P11 賢明な選択
12月21日
今日は目が点になった。
黒い聖母討伐の報告書ができあがった。
要約すると、こんな感じだった。
“聖女の支援を受けつつ、指揮官が勇敢に戦い、先祖伝来の聖剣でトドメを刺した”
もう笑い出しそうになった。
そして、その報告書に私のサインをもらいに来たのは、エルドだった。
おどおどと、私の顔色をうかがっていた。
また指揮官から「絶対にこの内容で納得させろ」と言われてきたんだろう。
サインなんて出来るわけなかった。
こんな割に合わない大仕事をさせられた上に、手柄は向こうが総取り。
おまけに報告書捏造の共犯にされるなんて、冗談じゃない。
エルドに、これをどう思うか尋ねた。
良くないと思っている、と答えた。
ただ、その良心は左遷の恐怖に勝てないらしかった。
これを許したら、味を占めてどんどん酷いことになるだ、と言ってみた。
けど、エルドはもうすっかり事なかれ主義に染まっていた。
「ミリアはもうすぐ、俺と結婚して退職なんだし。
余計な波風立てることないだろ?」
現場に残る俺の身を考えてくれ――といっているようにも聞こえた。
心がざらついた。冷えた。でも押さえた。
妥協案として、私は報告書から自分の名前を消すことを提案した。
署名はしたくない。
でも、エルドともめて、結婚という逃げ道を失うのは痛い。
それだけは、どうしても避けたい。
黒い聖母の呪いで
寝よ。
※
報告書、ちゃんと私の名前は消されていた。
文面も“聖女ルーリエの支援を受けつつ~”に書き換えられていた。
ルーリエにどうしたらいいか聞かれたので、
「あなたがそれで納得できるなら、署名したら」といったら、
素直にサインしていた。
迷ったのは、一瞬だけだった。
あの子は、あれでいいらしい。




