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第十四話 スーパー幼馴染

「み、みや?」


 助けに来てくれた人物が、あおねやここね、かむらではないことに驚きつつも、いつもと様子が違う幼馴染に俺は困惑している。

 様子から察するに、表みやになっているのだろうが……。


「私が構成できる中でも最高位の結界だったのですが……こうも容易く破壊するとは」


 そうだ。

 二重人格とはいえ、一般人であるみやが結界というファンタジーなものを破壊するだなんてありえない。

 それも素手で。

 

「やはり、あなたは普通じゃありませんね」

「どういう、ことだ?」


 セリルさんは何かを知っているのか?

 確かに、今のみやは普通じゃない。

 なんか黒いオーラのようなものを纏っているし……。


「……」


 刹那。

 無言のままみやは飛び出し、拳を振るう。

 それに反応し、エルさんが前に出て、どこから出てきたのか。多きな白い盾で、その攻撃を防いで見せた。

 まるでバトル漫画のように激しい衝撃波が発現し、できたばっかりのトイレが粉々に吹き飛ぶ。

 

「えぇ……」


 最近はファンタジー色がより強くなり、慣れ始めてきたのだが、これはさすがに……。

 

「邪魔だよ」

「……」


 ひび割れた大盾越しにみやの殺意が籠った静かな声が聞こえる。

 が、エルさんは一歩も引かず、空いている左手に光を灯す。

 

「そこまでです!!」

「派手にやってるね。防音の結界がなかったら大騒ぎだった」


 これからより激しい戦いが始まる予感がしたところで、あおねとここねが登場する。

 

「うひゃあ、これまた派手に……きゃっ! パイセンのパイセンが見えそう!!」


 パイセンのパイセンってなんだ。

 そんな突っ込みをする暇もなく、俺はぐいっと海パンを上げた。


「まったく、あなたは忍者ですか?」

「私達が言うのもなんだけどね」

「ふふ。これでも、西の聖女ですから」

「どういう理屈ですか。それよりも」


 あおね達が見詰めるのは、当然みやだ。

 いまだにどす黒いオーラを纏っており、いつ襲ってきてもおかしくはない状態だ。

 

「ちょっと零先輩。みや先輩、ありえないオーラ纏ってるんですけど。どうにかしてくださいよ」


 どうにかって……。


「零ならできる。がんばっ」


 こんな状態のみやは初めてみる。

 俺にどうにかできるかどうか……エルさんも、まだ警戒しているようで大盾を構えたままだし。

 元凶であるセリルさんは、笑顔で立っている。


 俺は、頭を乱暴に掻き、ゆっくりと立ち上がる。

 そして、みやの前へと出る。

 こうして見ると、どうなってるんだこの黒いオーラ。


「みや、俺は大丈夫だ。だから、落ち着こう。な?」


 いつものみやだったらこれでなんとかなりそうだが、今のみやに効くかどうか。


「……」


 みやは、ゆらゆらと歩き出す。

 あおね達は、身構える。

 だが。


「わかった。零が言うなら止める」


 甘えるような声で、抱きつくみやにほっと胸を撫で下ろす。

 黒いオーラも消え、いつもの表みやだ。

 

「あっさりですね」

「ここまであっさりだと、零の言葉には催眠効果でもあるんじゃないかと思うよね」


 自分達で、俺ならできるとか言っておきながら、この言い様。

 まあ、俺自身もあっさりと止められたから正直驚いているけど。


「そこの性欲まみれの聖女」

「あら? 私のことですか?」


 あなた以外誰が居るんですかセリルさん。


「零の童貞を貰うのは私。手出ししたら許さない」


 なにを言ってるんだみや。

 俺に抱きついたまま、右脇から顔を出してそんなことを言う表みや。それに対してセリルさんは。


「ふふ。そんなことを言われては……先に奪いたくなってしまうではないですか」


 もはや自分の欲を隠すようなことをしない発言で、みやへ対抗心を示す。


「聖女として、どうなんですか? それ」

「もはや聖女じゃなくて、性女」

「手厳しいですね、皆さん」

「どうでもいいが、この状況どうするつもりだ?」


 と、出入り口に立っていたかむらが、トイレの中で見て言う。

 先ほどの衝撃で、もはや使い物にならない状態だ。

 しかも、人払いの結界とやらは破壊され、時期にここへ誰かが来てしまう。

 そうなったら、この状態を見て大騒ぎになるだろう。

 爆弾でも爆発したのか!? とか。


「それならご心配なく。エルがなんとかしてくれますから」

「エルちゃんがですか?」


 どういうことだ? と疑問を持ったままの俺達は一旦トイレから出ていく。

 すると、エルさんは両手をかざし光を解き放った。

 

「嘘、だろ?」


 それは一瞬の出来事だった。

 光が収まり、視界に映ったのは……破壊される前のトイレの風景。

 まるで、何事もなかったかのように修復されていた。

 幻覚? いや、これは。


「どういう力なんだ」


 さすがのかむらもこれには驚き、エルさんを睨む。

 すると、エルさんはプラカードを取り出す。


「企業秘密、ですか」

「……さて、これで落ち着いてお喋りができますね」


 四人は俺を護るように前に立つ。


「そう警戒しないでください、と言っても無理ですよね」

「当たり前です。まさか、ここまでの強行手段をとるとは」

「君達の目的はなんだ? 零を襲って何をするつもりだ?」


 いや、その人はたぶんお前達が思っているようなことは考えていないんじゃないか?

 ただの勘だけど。

 

「私はただ世のため人のためにと」

「零を襲ったってこと?」

「そんなところです。本来なら、もっと親密な仲になるまで慎重に接するつもりでしたが……」

「ということは、西は彼の力を利用して悪事を企んでいるわけじゃない、てことでいいのかな?」


 え? だ、誰だ?

 会話に参加してきたのは、薄い紫色の長い髪の毛を一本に纏めた男。


「あ、兄上!」

「兄上? てことは」

「はい、かむらちゃんのお兄さんです」


 かむらの兄か。

 なんだか掴みどころのない雰囲気っていうか、何を考えているのかわからないっていうのか?

 一見優しい感じのお兄さんって感じだけど、それが全てじゃないように感じる。


「やあ、初めまして。君が明日部零くんだね?」

「はい。そうですけど」

「僕の名前は剣咲霧一。かむらちゃんの兄だ。君とは一度ゆっくりとお話をしたかったんだけど……今は、こっちを一旦片付けないとね」


 そう言って、セリルさんとエルさんへ体を向ける。


「西の聖女セリル。そして、そのパートナーエル。今一度問う。君達は、彼のことを利用して悪事を企んでいるわけじゃないんだね?」

「悪事だなんて。私達は、あなた方と同じく、この世の闇を晴らすために行動しています。そして、そのためにもそのお方のお力が必要。襲ったのは……少々興奮してしまいまして」


 少々? あれが少々……。

 脳裏に浮かぶのは、だらしない表情で俺のことをしゃぶりつくそうという勢いだったセリルさんの姿。

 あれが少々だったら、全力だったらいったいどうなっていたんだ俺は。


「僕達もまだ彼の力を全て把握していない。あまり刺激しないでほしいね」

「私も頭では理解しているのですが、どうにも聖なる光を求めたくなってしまうんです」

「俺ってそんな光放ってるのか?」

「さあ?」

「性なるの間違いなんじゃない?」

「こんな男のどこに惹かれるのか。まったく理解できない」


 自分ではわからないものがセリルさんを狂わせているってことなんだろうか。

 この世界の主神から力を授かった。

 今までは、本当に凄い能力だ、みたいな感覚で過ごしてきたけど。

 やっぱり、神の力は計り知れないってことなのか。

 

「そちらの言い分はわかった。こちらとしても、西と争うのを避けたい。だから」


 霧一さんは、なぜか俺に近づき、肩に手を置く。


「明日部零くん」

「は、はい」

「かむらちゃんの心を動かした君なら、きっと西の聖女のこともうまい具合に虜にできるはずだ」

「え?」


 なにを言っているんだ、この人は。


「兄上。別に自分は、虜になど」

「というわけで! 今日は解散! 物騒なことはここで止めて、当初の予定通りプールを満喫するように!」


 パン! と両手を叩き、霧一さんはさわやかな笑い声と共に姿を消した。

 いや、この状況で楽しく遊ぶとか……。


「ところで、みやさんや。なにをしているんだ?」


 なぜか無言で俺の体を洗浄しているみや。

 いったいどこから洗浄道具を。


「あの性女のせいで汚れた体を綺麗にしてるの」

「大丈夫ですよ。押し倒す時に、ちゃんと光のマットを敷いていましたから」


 え? そんなものあったっけ?

 というか光のマットってなんだ。


「……戻りましょうか」

「そう、だな」


 とはいえ、楽しく遊べるかわからないけどな。

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― 新着の感想 ―
[一言] 光のマットとは(哲学) というか性女様にマットプレイとか悪化してませんかね……?
[一言] エルさんすげぇ
[一言] ヤバい光のマットで全部持ってかれたw みやはヤンデレぽくないのは主人公に従順だからかな? あまりヤンデレ特有の気持ち悪さを感じない。 黒いオーラ?知らないなぁ(スットボケー
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