P3 婚約者
12月4日
書類上のみ存在する非番の今日。
なんとか午前中だけ空き、エルドの家で結婚式の打ち合わせができた。
エルドのご両親、二人とも本当に優しい。
お父様は、私が聖女でありながら肉食すると知っても驚かない。
ご本人が、肉を食べられないのが辛くて神職を挫折したらしいので、責めもしない。
自分で狩った鳥獣の肉を料理して、食べさせてくれた。
「肉を食べないと、力が出ないよね」
完全同意。
肉食すると光魔法の効果が落ちるというけれど、別にそんなことはない。
少なくとも、私はそうだ。
魔法は体力も使う。大量の魔力を扱うなら、それだけ体力も必要になる。
なのに神殿は、聖女に菜食生活を強いる。
「粗食が心を鍛える」と教えるけど、その理屈なら貧民街は聖人だらけのはずでは?
(……まあ、この考え方が神力の濁りの一因かもしれないし。
退職までは、ここぞという時だけにしとくか)
エルドのお母様は、帰りに残ったクッキーを持たせてくれた。
前回、私がエルドの分まで平らげたので、今日は「ミリアさんのために」とたくさん焼いてくれていたらしい。
今、食べながら日記を書いている。おいしい。
世間の母親って、本当にこんなふうにしてくれるんだ。
……持病の治療を期待されているのもあるんだろうけど。
聖女の結婚ではよくある話だ。
かなり規格外の聖女をこれだけ歓迎してくれるなんて、心が広い。
エルド、良い里親に引き取られたんだなあ。
式場だの、招待客だの、ドレスの色やデザインだの。
決めることが山ほどあって疲れたけど、慣れないなりに楽しかった。
……けど。
エルドと話していて、少しがっかりすることがあった。
先日の『回復薬R202瓶色変更会議の開催可否検討会議』の話をしたら、
「上に恥をかかせるようなこと、言わない方がいいんじゃないか?」
一体、エルドはどこを見て仕事をしているのだろう。
……でも、エルドは聖騎士だもんな。
聖女は希少な光属性もちだから別格扱いされているけど、聖騎士は違う。
教会に勤めているだけの普通の騎士。上に睨まれたら出世に響く。
私がスレた大人になったのと同じように、エルドもそれなりにスレたんだ。
お互い、世知辛い大人になった。
*
書き忘れた地獄。
欠席した午前の会議で『飲泉所のカップを並べ直す当番』なんてものができていた。
ぐちゃぐちゃなのは見栄えが悪いし、持ち帰る人がいるので数をカウントするため、という理由らしい。
誰だそんな虚無のような仕事作り出したやつ!
断固拒否する。
→カップに番号書いて、隣に同じだけ番号書いた台を置く?




