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第二十二話 迷宮を突破せよ

「むう、いったいこの迷宮はどうなってるんですか。進めば進むほど変な罠が次々と……」

「普通の人だったら死んでるね」


 最初のネバネバスライムから始まり、床抜け、ずれる道、巨大な岩が転がってくるなどなど。

 どれも普通の人間だったら、大怪我。最悪の場合、死んでしまうほどの罠が次々にあおね達を襲っていた。


「まあ、結局見た目だけだったがな」


 見た目や、衝撃は凄かったが、よく調べると抜けた床はそこまで深くなく、下にはふんわりとしたマットが敷かれており、巨大な岩は弾力のあるゴムボールだった。

 

「あくまでおもてなしなんでしょうね。とはいえ、いつまでもこんなところに居られません。こうしている間にも、あの変態聖女が先輩を……!」

「変態とは聞き捨てなりませんね!」

「そうです! セリルお姉様は、あたし達の憧れる美しき聖女様なんですから!」


 迷宮に入って、そろそろ十五分を過ぎようとしている頃。

 あおね達以外の声が響き渡った。

 誰だと視線を向けると、そこには三人の少女がメイド服姿で待ち受けていた。

 三人とも顔の上部だけを隠すような仮面を被っている。


「何しているんですか? エルちゃん」


 その三人の中に見知った人物が居た。

 顔を隠し、髪型もポニーテールにしているが、バレバレだ。

 なぜか?

 一人だけプラカードを持っているからだ。

 そこには、おいでませと書かれていた。


「え、エルお姉様。なんだかばれてますよ……!」

「そ、そんな。顔を隠して、髪型まで変えてるのに……!」


 ひそひそと両側から焦った様子で耳打ちをする二人の少女。

 左に居るのは、銀髪ツインテール。

 右に居るのは、青髪ショートヘアー。

 二人とも、エルよりは身長は高く、若干屈んだ状態だ。

 そんな焦った二人に、エルは落ち着きたまえと書かれたプラカードを右手に持つ。

 そして、続くように左手に今の私達はメイドさんと書かれたプラカードを。


「どこから出しているんでしょうね、あれ」

「さあ?」

「というか、あれのせいで全然隠しきれてないのだが……」


 どうしたものかと悩んでいるあおね達を気にしつつ、最後になぜか頭からプラカードを生やすエル。

 全力でおもてなしをするまで! と書かれていた。


「で、ですよね!」

「よーし! メイドとして全力でおもてなしをしましょう!」


 バレバレ密談が終わったエル達は、改めてあおね達と向き合う。


「というわけで、私達のおもてなしを受けてください!!」

「時間はたっぷりあります。さあ、ごゆるりと」

「そんな暇はありません。申し訳ないのですが、ぱぱっと突破しますよ!」

「油断するな。真ん中の少女の力は計り知れない」


 一歩前に出るあおねに注意を促しつつ、かむらは構える。


「まあ、楽しませてくれるなら十分に楽しんでからでも良いんじゃない?」


 そう言いつつも、獲物を狩る獣がごとくエル達を睨む。

 緊迫する空気の中、エルは再びプラカードを取り出す。

 そこにはいらっしゃいませ、お嬢様方!! と書かれていた。




・・・・



「はっ!?」

「どうしたんだ? みや」


 迷宮を進んでいたみやは、何かに気づいたかのように声を上げて立ち止まる。

 

「……ううん、なんでもない」

「そ、そうか?」


 いつもとどこか雰囲気が違うように思えた康太だったが、にへらと笑った顔はいつも通りのみやだったため気にしないことにした。


「にしても、最初はやばいって思ったけど。なんだかんだで楽しいな」


 最初のおもてなしというもののせいで、若干びくびくしていた康太と涼だったが、実際はメイド達による楽しいおもてなしだった。

 最初は、たくさん作られたシュークリームを食べるだけのもの。

 が、実際食べてみると一つだけわさびが大量に入っており、康太が引き当ててしまった。


「康太くん大丈夫?」

「ま、まあ。若干ひりひりしますけど」


 次は、メイド達とのゲーム勝負。

 トランプ、チェスなど。

 よくある遊び道具を使って、ここが地下迷宮だということを忘れて遊んだ。

 

「なんだか景色が変わらないから、どれだけ時間が経っているかわからないね」

「ですよね。まあ、携帯もありますからそれで確認できますけど。あー、もう一時間半か。そろそろ抜け出せるか?」


 迷宮に入ってから一時間半以上が経つ。

 おもてなしは十分に楽しめたが、そろそろここを抜け出し、地上に戻りたいと思い始める。

 

「っと、分かれ道だな」

「どっちに進めばいいんだろ?」

「……こっち!!」

「み、みやちゃん!」

「おーい! 置いていくなって!!」


 何かに呼ばれたかのように右の道へと進むみや。

 康太と涼は慌てて追いかけるように走り出すが、追い付くことができず段々姿が小さくなっていく。


「ちょ、あいつ。あんなに早かったか……!」


 運動神経が良いことは知っていた康太だったが、今のみやは明らかに早すぎる。

 

「みやちゃーん! 待ってー!!」

「お先に地上へー!!!」


 呼び止めようとすると叫ぶが、みやは独走。

 完全に姿が見えなくなり、康太と涼は足を止める。


「ま、マジかあいつ。加速装置でもついてんじゃねぇか?」

「す、凄い……早さ、だったね」


 呼吸を整えながら、二人はどうしたものかと悩む。


「お飲み物です!」

「ふお!?」

「か、壁から……」


 刹那。

 壁がくるっと回転し、そこから氷が入った飲み物を持った黒髪ロングヘアーのメイドが現れた。


「ささ、どうぞ」

「あ、ありがとうございます」

「凄く冷えてますね」

「そうそう。ゴールはもう少しですので」

「マジっすか?」


 冷えたオレンジジュースを一気飲みし、残った氷をごりごりと噛み砕いた康太は、メイドの言葉に声を漏らす。


「それにしても、凄いですね。こんなものを作るなんて」

「ふふ。楽しんでもらえてますか?」

「そりゃあもう。最初は岩が転がってきたりとか、床が傾くとか、そういうのを想像していたんですが」

「普通に、メイドさん達におもてなしされただけだった、だね」


 空になったコップを二つとも回収したメイドはにっこりと笑顔を作り再び壁に背を預ける。


「それはよかったです。では、ゴール目指してファイト! です」


 応援の言葉を残し、メイドは姿を消した。


「ふう……それじゃ、さっさとゴールに行きましょうか」

「他の皆はもうゴールしてるのかな?」

「どうでしょうね……てか、こんな迷宮が家の地下にあるとか。セリルさんって何者なんでしょうね」

「お金持ち、だと思うけど。なんだか違う世界の住人みたいに思えるよね」


 喉が潤った二人は、ゴールが近いということで、残りを他愛のない会話をしながら、歩き進むことにした。

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― 新着の感想 ―
[一言] シュールな光景だなぁ
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