第十六話 緩い感じ
今日もシスター達は、セリルの召集に応じ集まっていた。
美しきステンドグラスを前に、セリルは両手を重ね祈りを捧げている。
「さあ、皆さん。今日召集したのは、先日のことについてお話するためです」
祈りを捧げ終えたセリルは、その場に立ち上がりシスター達の方へと体を向ける。
「確か、新しくできたプールへ行ったのですよね」
「実は、私達もいつか行こうって思っていたんです」
「どんなところでしたか!?」
先ほどの神聖な空気から一変。
年相応な反応を示すシスター達。
そんな様子を見たセリルは、くすっと小さく笑みを浮かべながら、人差し指を口元に近づけ、静かにするようにとジェスチャーする。
すると、シスター達は一斉に口を閉ざす。
「まずは、これを見てください!!」
静まった空間に響く声。
「こ、これは!?」
「おお!!」
足元に置いてあった映像機からでかでかと写し出されたのは、零をセリルが押し倒している映像だった。
「まさか最後まで!?」
一人が問いかけると、一斉にセリルの言葉を待つように視線を集中させるシスター達。
「……残念ですが」
本当に残念そうな表情と声。
それと同時に映像は、結界を破壊したみやのシーンへと切り替わる。
「セリル様。彼女は噂の」
「ええ。あの方に身を捧げるうえで最大の障害となるであろう少女。最初はかもしれないという段階でしが、今回の件で確定しました」
いつにも増して真剣な表情で、セリルはエルの盾を砕こうとしている映像で一時停止させる。
「彼女のこの力は……闇です」
・・・・
「ついに闇の力に目覚めてしまったぜ……」
どや? とポーズを決めながらこちらの反応を伺うみやに対して、俺はそっと頭を撫でる。
「にゃうー」
「とりあえず、こいつの話を聞こう。な?」
「うむ」
あの一件から二日後。
俺は、意を決し、みやをキュアレと会わせた。
さすがにあれはキュアレ抜きで解決するのは無理と判断したからだ。
「どうも、零の幼馴染みやです」
「どもども。零と同居してる神です」
「いや、名前を言えよ」
「キュアレです!」
「ねえ」
「んー?」
「なんでビキニなの?」
軽い自己紹介を終え、みやはすぐキュアレの格好に突っ込みを入れた。
そう。
キュアレは、いつものジャージ姿ではなく、なぜかピンクのビキニ姿なのだ。
いつもだらだらと一歩も部屋から出ずに過ごしてきていたのに、モデル並みのスタイルである。
まあなんか若干腹はぷよぷよしてそうだけど。元からか?
「いつもは俺から奪ったジャージを着ているんだが、どうやら俺達が楽しそうにプールで遊んでいるのを見て着たくなったようだ」
「じゃあ、一緒に来ればよかったのに」
「外に出たくないでござる」
「この通り引きこもり属性だから無理だ」
「なるほどー」
「えへへ」
みやだから心配はないと思ったが、この緩い感じはなんだ。
「それで、そろそろ本題に入りたいんだが」
「そだねぇ。まあ、結論から言うと」
「ドキドキ……」
「あれは闇の力だね!」
「くっ! やはり我が封じられし闇が溢れ出てしまったか!」
「二重人格で、闇の力を所持? 中二病の波動がひしひしと感じます!」
どこから聞こえてくるんだと周囲を見渡すと、部屋の端。
その天井にあおねが居た。
「あおちゃん?」
「どもです。美少女忍者あおね参上!!」
「自分で美少女っていうか普通」
「あおちゃんは美少女だから仕方ない。でも、忍者だったのかー。ただ者ではないとは思ってたけど」
「えへへ。忍者だったんですよー」
だから、なんだこの緩い感じは。
「先ほどの話から、今のみや先輩は光。表のみや先輩は闇となるんじゃないでしょうか」
「おー、より中二病感が増し増しに!」
「そういえば、お前中二病だったな。すっかり忘れてた」
「先輩。初期設定は、だいたいふわっとしているものですよ」
「だねー。初期設定っていつの間にか忘れられることが多いからね」
それは漫画やアニメの話……いや、この突っ込みは野暮か。
「ともかくですよ。今後は、力が暴走する恐れがありますから。その辺を気を付けないと」
あおねの言う通りだ。
あの時は、止められたが……もしかしたらあのまま暴走してしまうってこともある。
「それは大丈夫じゃない?」
「なんでだよ」
キュアレは、びしっと人差し指で俺を差す。
「零が止めてくれる」
「あの時は止められたけど、今度もうまく止められるかは」
「暴走する原因となるのは、十中八九あの西の聖女絡みでしょうね」
西の聖女……セリルさんか。
まさかあんなことをしてくるとは思わなかった。
次会う時、どうなることやら。
「聖女……聖女……」
っと、表がまた。
「ステイ。ステイだ、みや」
「ガッテン!」
危ない危ない。
「おっと、今はまだ精神が不安定のようですね」
「よーし。じゃあ、楽しいことしよう」
そう言ってキュアレはコントローラーを手に持つ。
「人数分あるよー」
「お? これって最近出たばかりのパーティーゲームじゃないですか」
「やろうやろう! ほい、零も」
みやからコントローラーを渡された俺はまた思った。
……こんなに緩い感じでいいのか? と。




