P18 効果が最大化する瞬間を狙うこと
2月2日
今日はまた、結婚式の打ち合わせ。
エルドは何食わぬ顔で式の話を進めようとしたが、私がストップをかけた。
「この結婚を取りやめたい」
びっくりしているご両親に、私はエルドの浮気を訴えた。
エルドは、最初こそ否定していた。
けど、私がみんなから提供された数々の証言を出すと、黙った。
ご両親は目を見開き、息を呑んでいた。
お二人とも、本当に良くできた方だ。
いきなりエルドに怒鳴ったりはしなかった。
「よくないことをしたね。なぜ?」
そう静かに問い質した。
「誰かに必要とされたくて」→「ミリアさんは君をいらないといったのかい?」
「ミリアは自分一人でもやっていけるから」→「強い人なら、裏切ってもいいと?」
「ルーリエがかわいそうで」→「弱っている人を助けるのと、婚約者を裏切るのは別の話」
私の言いたいことは、すべてご両親が言ってくれた。
ハタで見ていて思ったけど、頭ごなしに怒鳴られるより辛いな、コレ。
エルドに非があることを確認すると、
ご両親は挙式中止に伴う費用と、
婚約の契約違反に対して解決金を支払うと申し出てくれた。
私はうなずき、もう一つ要求した。
「彼は私の功績で昇進しました。それも辞退してください」
指揮官が手柄欲しさに、報告書を捏造したこと。
私がそれを拒否すると、エルドは自分の立場を守るため、指揮官に加担したこと。
そして、私の説得に成功すれば、自分が昇進できることを隠していたこと。
詳細を説明すると、ご両親は唖然としていた。
お互い目を合わせて、それからエルドを見た。
失望と呆れ、わずかな哀れみ。
エルドは恥ずかしさで顔を真っ赤にしていた。
胸のすく思いだった。
これでこいつは、幸運にも手に入れた良い養い親の、期待と信頼を完全に失ったのだ。
私も、こんな親が欲しかった。
エルドとの結婚でそれが叶うと夢見た。
でも、全部ご破算だ。
おまえ一人手に入れたままなんて、そんなの許せない。
よほど恥辱に耐えられなかったのだろう。
ご両親から、この件に関する費用はきちんと自分で支払うように言われると、
「……親なら、子供の味方をしてくれるものじゃないのか」
エルドは余計なことを言った。
義理の親子間では禁忌ともいえる言葉だ。
家の中はしん、と静まり返った。
「君にはもう、自分で生きて行けるだけの力を与えたはずだよ」
ご両親の声は震えていた。
私への謝罪と見送りを済ませる間、エルドの顔を一度も見なかった。
エルドは親の愛をも失ったのだ。
正直、ドス黒い喜びで胸がいっぱいだ。
エルド。
お互い一人さみしく死のうね。




