第四章 お兄様VS謎の男・彼らの目的は(亡国の謎編)
更新が遅くなってしまい、申し訳ございません。
男はそこまで一気に話し終えると、私の胸元へと視線を向ける。
真っ青に透き通る宝石へ、そっと手を伸ばしたかと思うと、男は宝石に触れるか触れないかの位置で止まった。
すると彼はなぜか小さく顔を歪める、宝石には触れることなく、素早く手を引っ込めていく。
私はそんな彼を只々呆然と眺めている中、彼はまたゆっくりと口を開いた。
時代は流れ今はもう・・・この宝石について調べる奴も少なくなった・・・。
だがそんな中、最近ある噂が流れ始めたんだ。
生き残りの亡国の王女がいると・・・・。
そうして王女の存在を知った、各国が動き始めた。
この国の王は、天才と名だたる君を頼る為、兄をこの地へ送った。
そこで彼らは道中、青い宝石がこの辺境の地にあると、噂を流したんだ。
亡国の王女をこの地へ誘う為に・・・。
案の定王女たちはこの噂に食いつき、辺境の地でこの宝石を探し始めた。
それが、あの奇妙な事件の正体だ。
だが、その王女は今ある貴族に捕らえられている。
その貴族は・・・君が今度参加する夜会の主催者、エメリーン嬢。
こんな勝手なお願いをして申し訳ないと思うが・・・君に王女を救ってほしい。
一通り話を聞き終え、あまりにも多い情報量に、私は目を伏せるようにじっと考え込んだ。
王女を救ってほしい・・・なぜ私に?
エメリーンが言っていた情報と言うのはこの事なのかしら・・・?
でもなぜ彼女が?
彼女とは浅い中ではない・・・こんな案件に彼女が自分から手を出したとは思えないわ。
なら・・・彼女の傍に誰かがいると考える方が納得できる。
一体誰が彼女の指南役をしているのだろうか・・・。
私がじっと考え込んでいると、年配の男は私へと視線を投げた。
とりあえず、返事をする前に聞いておかなければならない事がたくさんあるわ。
「まず聞きたいんだけれど、どうして私に?」
「君がその宝石の主だからだよ」
男は私の胸元を指さすと、ニヤリと笑みを浮かべる。
「そう、君が持っているその宝石こそが、現代で国宝とうたわれている宝石だ。君に王女を奪還し、可能であれば、その宝石の謎を解き明かしてほしい。君ならその宝石を悪い意味では使わないだろう?」
男は笑みを深める中、私は胸元にある冷たい宝石をギュッと握りしめると、私の熱が宝石へと吸い込まれていく。
「質問を変えるわ・・・どうして私に、この宝石託したのかしら?」
私の問いかけに、エイブレムが気まずげに視線を反らせる姿が、横目に映った。
「・・・・・・私が彼に脅しをかけて、あんたに渡すよう命じたんだ。さすがに王都が動けば、私たちも宝石を守る自信なかった。だからルーカスが大事にしている、あんたに託したんだ。お嬢さんならその聡明な頭脳で、これが只の宝石ではないと気がつくだろうと思ってね」
脅したか・・・。
彼の言葉にそっと口を閉じると、私は顎に手をあて考え込んだ。
うーん、この男が話すことが、どこまで本当かはわからないが・・・一応筋は通っている。
それにお兄様がこの地へ噂を流し、私のもとへやってきたのであれば、兄は王から宝石を託されている・・・?
あの日お兄様が必死に探していた物がこれだと考えると、私の持っている物は隣国の宝石・・・。
え・・・これ・・・とてもまずいんじゃない・・・?
とんでもない推測に私はサット顔から熱が引いていくと、慌てて宝石から手を離す。
「もしかして・・・これ隣国の宝石なの?」
「察しがいいねぇお嬢ちゃん。だが大丈夫だ、隣国の宝石はずっと昔・・・別のものにすり替えられてある。まだ気づかれてねぇ」
その言葉に私は大きく目を見開くと、ニヤリと笑みを浮かべる年配の男と視線がからむ。
安心はできないが・・・とりあえず私がこの宝石の主だと言うのであれば・・・逃げることはできなさそうね。
正直面倒事に巻き込まれるのは望んでいないが・・・先程の話を聞く限り、もし誰か別の者がこの謎を解き明かし、噂の武器を精製すれば、ろくなことにならないわね。
はぁ・・・。
私は小さくため息をつくと、髪を軽くかきあげる。
とりあえず今は王女について考えないと・・・。
それにしても、あの奇妙な事件・・・王女はこの宝石の力を知っているからこそ、だからあんな回りくどい方法で探していたのね。
この青い宝石を直接触れる事が出来ないから・・・彼らは薬を使ってその捕らえた者達を洗脳し、宝石を奪おうとしていた。
青い宝石は加工しやすい為、彼らは手当たり次第青い宝石を身に着けている者を襲った・・・王都から来る奴らに先を越されないように・・・。
そこでふと疑問が頭をよぎると、私は徐に顔を上げ、男を見据えた。
「でもどうして・・・あんなまわりくどい方法で探していたのかしら?奪うことが出来ないのであれば、さっさとその宝石の持ち主を殺してしまった方が早いんじゃない?」
「はっはっ、物騒なお嬢ちゃんだ。まぁそうなんだが、持ち主の意志とつながるその宝石が、果たして主が死んで効果がきれると思うか?万が一そのままだったらどうする。そんなリスクを冒すわけにはいかないだろう?・・・その宝石は現状世界に2つしかないんだからな」
その言葉にエイブレムはそっと一歩前に進み出ると、懐からキラリと輝く何かを取り出し、私の前に差し出した。
彼の手の平には、透き通る青い宝石がキラキラと輝いている。
私は恐る恐る手を伸ばすと、その宝石はスッと光を消した。
宝石を持ち上げ、観察するように眺めていると、私の胸元にある宝石が熱を持ち始める。
「これはお兄様の?・・・・どうやって手に入れたのかしら?」
「宝石は主と認めた人間から離れようとするのを拒むが……主が宝石を渡すと判断した時、もしくは何らかの拍子で主から離れてしまった時……。こちらから無理矢理宝石を奪うことは出来ないが、この二つの方法なら主から宝石受けとる事ができる」
「なら、この宝石は兄から離れたって事?」
「あぁ、エリックは腕の良い狙撃兵に矢で射ぬかれた。その拍子に宝石が外れたんだ」
エイブレムは宝石を見つめる中、二つの宝石は共鳴するかのように輝き始めた。
「これが二つ揃えば・・・その精選方法が見つかると言っていたが・・・」
じっと青い輝きに目を向けている中、私はそっと二つの宝石を手に取った。
何か文字が浮かび上がってくるとか・・・?
二つの宝石を掲げ様々の方向から目を通してみるがなんら変わった様子はない。
二つを合わせてみるとか・・・?
私はそっと胸元の宝石と宝石を近づけてみると・・・
まばゆい光を発したかと思うと、吸収されるように二つの宝石が一つになってしまった。
「えっ・・・・!?」
慌てて宝石を離すも、時すでに遅し、その宝石は私の胸にある宝石に溶け込んでしまった。
その光景に、あたりは静まり返る。
うそでしょ・・・。
私は恐る恐る顔を上げると、皆が私の胸元を凝視していた。
話をしていた男が私の胸元へ手を伸ばした瞬間・・・合わさった二つの宝石は形を変え、その手を威嚇する。
「これか・・・・・」
すぐにひっこめられた手に、宝石はまた形を戻すと、私の胸の中で静かに輝いていた。




