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第二章 騎士VS警備兵・戦闘(アジト捜索編)

小屋を出ると、アドルフとグラクスはじっと森の中を見つめていた。

耳を澄ませると、かすかに複数人の足音が耳にとどいた。

私は警戒しながらゆっくり周りを見渡すが、まだ人の姿は確認できなかった。


徐々に四方八方から靴音が大きくなっていく。

これは、逃げるのは無理そうね。

私は剣に手を伸ばし、ゆっくりと鞘から抜き取ると体の前で構えた。

私の剣は彼らよりも弱い、邪魔にならないように動かないと・・・。

私は前に進み始めたアドルフとグラクスの後ろへと、並ぶようにたつ。


茂みから人の姿が見え始めると、山賊のようなガラの悪い男たちが、小屋を囲むように迫ってきていた。

1,2,3,4,5・・・・・数が多いわ、ざっと見る限り・・・30人ほどはいるようね・・・。

そんな男たちに、怯えることなくアドルフとグラクスは威嚇するように剣を構えた。


「なぁ、あんたたちこんなとこで何をやっているんだ?」


軽い調子の男の声が耳に届く。

私は徐にそちらへ視線を向けると、ガラの悪い男たちを統べるように、一人の男が一歩前に進み出ると、アドルフとグラクスを見据えるように立った。


私はそんな状況下の中、目の前に佇む彼らの背中に向かって、ボソッと呟く。


「あの喋っている男は生かして捕まえましょう・・・後はおまかせするわ」


二人は私の言葉に軽く頷いた。


「おぃおぃ、無視かぁ・・・。なぁ、金目のものを置いていけば、みのがしてやるぜ」


頭に茶色のバンダナを巻いた、鋭い目つきのリーダーらしき男が、集まったガラの悪い男たちに視線を向けながら、嘲るような表情を浮かべている。


アドルフは彼の言葉を鼻で笑うと、正面にたつ男へゆっくりと剣を向けた。

そんなアドルフの様子にバンダナな男は小馬鹿にしたような表情を浮かべる。


「素直に聞いていれば、怪我しなくてすんだのにな!」


その言葉で、茂みに潜んでいた複数人の男たちは剣を構え、一斉に私たちへと向かってきた。

アドルフとグラクスは背中合わせになるように剣を構え、向かってきた敵と対峙していく。

アドルフは数人相手に軽々と剣を交え、力で数人を吹き飛ばしていく。

グラクスはむかってくる敵に素早く剣を振りぬき一撃で仕留めていった。

剣の交わる音と人のうめき声が響く中、


「クソッ、こいつら強いな・・・よし、お前ら!!!後ろにいる小僧みたいな女を狙え!!!」


バンダナの男が大声で叫ぶと、茂みにまだ潜んでいたらしい男たちが私に向かって一斉に剣を向け始める。


「おぉ!男の背に隠れて見えていなかったが、そいつは別嬪さんだ。あまり傷をつけるな!生け捕りにしろ!」


周りの雑魚たちは私に視線を向けると、ゲスな笑いを浮かべる。

私はバンダナの男を一瞥すると、目の前に迫りくる敵に剣を構えた。

私へと振りぬかれた剣を軽く交わし、最初に動きの鈍い男の背中を切りつける。


ズサッ


返り血で私の服が赤く染まった。

私の後方から襲ってきた男を、振り向きざまに剣で貫き、次にきた男の腕を蹴とばし、剣を落とさせると、回し蹴りを後頭部目掛けてくり出した。


ドサッ


雑魚すぎるわ。

私は倒れた男たちに氷のような冷たい視線で睨みつけた後、私に向かって来ようとしている雑魚たちにも同じ視線を向けた。

男たちは焦った様子で次は複数人同時に切りかかってきた。

そんな私の様子を見たのか、グラクスはスッと私の前に立つと、向かってくる複数人の男たちを睨みつけ薙ぎ払っていった。


どんどん倒れていく仲間の様子に、残っている男たちは、私たちに怯えるように後退していった。

私は剣を構えたまま、アドルフとグラクスへ視線を向け、彼らの体を確認する。

よかった、怪我はないようね。


「おいっ、お前ら!!!逃げるんじゃねぇぞ!数は圧倒的にこっちの方が多いんだ!さっさといけぇぇぇぇぇ!」


バンダナの男の怒声が響き渡ると、雑魚たちは後退するのをやめ、雄たけびを上げながら、また私たちへとまた向かってきた。


私は、オラァッ!と掛け声をのせて勢いよく振りぬかれた剣を華麗に避けながら、複数人の雑魚を相手にする。

額に汗が伝うのを感じながら、私はむかってくる敵に、何度も何度も剣を振りぬいた。

あらかた私へと向かってきた雑魚を片づけると、広場の中央で戦闘している二人の姿に視線をむける。

私よりも多い敵を切っているにも関わらず、悠々と剣を振りぬく姿を見て驚愕していると、ふと茂み見覚えのある男の姿が目に入った。


彼は・・・まさか!!!

男は私の視線に気が付くと、広場から離れ森の中へと入っていく。

追いかけないと!

私はむかって来る敵を切り崩し、彼の去った方へと走った。


「おいっ、どこにいくんだ!」


後ろからアドルフの怒鳴り声が聞こえたが、私は振り向かず森の中へと入っていった。


小さく映る彼の背中を見失わないように、私は必死に山を駆け上がった。

私がついてきているとわかったのか、彼の速度が速くなった気がした。

絶対に、あきらめないわ!

私も彼のスピードに合わせるように速度を上げる。

はぁ、はぁ、はぁ、屋敷へ戻ったら筋トレ後の走り込みに、プラス山登りも追加しないと・・・。


木が生い茂る道をがむしゃらに走り抜ける中で、顔や体に木の枝や棘のある蔦があたり、頬や腕、脚から血が流れた。

頬に流れる血が汗に交じって私の額から落ちていく。

どれくらい走っただろうか、一瞬後ろを振り向くと、先ほどの小屋はまったく見えなくなっていた。

酸欠と疲労で意識が朦朧としてくる。

はぁはぁ・・もう体力が・・・。


私はとうとう足をもつれさせ、山道に転がると、足首に強い痛みが走った。

痛みに顔が歪み、木々が生い茂る中で足をかかえ蹲る。

あぁ・・・追いつけなかったわね・・・。

彼と・・・話がしたかったのに・・・。


唇をかみ、後悔の念に駆られていると、倒れ込む私の前に人影が現れた。

私は慌てて剣を手に取り、体を起こす。

私は痛みを堪えるように人影に視線を向けると、そこには追いかけていたはずの彼が立っていた。

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