第二章 騎士VS警備兵・夢の中で(アジト捜索編)
申し訳ございません、投稿が遅くなりました・・・。
日が沈み始め、辺りは薄暗くなってきていた。
アドルフは山道を下ろうとする私を捕まえると、軽々と抱き上げる。
「だっ大丈夫だから!」
私はアドルフの腕から逃れるように抵抗した。
「大人しくしてろ」
強い口調でいい放たれた言葉に私は肩をすくめた。
脚の限界を感じていた私は、大人しくアドルフの肩に腕を添わせると、全力疾走した疲れからか、アドルフの逞しい腕の中でゆっくりと瞼を閉じていった。
ゆりかごのような優しい腕の中で私は夢をみた。
見慣れた風景の中、私はオフィスのような部屋に立っていた。
はぁ、またこの夢・・・・。
幼いころ何度も何度も見たこの部屋で、私はまたスーツを着た女性となって消灯しているのだろう、薄暗く誰もいないオフィスの中を静かに歩きだした。
体を自由に動かすことはできず、彼女の意識として私は入り込んでいる。
スーツの女性はオフィスを慎重に見渡すと、ファイルが並ぶ一角へと足を運んだ。
目の前にある棚にズラッと並んでいるファイルに素早く目をはしらせていく。
彼女は赤いファイルに目がとまると、徐に手を伸ばした。
ファイルを開きページをパラパラと眺めていく。
私は彼女の目を通してそのファイルを眺めていた。
〇月✖日
僕は幸せだ。
彼女とずっと一緒にいると約束し、彼女の傍に居られる今が。
この幸せがずっと続くことを祈る。
〇月✖日
今日は、彼女と遊園地へ行った。
彼女は遊園地は初めてのようで、とてもはしゃいでいた。
あんな彼女初めてみた。
とってもかわいかった。
今度は水族館に連れて行こう。
そこには何度も見た、誰かの日記が書かれてる。
いつも思っていたけど、なぜこんなオフィスに日記があるのかしら・・・?
〇月✖日
今日彼女は乙女ゲームというものが好きだと知った。
画面越しにかわいい笑顔を向ける彼女の姿に心がモヤモヤする。
〇月✖日
彼女は夢中になってる乙女ゲームについて僕に話した。
何でも最近大人気のゲームらしく、西洋風の学園で男と仲良くなっていくらしい・・・。
5人の攻略対象のがなんとかかんとか、僕には難しくてよくわからなかった。
数年に渡る恋人同士の恋愛日記を読み進めていくと、
〇月✖日
彼女が事故にあった。
僕の心臓はとまりそうになった。
急いで病院へと駆けつけたが、会うことはできなかった。
医者は命に別状はないと言っていたが・・・。
明日またいこう。
〇月✖日
彼女にまだ会うことができない。
彼女は本当に無事なのだろうか・・・。
彼女がいない世界を考えると気が狂いそうになる。
〇月✖日
やっと彼女に会うことができた。
彼女はベットへ横になったままだ。
何度も何度も彼女に声をかけたが反応がない。
〇月✖日
今日も彼女は目を覚まさない。
でも僕はあきらめないから・・・。
日記の主が苦しみながらも彼女の為に尽くすそんな話が続いていくとついに・・・。
〇月✖日
やっと彼女が目を覚ました。
僕は彼女を優しく抱きしめた。
涙で彼女の姿が見えなかったが、また彼女に会えて本当に本当に嬉しい。
彼女ともっと触れていたかったが、医者が僕を追い出した。
明日の面会時間にすぐ会いに行こう。
〇月✖日
彼女の記憶がなくなっていた。
僕の事も・・・すべて・・・・
「死ね!!!」
背中に激しい痛みがはしる。
脚の力がなくなり、私は冷たい床へと倒れ込んだ。
私を刺した犯人を確認しようと、痛みに耐えながら顔を上げるが・・・
私の視界は歪み、意識は遠のいていった。
目を覚ますと、見慣れた自分の部屋だった。
汗で体がベタベタする中、背中に残る痛みに体を抱きしめ、深く深呼吸する。
久しぶりに見たわね・・・。
幼い頃は毎日のように見ていたが、5歳ぐらいだろうか・・・それくらいから見ることがなくなっていたのに・・・。
私は暗い部屋の中、ベットからゆっくりと立ち上がると、足首に痛みが走った。
痛っ・・・・あぁ、怪我をしていたわね・・・。
足に目を向けると、エイブレムの添え木はなくなり、綺麗な包帯が巻かれていた。
私はどのくらい寝たのかしら?
アドルフに抱き上げられた後の記憶がないわ・・・。
きっと重かったでしょね・・・後で謝らないと。
私は足を引きずりながら部屋の扉へと向かった。
扉を開けると、目の前に大きな影が現れた。
ゆっくりと視線を上げると、そこには鬼の形相したアランが立っていた。
私はその場に凍り付くように立ち尽くす。
「お嬢様、どこへ行こうとしているのですか・・・?」
「え・・と、喉が渇いたなって・・・」
アランは私を抱き上げると、ベットへと連れ戻した。
「飲み物は私がとってきますから、お嬢様はここで大人しく寝ていてください」
アランの迫力に圧倒された私は、首を何度も上下に動かした。
アラン・・・とてつもなく怒っているわね・・・。
私は深いため息をつくと、窓の外へと目を向け、夜空に輝く星を眺めた。
ノックの音がすると、アランが戻ってきた。
アランは水が注がれたコップを私へ手渡すと、部屋の蝋燭に明かりを灯していく。
アランの背中越しに、開いている扉からお兄様とアドルフが入ってくるのが見えた。
「あっ・・・アドルフ、寝てしまったみたいでごめんなさい・・・重かったでしょ?」
アドルフは腕を組んだままじっと私を見つめていた。
お兄様が私の傍へ来ると、ベットに腰を下ろした。
私の方へ顔を向け、優しく私の頬へ手を添わせる。
「そんなにボロボロになって・・・危険なことはするなと言った僕の言葉は忘れてしまったかな?」
お兄様の瞳は怒りで揺れていた。
ひぃ・・これは・・・もうダメだわ・・・。
「心配をかけてごめんなさい・・・」
お兄様はシュンとした私の様子に優しく肩を抱いた。
「顔にこんな傷まで作って・・・もう16歳なんだ、お転婆もほどほどにしなさい」
強い口調で話す言葉に私はごめんなさいと呟き、ただただ頷いた。
そんな中私はアドルフへと視線を向ける。
「グラクス様は大丈夫だったかしら?」
アドルフは私の傍へと来ると、泣きそうな顔で、私の頭をクシャクシャにする。
「お嬢以外に怪我人はないから大丈夫だ」
私はほっと息をつくと、アラン、アドルフ、お兄様からのお叱りを受けることになった。
20時にもう一話更新します!
宜しくお願いいたします。




