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ブラックな職場の、ブラックな聖女による、ブラックな日記  作者: サモト


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19/21

P19 期待値以上

2月19日


 大聖女になるための修行は厳しい。

 ルーリエは早々に根を上げると思ったのに、意外なことに脱落したという話が聞こえてこない。


 厳しい修行で性根が叩き直されたか。

 それならそれで、良かった。


 ……なんてことは一ミリしか思わない。


 早く化けの皮剥がれてくれよー。

 自分が療養所送りになる前に、みんなから後ろ指差されてるところがみたいんだよ。

 ってか、最後まで遠慮なくぶっ叩きたいから性根直らないで。


 これが私の偽らざる本音だ。

 我ながら清々しいまでのクズ。


 そしたら今日、願いが通じたのか、ルーリエを見かけた。

 裏庭で護衛騎士と抱き合ってた。


 期待通りの展開で、めちゃくちゃ興奮した。


「もう無理……私、できない」


 しくしく泣いてるルーリエと、それを優しく慰める護衛騎士。

 がけっぷちにいる様子に、ほっこりした。


 ルーリエ、その護衛騎士はたぶんあなたの貞節を試す存在だよ。

 なぜなら、彼は既婚だ。

 あいさつに来ていた日、薬指に指輪の痕があるのに気づいた。

 甘い言葉にすがった最後、手のひら返しでフラれる仕様だろう。

 神殿も意地が悪い。


 わくわくしながら見ていたら、突然、ルーリエがひっと悲鳴を上げた。

 裏庭に、大聖女様がやってきたのだ。


「辛いわね、ルーリエ」


 怒らず責めず慈悲深く。大聖女様はいった。


「大丈夫よ。失敗は誰にでもあるもの。

 さあ、修行を続きをがんばりましょう」


 許されても、ルーリエは喜ばなかった。泣き崩れた。


「神力、もう残っていないんです。これ以上は無理です」

「まだ、体力は残っているでしょう?」

「体力を削ってまで魔法を使っていたら、死んでしまいます!」

「大丈夫よ。死んだら、わたくしが蘇生しますから」


 ……どーゆー修行だよ。

 そこまでいったら、明らかに不適正じゃん。

 見捨てない優しさもあそこまで行くと拷問でしかない。


「ほ、本当は……黒い聖母を倒したのは、私じゃないのに……

 みんなが……私が倒したことにして……

 どうして、どうして私が、こんな目に……」


 こらえきれず、ルーリエは本当のことを話し出した。

 私だったら「全部自分の無責任の結果だろ!」とビンタするところだけど、さすが大聖女様は違う。

 そっと、優しく、ルーリエの肩に手を置いた。


「その気持ち、わかりますよ、ルーリエ。

 わたくしも目の光を失ったとき、絶望しました。

 どうして自分がこんな目に、と」


 ほっとした。あの大聖女様ですら、一時は絶望したんだって。

 でも、その先は、私と考えがだいぶ違った。


「でも、わたくしはこう考えることにしたの。

 これは神が与えてくださった試練。

 与えられる痛みはすべて、神からの愛のこもった鞭なのだと」


 私の主観では――あの時の大聖女様は、うっとりとしていらした。

 まるで愛しい人に抱きしめられているかのように。


「ルーリエ、あなたも早く知って。

 痛みは辛く苦しいものではない。

 むしろ、甘美なものだと。

 それを理解した時、世界の見え方は変わるわ。

 光り輝く、素晴らしいものにね」


 ルーリエは絶望していた。

 私はポカーン。

 大聖女様がこの世のすべてに寛容でいられる本当の理由が、今日分かった。


 ドMだからだ。


 最強じゃん。

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