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第三章 密偵VS暗殺者・侵入者 (赤いタトゥー編)

私はスラム街を出て、急ぎ足で屋敷へと戻ると、エントランスに続く扉をゆっくりと開いた。

するとそには・・・鬼の形相をしたアランが佇んでいた。

私はとりあえず一旦扉を閉じると、扉のそとで固まった。


・・・・なぜアランがもう屋敷にいるの!?

今回頼んだアランの仕事は住民の戸籍登録の再調査。

この調査は、現在戸籍登録されている情報が正しいかを確認する為、一軒一軒地道に訪ね歩き、戸籍の見直しをお願いしたはず・・・。

こんなに早く終わるはずがないわ・・・。

ぶつぶつと扉の外で考え込んでいると、エントランスの扉が独りでに開いていった。


私は居るはずのないアランの姿に、目を大きく見開いていると、


「お嬢様・・・今日はお屋敷で過ごすようにセリーナから聞かなかったのですか?」


「えぇ・・・聞いたけど・・・あれ、うーん、どうしてアランはそんなに早く戻ってこれたのかしら?」


アランは私の様子に呆れた目を向けると、


「部下たちは優秀ですので、お嬢様の意向をお伝えすれば、すぐに行動を開始しております。私は屋敷に残したお嬢様が心配で、現在調査中ですが一度屋敷へ足を向けた次第です。」


おぉ・・・まさか調査中に屋敷へ戻ってくるなんて想定外ね・・・。


「一度戻ってきて正解でした・・・セリーナにお嬢様の行方を確認しても明確な返事は返ってこなかったので・・・今からお嬢様を探しに行くところでした。」


私はアランにごめんなさいと素直に謝ると、アランは寂しそうな表情を浮かべた。


「どこへ行っても構いませんが・・・一人で行かないでください・・・。怒ったりもしません、だから必ず私を同行させて下さい。」


彼は苦しそうな様子で私から視線をそらすと、もう私のいないところであんな怪我をされると耐えられない・・・とボソッ呟いた。


私はそんなアランの様子に深く反省すると、素直に頷いた。



アランを連れ、書斎へと足を向けると、デスクには書類の山が積み上げれていた。

はぁ、部屋に閉じこもっていたし当然か・・・、早々に片付けないと。

私は机に腰かけると、気合を入れ、一枚一枚積み上げられた書類に目を通していった。

そんな私の様子を確認したアランは、調査を続けてきますと部屋を後にした。



数時間後、書類が一段落すると、アランが屋敷へ戻ってきた。

書斎で、住民調査の結果報告を受け、ほかにもいくつか戸籍が売買されている形跡を見つけた。

私は役所へ戸籍の再登録と不自然な戸籍の抹消指示を出した。


やっぱりあの一件だけじゃなかったわね。

調査を何度も行うのも大変だし、それにこんな事を続けていても、鼬ごっこになってしまうわ。

何か良い対策案を考えないと・・・、うーん前世の様に機械や科学が発達し、DNAや指紋などで個人を識別できればらくなんだけどなぁ・・・。

この世界はそこまで医療も発展していないし、今から初めても数十年はかかるだろうなぁ。


うんうんと頭を悩ませていると、アランは暖かいお茶とお菓子を私の前に差し出した。

目の前に現れた湯気が立ち込めるカップをじっと見詰めると、私はカップを手に取り口元へと運んだ。

アランの紅茶はいつも絶品ね。

私は肩の力を抜くと、椅子へ背中を預けると、暫し目を閉じた。



そうして何も思いつかないまま、ふと窓の外へ目を向けると、日が沈みはじめ、夕日が赤色に輝いていた。

そろそろ夕飯の時間ね。

私はそっと席を立つと、アランを連れて書斎を後にした。


広間へ向かうと、すでに夕食の準備が整っており、お兄様が笑顔でこちらを見ていた。

私はお兄様の向かいに腰かけると、二人で食事を楽しんだ。

そして私はお兄様とゆったりした時間を満喫すると、自室へと戻っていった。


はぁ、今日は一日疲れたわ・・・。

でも、シヴァ爺から良い情報も聞けたことだし、後はセリーナの報告を待つだけね。


自室の扉を開くと、見知った顔がベットの上に座っていった。


「嬢さん、怪我は大丈夫か?」


エイブレムは私の体をじっと観察すると、安心したような表情を浮かべた。

私はふふふと笑いを浮かべると、


「大丈夫よ、嫌っていうほど休んだんだから」


私は徐にベットへと近づくと、彼はピョンとベットから飛び降りた。


「そうだ、嬢さん、俺がいない間に殺し屋でも雇ったのか?」


私は彼の言葉に怪訝な表情を浮かべた。

殺し屋?


「殺し屋なんて雇うわけないでしょ?唐突にどうしたの?」


「いやぁ、ここに来る途中、嬢さんの家の周辺に同業者を見かけたからさ。」


「どうして、殺し屋だとわかるの?」


彼はフードの下からニヤリと口もとを上げると、


「まぁ・・・わかるんだよ、血の臭いって言うか・・・説明はちと難しいな」


そう話す彼は徐に私へと近づくと、あの時怪我をしていた頬のキズを覗き込んだ。


「まだ残ってるじゃねぇか・・・」


彼は薄っすらと傷跡が残る頬に優しく親指を添わせると、青い瞳でじっと私を見つめた。

私は彼の揺れる瞳を見つめ返すと、安心させるように微笑みかけた。


「擦り傷よ、もうすぐ消えるわ」


エイブレムは私の言枝に納得していないよう顔をしながらも、頬から手を離した。


「来てくれてありがとう、今日はどんな情報をくれるのかしら?」


私はベットの前にある椅子へと腰かける。


「今日は何もない、ただ会いに来るだけじゃダメだったか・・・?」


彼は不安そうな声でそう訊ねた。

彼の珍しい様子に驚き目を丸くすると、かわいい彼の姿に私は口もとに手を当てクスリと笑った。


「いえ、嬉しいわ。なら、そうね・・・お茶でも飲んでいく?」


私は部屋に用意されているポットに手を伸ばすと、ふと閉めたはずの扉が音もなく開いた。

ポットから手を離し、慌てて体を構えると、扉から距離をとる。

エイブレムは懐から短剣を取り出すと、私を守るように前へ出た。

私はエイブレムの肩越しに息をひそめ、ゆっくと開いていく扉を見つめていると、黒いフードを纏った人影が現れた。

人影は動くことなくじっと私たちに向いていた。

なんなの・・・?


私はゆっくり後退ると、ベットの脇へと手を伸ばし、いつも隠してある短剣を慎重に握りしめた。

短剣を体の前に構え、人影の出方を待っていると・・・

黒いフードを深くかぶった人影は、ゆっくりと私の部屋へと歩き出した。

足音一つ立てる事無く、不気味な雰囲気を漂わせる人影に、私は息を呑んだ。

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