6 ゲーテラ、任務が果たせずに焦る《追放者SIDE》
王国南部の森に現れた魔獣を退治する――。
すでに数日が経過していたが、討伐作戦はことごとく失敗。
いまだに魔獣は暴れているようだ。
すでに辺境のいくつかの町が被害にあっており、魔獣退治の陳情や苦情が何度となく寄せられているという。
「くそ、たかが魔獣一匹をなぜ倒せん!」
内務大臣のゲーテラは怒りが収まらなかった。
魔法戦団の増援をすでに五度送った。
そして、いずれも敗戦。
今まで、こんなことは一度もなかったというのに――。
「そうか、今までになく強大な魔獣ということか。ならば、国を挙げての討伐作戦も視野に入れねばならんな」
「それが、その……」
進言したのは、彼の腹心ともいうべき筆頭宮廷魔術師ジューガだ。
「今回現れた魔獣――『ビッグボア』は分類上は中級なのです。国を挙げての討伐対象とは、上級のものになりますので……」
「何? では、今回の魔獣はそこまで強くないということか?」
「分類上、最強クラスよりは落ちるということですね」
と、ジューガ。
「では、なぜ勝てんのだ」
「魔法戦団は長らく魔獣との戦闘経験がありませんでしたので……」
「むう……魔獣のほとんどは国境付近の対魔獣結界で我が国に入ってこられないのだったな」
「ええ。たまに侵入してきたものは、あのフレイが倒していたようですが……彼は一人でいつの間にか片付けていたため、討伐の詳細は不明なのです」
「……実はフレイが魔獣を単独で倒せるほどの実力者だった、というのか?」
「いえ、彼は確かに優秀な魔術師でしたが、魔獣を単騎で葬るなど――それこそ神話や歴史上の英雄クラスでなければ不可能です」
「むむむ……では、フレイはどうやって魔獣を倒していたというのだ」
ゲーテラは歯噛みした。
だが、あまり迷っている時間はない。
「とにかく、魔法戦団を向かわせろ。他に有効な手立てはないのか? 封印するとか異界に送り返すとか――」
「残念ながら、魔獣対策は二つだけです。討伐するか、放置するか」
ジューガが言った。
「放っておいても、数日もすれば魔獣は異界に戻ることがほとんどです。つまり、もうそろそろ帰るのではないかと――」
「馬鹿者! それでは私が魔獣に対して何もできなかったことになるではないか!」
ゲーテラが叱責した。
「私のメンツというものを考えろ! 重要なのは魔獣によって辺境の民どもが被害を負うことではない。この私が無能者として扱われるか否か、ということだ」
「し、失礼いたしました……」
ジューガはすっかりかしこまっている。
「とにかく戦団を差し向け続けろ。負けたなら、当然次はもっと多くの人数で、もっと優秀な者たちでことにあたれ。いいな!」
「はっ」
ジューガは一礼して出て行った。
「くそ、結局は力押ししかできぬということではないか……」
ゲーテラはまた歯噛みした。
今は、とにかく魔法戦団が魔獣を倒してくれることを祈るしかない。
そろそろ討伐を成功させないと、王からさらに厳しく責任を追及されるだろう。
いくら平時をきっちり取り仕切っていても、有事の際に結果を出せなければ、無能者として今のポジションから外されることもあり得る。
宮廷内での地位争いはそれだけシビアだ。
「この私が王の信頼を失って降格……いや、そんなことはあり得ない。私はまだまだ栄華を極めてみせる――」
こみ上げる嫌な予感を振り払い、ゲーテラはひとりごちた。






