P16 事前調整はプロジェクト成功の鍵
1月25日
テメーなんぞこっちから願い下げだ。
こっちから婚約破棄だ。慰謝料きっちり払えよ。
――なんてのは、つまらない。
一瞬の爽快さで終わってしまう。
私はじわじわと、ゆっくり苦しみながら落ちていく様を楽しみたいのだ。
そういうわけで、まずはエルドとルーリエの仲を、みんなに周知させることにした。
私とエルドが婚約していることは、すでに知られている。
評判を落とすのは簡単だ。
「浮気の証拠を押さえてから婚約破棄したいから、手伝ってもらえない?」
そう頼むと、ラナをはじめとして快く協力が得られた。
直接頼んでいない人まで情報提供してくれた。
メモをまとめておく。
・1/19 聖女L.G. 「お互い、名前を呼び捨て」
・1/19 看護士E.D. 「ルーリエ様、エルドさんにお菓子をあーんって食べさせてました」
・1/20 聖女W.P. 「倉庫で二人が抱きしめ合っていた」
・1/21 救護班当番表作成係B.B. 「ルーリエ様、エルドさんを外出の護衛に指名」
・1/22 清掃員H.E. “愛するエルドへ”と書かれた薬瓶の提供
多い。あとはまた今度。
おもしろいことに、報告に来る時、みんな一様に楽しそうだ。
なんか見たことある思ったら、アレだ。
罪人に石を投げるやつ。
分かる~。
善と正義を掲げて人を追い詰めるのって、楽しいよね。
最高の憂さ晴らし。
聖女だけでなく、聖騎士(匿名希望)の方でも協力者が現れた。
おかげで、耳寄りな話が手に入った。
「エルドのやつ。ミリアさんのお陰で昇進できるようなもんなのに、最低ですね」
……は?
エルドが昇進するなんて、私は初耳だった。
話を聞くと、黒い聖母の報告書作成時。
私を説得できたら引き立ててやる、とあのアホ指揮官に持ちかけられていたらしい。
ふ ざ け ん な よ ?
やましいから、黙ってたんだな……
そういえば、戦場からの帰還祝いの日。
エルドは両親の前で私を褒め、私の好きな料理ばかり用意してくれていた。
あれは、埋め合わせのつもりか。
人の苦労で甘い汁吸いやがって。
嫌々従っていたにせよ、結局、エルドもあの指揮官と同類だ。
はっきり分かった。
あいつは、私の仲間じゃない。
慰謝料程度で済むと思うな。




