7 キラル王国、侵攻される1《追放者SIDE》
SIDE カイル
キラル王国は、二十体を超える魔獣に襲われていた。
「我は『赤の魔王』ラギリム様の弟にして腹心、ギギリム! 人間どもを滅ぼしに来た!」
魔獣たちを従える魔族ギギリムが朗々と叫ぶ。
「退くな、みんな! 立ち向かえ! 我らキラル王国宮廷魔術師の力、今こそ見せるとき!」
宮廷魔術師の一人、カイルは周囲に呼びかけた。
だが、他の宮廷魔術師はいずれも及び腰だ。
相手が強すぎる。
それに加え、太平の世で実戦などロクに経験していないのが響いていた。
もちろん、カイルとて怖い。
恐ろしくてたまらない。
それでも、なんとか逃げずに立ち向かえるのは――彼の影響があった。
かつて王国に在籍し、今は理不尽な理由から追放されてしまった宮廷魔術師――フレイ・リディア。
「俺もフレイ先輩みたいに戦うんだ……! 王国を守るために――」
以前に一度だけ、カイルはフレイの戦いぶりを見たことがあった。
といっても、フレイは戦うところを周囲に見せないようにしていたらしく、カイルがそれを見てしまったのは半ば偶然だ。
それは数年前の出来事――。
国境沿いに、結界をすり抜けて魔獣が現れた。
それを迎撃すべく、当時の宮廷魔術師第三席フレイが現場に向かったのだが――カイルはその後で命令を受け、彼を補佐すべく遅れて現場に到着した。
そこで見たのは、
「なんだ、あれは――」
カイルは呆然と立ち尽くした。
一瞬、だった。
フレイの側に現れた美女が、一撃で数体の魔獣を消し飛ばしてしまったのだ。
その魔法の威力はすさまじく、森が一つ消滅して巨大なクレーターができたほどだった。
「……できるだけ周りに被害を出さないように、って言っただろう」
「言われたとおりにしたが? あたしが本気を出したら、辺り一帯が荒野になるぞ」
魔術師の美女が肩をすくめた。
フレイはため息をつき、
「……やっぱりハーヴェルにした方がよかったな。お前は魔力が強すぎるんだ、メーヴェ」
「ふふ、全英霊中トップクラスの魔力があるからな、あたしは」
「多少は加減することも覚えてくれ……」
苦笑するフレイ。
彼にこんな魔術が使えるとは知らなかった。
おそらく召喚系の魔術だろう。
あの美女はフレイの使い魔だろうか。
「とんでもない威力の呪文だ……」
大陸最強と言われる『獄炎導師』ガーレンや『魔導雷帝』エミルでさえ、彼女の足元にも及ばないだろう。
それほど――圧倒的な実力。
「メーヴェ、と言っていたな」
600年前、魔王ガルヴェラと相打ちになったと言われる伝説の最強魔術師と同じ名前だった。
あるいは彼女にちなんだ名前を使い魔に付けたのかもしれない……。






