3 魔王ガルヴェラ1
「くだらん。あたしが知っている魔王の姿とは全然違うぞ。そんな変身魔術であたしを惑わすつもりか」
メーヴェが鼻を鳴らした。
「魔力の質は、魔王ガルヴェラによく似ている――いや、魔王そのものだが」
「お待ちください、メーヴェ様」
ハーヴェルが言った。
「変身魔術が使われている気配はありません」
呪文の制御に誰よりも長けた彼が言うなら、事実なのだろう。
「……じゃあ、あれが魔王の真の姿だと? あたしが戦った魔王は屈強な大男だったぞ。性別からして違う」
「あのときの姿こそ、変化させられていたものだ。これこそが我の真の姿。偽りは申しておらぬ」
「変化『させられた』?」
俺は眉を寄せた。
「まるで誰かに強制されたような物言いだな。魔王のお前に強制できる存在なんているのか?」
「……いるさ」
ガルヴェラがうつむく。
「魔王神が、な」
「魔王……神?」
俺はおうむ返しにつぶやいた。
聞いたことのない単語だ。
「……誰か知っているか?」
念のために四人に聞いた。
四人とも首を左右に振った。
「人間には知るべくもない。我ら魔族とて、その存在を知る者は限られたごく一部だ」
ガルヴェラが言った。
「魔族のトップは七人の魔王――だが、さらにその上に位置する存在がいる。魔王たちの神ともいうべき最上位存在……それこそが魔王神だ」
「……ふん、ではお前は魔族の支配者ではない、と?」
「いや、支配者であることは確かだ。魔王神は魔王たちの統治に干渉しない」
と、魔王。
「話が少し逸れたな……本題に戻そう。我は魔王の座を退くことになった」
「えっ」
「できれば魔界から離れて暮らしたい。そこでこの世界に近しい空間に居城を築いたのだ」
「この異空間で生活していく、ってことか?」
「その通り」
魔王がうなずく。
「人間界のすぐそばに陣取る気か? ふざけるな。侵略の前段階だろう!」
メーヴェが怒る。
「ここから先は取引だ。人間よ――おそらく汝は、世界の誰よりも強大な力を持っている――受け継いでいる。だからこそ、汝と話したい」
メーヴェを無視し、ガルヴェラが俺を見た。
「魔族は一枚岩ではない。魔王同士は互いに戦えないよう、魔王神に見張られているが――元魔王となれば、その限りではない。我を狙う魔族が現れるかもしれぬ」
「ガルヴェラを殺そうとたくらむ魔族がいる、ってことか?」
「左様」
魔王が重々しくうなずいた。
「かつて人の世界を滅ぼそうとしたお前を、なぜ守らなければならない」
「侵略は我の意思ではない。なぜなら我は――いや、すべての魔王は魔王神の駒に過ぎないからだ」
メーヴェの言葉にガルヴェラが言った。






