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第五章:お兄様VS王子・夜会へ後編(青い宝石編)

大変お待たせ致しました……。

お兄様の大きくて温かい手を感じていると、ふと微かな吐息が耳元にかかった。


「……眠いのなら、ベッドへ行きなさい」


「うぅ……う~ん……はぁ~い」


お兄様の心地よい声が響くと、私は眠い目を擦りながらに深く頷く。

そのままソファーから立ち上がり、お兄様に手を引かれながらにベッドまで歩いて行くと、真っ白なシーツの上へ倒れ込んだ。

寝転がる私へお兄様は優しくお布団をかけると、ニッコリと優しい笑みを浮かべてくれる。


「ぅぅん、お兄様はまだ眠らないの?」


「いや、僕ももう寝るよ。良い夢を……おやすみ」


チュッと額にキスが落ちてくると、お兄様の優しい匂いに、心が落ち着いていく。

唇が離れ、体を起こそうとするお兄様の手をギュッと握りしめると、私は強引にベッドへと引きずり込んだ。

そのまま捕まえるようにお兄様の腰へ腕をまわすと、胸に顔を摺り寄せながらに私は瞳を閉じる。


「お兄様……ソファーで寝るつもりなんでしょう!そんなのダメよ、風邪を引いてしまうわ。私たちは家族なんだから一緒に寝ても問題ないでしょう?」


そう言葉にすると、お兄様から深いため息が漏れた。


「はぁ……気が付いていたのかい。でも嫁入り前の女性が男とベッドを共にするなんていけない事だよ。僕たちは……家族だと言っても……血がつながっていないのだから」


その言葉に私はそっと目を開けると、美しいブラウンの瞳を見上げるように、視線をあわせた。


「血なんて関係ないわ。……お兄様が私の屋敷へやってきたあの日、私たちは家族になったのよ。だから何の問題もないの。それに昔はよく一緒に眠っていたじゃない。まぁ……私が勝手にお兄様の部屋に押しかけて、強引に一緒に眠っていただけなんだけれどね……。ふふふっ」


幼いお兄様との懐かしい過去の記憶が頭を掠めると、私はお兄様の頬へ手を添え、ニッコリと笑みを浮かべて見せる。

最初に出会ったお兄様はどこか無気力で、表情をあまり変える事のない彼を……私は放っておけなかった。


「あの頃とは違うだろう……。僕も君も」


お兄様はボソッとそう呟き、真剣な表情を浮かべると、ブラウンの瞳が微かに暗く揺れた。

その瞳は以前……私が夜の街へ抜け出したあの日に見せた、()()()の姿が重なった。

いつもの穏やかな優しい雰囲気ではなく、全てを飲み込みそうなほどの、静かな怒り。

そんなお兄様の様子に戸惑う中、頬に触れていた手を離そうとした刹那、突然に腕が強く引き寄せられた。


チュッ


お兄様の顔が突然に近づいたかと思うと、唇に柔らかい感触を感じる。

驚きのあまり体を硬直させると、お兄様の舌が私の唇を無理矢理にこじ開けていった。


「えっ、……んんんっ、……うぅぅぅん、ふぅっ、んぅぅんっっ」


何……何が起こっているの……っっ。

お兄様の舌が荒々しく中をかき回していく中、唾液が絡み、深く深く私を犯していく。

突然の事に状況を飲み込めない中……私はようやく我に返ると、慌ててお兄様の胸を押し返した。

しかしお兄様の体がビクともしないどころか……抵抗すればするほどに、口づけが深くなっていく。


「んんんんっ、はぁ、待っ……っっ、うぅっ、んんふぅっ、……やあぁっっ」


一体……どうしてこんな事になっているの?

必死に身をよじらせ抵抗してみるが、お兄様は軽々と私の腕を抑え込むと、ベッドへと縫い付けられる。

そのまま息が出来ないほどの激しい口づけが繰り返されると、次第に抵抗する力が抜け、頭がぼうっとしてきた。

痺れるような刺激に身が震える中、お兄様が退く気配はない。

どうして……どうしてお兄様が……?

私たちは家族で……こんな……。


お兄様の舌に翻弄される中、ようやく唇から解放されると、私の瞳から涙が零れ落ちていた。

頬を伝い雫がシーツへと落ちていくと、私は大きく目を見開きながらに、ブラウンの瞳をただただ見つめ返す事しか出来ない。


「僕は……家族だと……君の事を妹だと一度も思った事はないよ。初めて君に会ったあの日から、僕は君に惹かれていたんだ」


「嘘……でしょう……」


突然の告白に開いた口がふさがらない。

妹と……思っていなかった?

どうして、どうしてそんな事を言うの……?

お兄様は泣きそうな表情をしながらも、無理矢理に笑みを浮かべると、私からゆっくりと離れていく。


「ごめんね、ビックリしただろう。……君はとっても優秀だったから……君よりも強くなるために、君よりも賢くなるために僕は必死だった。君に僕を見てほしくて……。でも君が僕の事を、兄としてしか見ていないことは知っているよ。だから僕も、この気持ちを口にするつもりはなかったんだけどね……。でもさすがこのまま一緒に寝るとなると、僕は自分を押さえる自信はかったんだ。僕は誰よりも君を愛しているから」


お兄様は私から顔を背けると、ベッドから降り、扉へと歩いて行く。

離れていく彼の姿に、咄嗟に体を起こし、お兄様の背に手を伸ばすが……私はそこで動きを止めた。

私は……なんて声をかけるつもりなの?

お兄様を引き留めても、私にはどうする事も出来ない。

私はお兄様を家族だとずっと思っていた。

そんなお兄様が……まさか私を想っていただなんて、ずっと一緒に居たのに……全然気が付かなかったわ。

私は……どうすればいいのかしら……。


頬に涙が伝う中、私は伸ばした手をそっと下すと、お兄様は扉の向こう側へと消えていく。

追いかけることも出来ぬまま、私はベッドへ蹲ると、お兄様の言葉が頭の中で反芻していった。

お兄様が私の事を好き……?

私は……。

そう思った瞬間、前世の刺される記憶がよみがえる。

あまりに鮮明に映し出された光景に激しい痛みが背中を襲うと、私はそのまま意識を失った。


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