P20 案件クロージング
3月30日
エルドとルーリエに、思うままにやり返したら、
妙にすっきりして、しばらく日記帳を開くことがなかった。
日々、こまごま腹立つことはあったけど、
以前みたいに胸の奥に澱のように溜まることがなかった。
まあいいや、と流せてしまった。
明日は神脈石の検査の日。
怖い。
療養所は、どんなところだろう。
案外、心穏やかに過ごせる場所だったりするんだろうか。
そうだといい。
※
あれから、エルドと一度だけ会った。
解決金の受け渡しで、だ。
約束通り、昇進も辞退したといっていた。
「そのせいで、僻地に飛ばされることになったよ」
昇進を辞退する=報告書捏造を拒否。
それを快く思わなかったあの指揮官に、反逆分子扱いされたということらしい。
「正直者は馬鹿を見るだけだ」
エルドは吐き捨てるように言っていた。
でもさ、エルド。
もし、あの時、私と一緒に捏造を拒否してくれていたら。
左遷されても、私は喜んでエルドについていった。
ご両親も、きっとあなたを誇りに思っただろう。
それではダメだったの?
※
いまだに、ルーリエが大聖女候補を辞退したという話は聞かない。
先日、式典で見かけた彼女は、晴れやかに笑っていた。
でも、目は虚ろだった。
私と目が合った瞬間、そのときだけ、感情が宿った。
――どうして私が、こんな目に。
そう言いたげな、恨みのこもった目。
何がここまで自分を追い込んでいるのか。
その原因を、彼女はいまだに悟っていないらしい。
……笑い方。
黒い聖母に似てたな。
ひょっとしたら、神力の濁りが原因で、彼女は大聖女候補から外されるのかもしれない。
療養所で待ってるよ。
歓迎会くらいは開いてあげる。
仲良くはしないけどね。




