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第四章 お兄様VS謎の男・そうして・・・(亡国の謎編)

話が終わり、エイブレムは静かに私の腕を取った。

そのまま彼に導かれるように部屋を出て船内を進むと、目の前に扉が見えてくる。


「嬢さん、また会いに行く」


エイブレムはフードを深くかぶり、静かに扉を開け放つと、私は船から降ろされた。

彼は船に残るようで、私が出たのを確認すると、静かに扉が閉まっていく。


ふと港へ視線を向けると、兄にエレン、セリーナが怒った様子で佇んでいた。

ひぃっ……!

……これは仕方がないわよね……自業自得。

大人しく怒られましょう……。

恐々一歩、私は足を前に進めると、皆が私の元へと走り寄ってくる。


「お嬢様……すぐ戻ってくると……危険な事はしないと約束したではありませんか!!!」


泣きながらそう叫ぶセリーナに視線を向けると、私はごめんなさいと深く頭を下げる。

そんな私の様子にアランは泣きそうな表情を浮かべると、震える唇を小さく開いた。


「無事で本当に安心致しました……しかしお嬢様、女性に大切な髪を切ってしまうなんて……」


「ごめんなさいね、でも……髪なんてすぐ伸びるでしょ……ね」


「そういう問題ではございません!!!」


怒りを露わにする二人に、ひたすら謝りつづける中、私は徐に顔を上げ、お兄様へと視線を向ける。

お兄様はニッコリと笑みを浮かべる姿に、私は意を決してお兄様へと近づいていった。


「お兄様、ごめんなさい。お兄様が私を見張っているのだと思って……勝手な行動をしてしまったわ。本当にごめんなさい」


そう深く頭を下げる中、お兄様は困った様子を浮かべていた。


「本当に……全く困った妹だよ。髪まできってしまって……それで……全てを聞いてしまったのかい?」


お兄様は悲しそうに短くなった私の髪へ手を伸ばす中、私はコクリと静かに頷くと、胸にある青い宝石を握りしめた。


「もう一つ、謝らなければならないことがあるの……お兄様が持っていた青い宝石……私の宝石と融合してしまって……」


私はお兄様へ見えるようにネックレスを胸元から持ち上げると、お兄様は目を大きく見張り、青い宝石をじっと眺めていた。

お兄様は恐る恐るといった様子で、私の宝石に手を伸ばすと、突然宝石が強く光を放った。

するとお兄様は一瞬顔を歪め、素早く伸ばした腕を引っ込める。


「なるほど……やはり僕は主ではないのか。はぁ……君を巻き込みたくなかった……」


ボソッと呟かれた言葉に、私は震える手で青い宝石を握りしめると、強く胸に抱いた。



そうして皆で屋敷に戻り、心配をかけた屋敷の者に謝ると、私は部屋へと足を向ける。

薄暗い部屋の中、私は着替える事もせず、ドサッと深くソファーへと腰かけた。


あの赤いタトゥーの連中は……彼らの事よね。

以前、戸籍を売らせていた女に、古びた小屋に破落戸を差し向る理由……。

戸籍は金とわかっているわ……。

破落戸は……やはり私たちを狙ったものではなく、あそこに居たであろう王族狙い。

彼らを小屋から誘い出し、王女の傍いるであろう騎士を破落戸で足止めさせ、その間にエイブレムに奪還させるという、筋書きだったのかしら。


金はやはり、軍資金……?

私の推測ではあるが、私が持っているこの宝石を量産することが可能だとして、その武器を使って国を取り返す?

いや、さすがに無理でしょう。

大国相手に何人同志を集めようとも、国相手に太刀打ちできないわ。

この宝石がどれだけ優れていようが……一個人の集まりが、国を相手に国盗り合戦を出来るとは思わない。

すぐに鎮圧され、宝石の生成方法も流れてしまうだろう……。


なら……隣国に国宝の宝石がすり替えられたとばらして、犯人探しに乗り出させる?

その際、私たちの国が奪ったと噂を流し、なぜ奪ったのかを隣国知らせる……。

そうしてこの宝石の生成方法がわかったとなれば……また大きな戦争が始まってしまうだろう。

もしかして……それが狙いなのだろうか?


戦争がはじまり、領国の兵が弱った時期に武器を手に入れた彼らが立ち上がり、どちらかの国へ青い宝石の武器を提供する。

その提供する条件として、自分たちの国を取り戻すか……。

いや……そんな生成方法を知った彼らを、国が野放しにするはずがない。


その前に……これが知られれば、次は私が狙われるわね……。

私はこの宝石を手放すつもりはないわ。

もし権力者の手に渡れば、きっとろくなことがないもの。

なら私が持って……まだこの世界のどこかに存在する生成方法を見出し、封印する……。

私は深く息を吐きだすと、徐に立ち上がり、着替える為、クローゼットへ足を向けた。



********王都では(マリア視点)********


ようやくこの日が来たわ!!!

攻略対象者に会えるだけじゃなくて、イケメンと一緒に夜会に参加できるなんて!

これよ!これが乙女ゲームよね!


私はアルが用意してくれたドレスに着替えると、学園の寮で待機していた。

トントントンとノックの音が響くと、私は慌てて扉へと駆け寄っていく。


「マリア嬢、お迎えにあがりました」


深く礼を取る執事に胸をときめかせる中、私は期待に満ちた瞳を浮かべ、大きく頷いた。

ようやく、乙女ゲームの世界でヒロインとしてデビューできる!!


高鳴る鼓動を抑え、私は執事に連れられ寮の門を潜ると、そこにはアルが王子様の恰好をし、爽やかな笑顔を浮かべていた。

ふと彼の後ろに用意された馬車へ目を向けると、この国のシンボルである鷹のマークが目に入った。

うそ……まさか……!!!


「やぁ、マリア嬢ごきげんよう。ふふ、驚かせちゃったかな?」


彼はいたずらが成功したような笑みを浮かべると、呆然と立ち尽くす私の手を優しくとった。


「うそ……アルって……」


「あぁ、もう気がついちゃった?僕は第一王子カレヴ。アルは僕が個人的に付けたニックネームなんだ」


私はあまりの衝撃に悲鳴が出そうになるのをグッと堪えると、カレヴ王子はクスクスと笑っていた。

こんなことって……!

彼は全員を攻略しないと出てこないはずなのに……どうなっているの!?


「さぁ、行きましょうか。私のお姫様」


彼はそっと私の耳元で囁くと、私は顔を赤く染めながら、震える手で彼の大きな手を握りしめた。

次回より、第5章へ突入します。

一気に投稿できるようお正月休みを使い書き溜めますので……少々をお時間をください。

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