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俺たちはジル竜に乗り、『メルヴァーユ神殿』に向かって飛んでいた。
ルーファスにジュリエッタ……いずれも一癖も二癖もある英霊だ。
実力に関しては二体とも文句なしなんだけど、ルーファスは怠惰だし、ジュリエッタは『自分に頼るな』という態度を譲らなかったし……積極的に力を貸してくれる感じじゃなかった。
「せめて最後の一人くらいは仲間にしたいな……」
「もしかして主、落ちこんでる?」
隣からメーヴェがひょこっと俺の顔をのぞきこんだ。
「うーん、俺って人望ないのかな。二人とも協力してくれなかったし」
「そんなことないっ!」
ついネガティブな言葉をもらしたとたん、メーヴェが力説した。
「あたしは――」
青い瞳が俺をまっすぐ見つめている。
「あたしは……あたしが力を貸すのは、相手が主だから」
「メーヴェ?」
「あんたが――フレイが相手だから、力を貸してるんだぞ? 他の誰でもない、あんただから……力になりたいって思える。特別な存在なんだから」
「特別な、存在……」
「あ、いえ、その、変な意味じゃないからねっ」
メーヴェはなぜか顔を赤らめた。
それから二十分ほど飛ぶと眼下に白い建物が見えてきた。
「あれがメルヴァーユ神殿か」
丘の上にそびえる美しい白亜の神殿だ。名前の通り慈愛の女神であるメルヴァーユを祭っている。
俺たちは地上に降り、神殿の入り口に向かった。
『ようこそ! メルヴァーユ神殿に!』
『十年連続、主要十二神中で満足度ナンバーワン!』
『お土産あり〼』
など、観光地みたいな垂れ幕がいくつもあった。
なんだろう、このノリ……。
『この先は愛し合う二人で進むこと』
入口のところに、そう書いてあった。
「ん、どういうことだ?」
「メルヴァーユ神殿は夫婦や恋人など、愛し合う者同士で入ることになっているんです。集団で入るのは、基本的に禁止されています。教義上の問題ですね」
『紅の聖女スカーレット』が解説してくれた。
「恋人や夫婦でか……」
「あ、でも形式的なもので、とりあえず二人組で入ればOKみたいなところもあります」
「意外と緩いんだ……」
「なので、わたくしと一緒に行きませんか、主?」
スカーレットが立候補した。
「Aランク英霊の身ではありますが、同じ『聖女』の二つ名を持つ相手なら、わたくしにもできることがあるかもしれません」
「確かに……じゃあ、一緒に行こうか」
「はい、主」
スカーレットが俺の側に寄った。
……ん、なんかくっつきすぎでは?
「だって久しぶりに主とご一緒できるんですもの」
「『赤の魔王』戦の消耗で、しばらく待機状態だったからな……」
俺は彼女を見つめた。
「もう完全に元通りなのか、スカーレット」
「主がわたくしを心配してくれている……ああ、これぞまさしく愛……」
「いや、愛って」
飛躍しすぎじゃないか?
「ちょっと、スカーレット! あんた、どさくさに紛れて、思いっきりアプローチしてない!?」
メーヴェが出てきた。
「だいたい、二人組でいいなら、あたしと一緒でもいいじゃない!」
「あらあら、メーヴェ様。もしかしてヤキモチですか。ふふ」
スカーレットが上品に微笑む。
ただ、その目はどこか挑発的な光をたたえていた。
「むー……なんか戦いを挑まれてる感あるんだけど」
「うふふ、気のせいですよ。わたくしはそんな好戦的な性格ではありませんもの」
「そうかなぁ」
「あ?」
メーヴェのつぶやきにスカーレットが一瞬、すごい表情になった。
「えっ!? えっ!?」
俺とメーヴェは思わず顔を見合わせる。
「あ、いえ、おほほほほ……失礼」
が、気が付けば、スカーレットはいつも通りの柔和な表情に戻っていた。
うーん、今のは見間違い……じゃないよな?
そういえば、敵が消滅する前で浄化魔法を使ったり、スカーレットって『聖女』の割に妙に好戦的な一面があるんだよな。
見た目は優しくておしとやかな女性なのに。
「ともかく、ここはわたくしにお任せくださいませ。そもそもメーヴェ様は魔法使いであって神官や僧侶でありません。ここでは力になれないと思いますよ?」
「むむむ……そ、そうだけど」
「スカーレットの言うとおりだ。ここは俺と彼女に行かせてくれ」
俺はそう言ってスカーレットとともに入口に進んだ。
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