシルエットが見える。
あれが魔族だろう。
どれくらいの数の英霊なら対抗できるだろうか。
まあ、いつも通りに適切な者を選出してもらい、撃破するだけだ。
「ああ、それと――」
俺はカイルの方を振り返った。
「よくここまで耐えてくれた。魔獣13体を相手に、魔法戦団を率いてこれだけの時間戦い抜いたんだ……お前はすごい奴だよ、カイル」
「フレイさん……」
「お前がいるかぎり、キラルは大丈夫だ。上には汚い連中もいるかもしれないが、この国を頼むぞ」
――俺の、代わりに。






