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第二章 騎士VS警備兵・街の外へ(アジト捜索編)

アドルフはグラクスを睨みつけたままこちらへと近づいてくると、私に覆いかぶさるように立っていたグラクスの肩を掴み、勢いよく引きはがした。

グラクスは私から離れると、無表情に戻り、アドルフをじっと見据えていた。

アドルフは空いた私の前にしゃがみ込むと、耳元で


「調査の件、あいつにも手伝わせよう」


アドルフの言葉に私は慌てて、


「ダメよ!!! グラクス様を巻き込むべきじゃないわ!」


思わず大きな声を出してしまった。

私の声に反応して、グラクスは真剣な眼差しを私へ向けると、


「お役に立てるなら」


私は目を大きく見開いた。


「グラクス様!!!まっ・・・」


「交渉成立だな、先にお嬢の手当てしてから話そうぜ」


アドルフは私の腕を優しくとると、


「これを塗っておけば、腫れがひいてくるだろう。・・・・あまり動かすなよ」


アドルフは赤くなっているところに手慣れた様子で薬を塗りこんでいくと、丁寧に包帯を巻き付けていく。

そんなアドルフを睨みつけるように見つめると、そんな顔するなと苦笑いを浮かべた。


「お前との闘いを見た上で、あいつかなり強いだろう?それに、ルーカス様から彼らのことも聞いているしな。手伝わせても問題ないだろう」


私が抗議の声を上げようとすると、私の手を離し、また頭をクシャクシャにした。

もう!お兄様から何を聞いたのかわからないけど、グラクス様をこの街の事件に巻き込むべきではないのに・・・。

アドルフは不貞腐れた私の様子を気に留めることなく話始めた。


「お前の読み通り、例の小屋を見つけた。長くは小屋を見張っていられなかったが、誰かが使っている痕跡があった。」


調査について突然話し出したアドルフを止めようと、私は勢いよく立ち上がった。


「ちょっと!」


アドルフは私の抗議の声を無視すると、どうする?と私へ問いかけた。


私は大きなため息をつき、グラクスを横目で見る。

アドルフ、私が同行を嫌がるとわかっていて先に話を進めたわね。


私は不満顔を隠さず、アドルフに視線を向けるとまぁまぁ、となだめる様に私の視線に答えた。


はぁ・・・

私の読みが正しければ、その小屋で攫われていた女たちがそこで匿われていたはず。

その証拠を押さえる為には、こちらの動きに気が付かれる前に証拠を押さえないと・・・。


「アドルフ、行きましょう。グラクス様私たちは大丈夫ですわ、先に屋敷へ戻っていただいて構いません。アドルフの言葉は気にしないでくださいませ。」


そう言い切る私に、グラクスは真剣な目をこちらに向けると、首を横に振った。


「危険なのです、グラクス様を巻き込みわけにはいかないわ」


そう強く話す私にグラクスは、徐に私へと近づいてくると、美しい動作で私の前に跪き、優しく手をとった。


「あなたが危険な目にあうのなら・・・なおさらついていく」


グラクスは私を見上げるようにバリトンボイスで語りかけた。

ちょっと、反則でしょ!

彼の甘い言葉にまた顔が熱くなっていくのがわかった。

アドルフはそんな私たち二人の甘い雰囲気を壊すように大きな声で


「行くぞ!」


握られていた手を退け、私の腕をとると医務室を後にした。

医務室をでると、アドルフは私へと振り向くと、


「勝手な行動や、無茶なことは絶対にするな!後、何かするのならすぐに俺を頼れ」


イライラしているような様子を浮かべながら、私に念を押すように私に言った。


私たちが医務室をでると、日が傾き始めていた。

急がないと夜になってしまうわね・・・。

私は先に更衣室へと向かうと、疑剣を置き、真剣を持ち出した。

服はこのままでいいわね、いざって時に剣を扱いやすい。

私は二人と合流すると、駆け足で剣道場を後にした。


私は連れてきていたメイドと騎士の元へと向かい、お兄様とアランに宛てた手紙を渡すと、先に屋敷へ戻るように指示を出した。

私は馬車から離れ、アドルフとグラクスに合流すると、街の外へ続く門へと足を進めた。



関所へ着くと、人が溢れかえっていた。

旅行客や商人、旅に出る者や他街から帰ってきた者などで様々な人々が関所の前に集まっていた。

これは・・・正規の方法で街の外へ出るとなると時間がかかりそうね・・・。

私はアドルフとグラクスに声をかけ、ちょっと受付に行ってくるからここで待っていて、と人込みの向こうにある建物を指さした。

グラクスは首を横に振り、私について来ようとするが、それをアドルフは静止した。

私は彼らにニッコリ微笑みを浮かべると、彼らに背をむけ、関所に設置されている受付所へと駆けて行った。



残された二人は


アドルフは彼女の背中を見送ると、グラクスへ鋭い目を向けた。


「あいつの手にもし傷が残っても・・・お前が責任をとる必要はない、それに、気安くお嬢に近づくな!」


牽制するように凄むアドルフに、グラクスは何も答えないまま彼女の向かっていった方向をじっと見つめていた。


「おいっ、聞いてのか?」


そうアドルフが怒りを露わにすると、ゆっくりと視線をアドルフへと合わせた。


「あなたは彼女の恋人か何かなのか?俺が見る限り・・・友人程度にみえるが?」


グラクスの言葉に声を詰まらせる。


「俺は・・・」


グラクスはアドルフの言葉を遮るように


「俺は女が苦手だった、でも彼女は違う・・・彼女の力強い瞳に目が離せなくなる自分に気が付いた。まだ会ったばかりで、彼女の事を何もしらないが・・・彼女は強く、前向きで、人を気遣う心を持っている。そんな彼女をもっと近づきたいと・・・知りたいと思うのはいけないことだろうか?」


純粋な瞳を向け、淡々と話すグラクスに、アドルフは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。

アドルフは目の前にあった石を蹴とばすと、何も言わないままグラクスから視線を逸らせた。



そんな様子を知る由もない私は、人を掻き分けるように前へと進む、ようやく受付所へとたどり着いた。

人の目を避けながら、受付所の裏へとそっと周り混み、人が誰もいないことを確認すると、5回裏口のドアを叩く。

私は扉にある細長い長方形の空洞へ両手を入れ、中からの返事を待った。


「確認が取れました」


そっと扉が開くと、知っている顔がのぞかせた。


「お嬢様お久しぶりです。今日は街の外へ行かれるのでしょうか?」


「えぇ、忙しい時間にごめんなさい。裏口から通らせてもらってもいいかしら?」


「えぇ、もちろんです」


彼の答えを聞くと、後ろで待機していたアドルフとグラクスを呼びに行く為一度裏口をでる。

人込みの中へ戻ると、なぜか不貞腐れた表情をしたアドルフと目があった。

どうしたのかしら?

アドルフは私が来た事に気が付くと、すぐにこちらへと向かってきた。

グラクスはアドルフの背中を追うように歩いてきていた。



私たちは受付所に入ると、街の外へと続く、従業員しか知らない裏口へと案内された。

裏口の扉を扉を開けると、目の前には森が広がっていた。

案内人は右の方角を指さし、


「こちらを真っすぐ進んでいただければ、正門へと続いておりますので」


そう話すと深い礼をとり、受付所へと戻っていった。

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