5 結論
「あたしは――魔王を信用できない」
メーヴェが言った。
「決裂、か」
ガルヴェラがため息をついた。
メーヴェは彼女をにらみ、それから俺に視線を戻した。
「だけど、判断をくだすのは主だ。あんたのことは信用しているよ」
「メーヴェ……」
「だから――主が決めたことには従うさ」
「……ありがとう、メーヴェ」
俺は彼女に深々と頭を下げた。
「だけど、一つ命令を設定しておいてほしい。もし魔王が裏切ったら、即座に攻撃していいって」
メーヴェが俺を見据える。
その眼光はさっきまでの数倍厳しかった。
「それが条件だ」
「……我は異存ない。かつての魔王として誓おう。約束は決して破らぬと」
魔王が告げた。
「もし破った場合は――メーヴェの言う通り、我を攻撃せよ」
「分かった。そこまで言うなら」
俺は二人にそれぞれうなずいた。
――ということで、いちおうの結論は出た。
魔王はアーシアとその周辺十か国程度を、魔獣の脅威から守ってくれる。
俺は、魔王が他の魔族に狙われた際、援軍として英霊を送る。
これは宮廷魔術師としてではなく、フレイ・リディア個人としての同盟だ。
でなければ、アーシアにまでその責が及ぶ。
細かい決め事については、今後も随時話し合うという形になった。
ただ、基本的なスタンスは以上である。
「我が申し出を受けてくれたことを感謝する、フレイ」
「互いに約束が破られないことを願うよ、ガルヴェラ」
俺たちはそう言って、別れた。
「結局、交戦するような事態にはならなかったな」
異空間から元の場所へ戻る途中、俺は大きく息を吐きだした。
なんだかんだ、気持ちが張り詰めていたのだ。
一気にドッと疲れが出た感じだった。
「堂々とした交渉でした、主」
ハーヴェルが微笑む。
「ありがとう」
「俺としては一戦交えるつもりだったから、ちょいと物足りねえけどな」
ゴルがガツンと両拳を打ち合わせた。
こいつ、けっこうな戦闘マニアなんだよな……。
「野蛮ですわね」
聖女らしく眉をひそめるスカーレット。
そして、メーヴェは――。
「あたしは魔王なんて信じない」
ふんと鼻を鳴らす彼女。
まあ、因縁の敵といきなり和解するわけがない。
ただ、その上で彼女は俺の判断を尊重してくれた。
「……悪いな、メーヴェ」
「謝るな。あたしはあんたを信じてる。いつも通りに命令すればいい」
言って、メーヴェはようやく微笑んでくれた。
と、
「主、間もなく異空間を出ます」
前方から光が差しこんでくる。
帰還だ――。






