第十三話 レッツ! 性戦!
「せ、セリルさん。くっつきすぎでは?」
「そんなことないわ。だって、こうやってないとどこかに飛んでいっちゃうかもでしょ? ほら、ぐいっと」
俺達は、さっきまでゆったりと流れるプールで遊んでいた。
しかし、近くから聞こえてくる楽しそうな声に釣られやってきた。
ここは一人でも、二人でも滑れるところで、途中先に滑っていた康太が、頑張れとばかりに疲れた様子で笑った。
そして、現在。
俺は、みや、あおね、ここね、かむら、セリルさんの六人でやってきている。
下には、白峰先輩、エルさん。それに康太を加えた三人が待っている。
で、六人なので。
二人ずつ滑ればいいのだが……。
「ぐぬぬ……負けた」
「あたしが読み負けるなんてー!」
「まあ、しょうがないか」
「組み合わせなどどうでもいい」
じゃんけんの結果。
俺とセリルさんが一緒に滑ることになった。
「ふふ、ふふふ」
うわぁ、俺だけに聞こえるような笑い声が怖い。
何かを企んでいるような。
それでいて、勝ち誇ったような。
体をこれでもかと言うぐらいにくっつけ、ぎゅっと俺のことを離さまいと両手に力を入れている。
「こらー! くっつきすぎだぞー!!」
「そーですよー! 離れろー!!!」
二人の必死な抗議の声には、まったく耳を貸さず、セリルさんはなぜか荒くなっていく息で、俺の耳を擽る。
「はあ……はあ……じゃあ、行きましょう。零くん?」
「は、はい」
身の危険を感じながらも、俺達は滑る。
あんまり待たせると他の客達にも迷惑がかかるからな。
「ぐおっ!?」
滑り始めて、俺はトルネードがどれほどのものなのか実感する。
カーブ。
またもカーブ。
直線など最初の数メートル程度。
あまりのカーブの多さに、流れはそれほど激しくはない。これで流れが激しかったら絶対酔う。
それほどのカーブの多さだ。
昔、ジェットコースターで落ちるんじゃないかと思うほどの連続回転を経験したが、これはそれ以上かもしれない。
「零くん、大丈夫? お姉さんがついてるからね」
「さ、さすがにこれぐらいはだ、大丈夫ですよ」
確かにカーブしながら徐々に落ちていくこの感覚は、怖いと思うが、俺は大丈夫だ。
が、セリルさんは俺を元気付けるようにずっと声をかけてくる。
その度に、呼吸は荒くなっていき、その豊満な胸を背中に押し付け、色んなところをすりすりと擦り付けてくる。
そして、ついに。
「ぶほっ!?」
滑り終える。
よし、これでセリルさんも。
「……あの」
「なぁに?」
「もう滑り終えたので、離れてくれませんか?」
滑り終えたのにセリルさんが離れてくれない。
高揚した表情で、くっついたままだ。
俺は、仕方なくそのまま泳ぐ。
「よっと」
「羨ましい」
プールから出ると、すぐ康太からの嫉妬の声が聞こえる。
端から見たら羨ましいのだろう。
しかし、俺は身の危険を感じてる。
いや、嬉しいけど。
俺だって男なんだ。セリルさんは飛び抜けた美人で、スタイルもいい。男の本能というやつか? それを掻き立てられるというか。
それでも平常心を保っていられるのは。
『主人公の耐性力!!』
なのである。もし耐性がなければ俺はどうなっていたことか。
ありがとう耐性。
「……すみません。俺、トイレに行きたいので」
「じゃあ、一緒に行きましょう」
意地でも離れないのか。
「よいしょー!!」
「水面着地!!」
そんな会話をしていたら、後から滑ってきたみやとあおねがもの凄い勢いで出てくる。
そして、跳ねるように水面から出てきた。
あおねはともかくみや……お前、凄い身体能力だな。昔から凄いとは思っていたけど、なんか最近はそれに拍車がかかっているっていうか。
「ほらほらー、セリルさん。零が困ってるからー」
「さあ、先輩。おトイレはあちらですよー」
「あんっ。もう、乱暴なんだから」
二人の協力プレイのおかげで俺からセリルさんは離れてくれた。
ふう……これでトイレに行ける。
「すぐ戻ってくる」
それにしても、セリルさん。
あれ、完全に隠す気ないだろ。
なんで、俺を狙っているのかわからないが……あの様子だと性的に襲われる恐れがある。
やっぱり、そういう人なのか……。
人は見かけによらないとはよく言うが、あんな美人が肉食も肉食の性欲モンスターとは。
「お、誰もいない」
誰もいないトイレで、俺はさっさと皆のところへ戻ろうと用を足す。
「……ん?」
手を洗っている最中。
気のせいかもしれないが、妙な気配を感じた。
そっと、取り付けられている鏡を見ると。
「……」
なぜかセリルさんが立っていた。
「ちょっ! なにしているんですか! ここ男子トイレですよ!」
そもそもみやとあおねに引き留められているはずじゃ。
「さすが、というべきでしょうか。あぁ……やはりあなたは私達が崇めし存在。あれほどのスキンシップをしたのに、平常心を保つなんて……」
あれ、なんか様子が。
いや、ずっとおかしかったけど。
「ですが、そんなあなた様だからこそ、この身を捧げられる」
「な、なにを言ってーーーぐあっ!?」
刹那。
俺は、セリルさんに押し倒される。
馬乗りになった彼女の呼吸は、今まで以上に荒く、その表情は清楚感など皆無。
欲にまみれただらしないものだった。
「お許しくださいお許しください……こんなはしたない私をお許しください。ですが、ですが! あなた様の聖なる力が、私を駆り立てるのです!!」
「いや、だからなにを」
「もう、お気づきになられていますよね? 私が、聖女であることを」
やはり、彼女は。
「あなた様のことはお聞きしております。だから、もう隠す必要などありません。私は聖女……その身を神々に捧げ、世のため人のために光をもたらす存在!」
と、なぜか下半身部分の水着の結び目に指をかけるセリルさん。
「ま、待ってください! なにか勘違いをしているようですが。俺はただの高校生ですよ!」
「そんなことはありません。あなた様からは、圧倒的な聖を感じます。それは神に等しい……いえ! 神そのもの!!」
まさか与えられた力のことか?
「私、ずっと待っていました。この身の全てを捧げられる存在を」
しゅる、と結び目を徐々に緩めていくセリルさん。
やばいやばいやばい。
このままじゃ!
『きゃー! ついに零が童貞を卒業しちゃうー!!!』
ええい! 相変わらず時と場所を考えずにうるさい神だ!
「あなた様の噂を聞き、あなた様のことを見て、あなた様と触れ合って……確信しました」
その瞳には、幻覚かもしれないがハートマークのようなものが見える。
「さあ、参りましょう」
どこへ!?
「邪魔が入らないように人払いの強力な結界を張りましたから、ゆるりとできます」
ぐいっとおもむろに俺の右手を掴み、自分の胸に押し付けた。
「いざ! 性戦!!!」
「性戦!?」
というか、いつの間にかエルさんまでいるし。
プラカードで、わざわざ性戦って文字を書いてるし……ちょ、やばい。おーい! 誰かー!
「ちょっ! やめ」
もはや飢えた野獣がごとく、俺の海パンに手をかけ、無理矢理ずらそうとする。
俺は必死に抵抗するが、このままでは……!
「さあ、さあ! あなたの聖なる剣で、私に白き光を!!」
「なに言ってるんですか!! あなたは!?」
も、もうだめだ。
海パンが奪われ。
バリィン!!!
「え?」
「あら?」
俺の息子が露になろうとした時だった。
ガラスが割れたような音が響き渡る。
どうやら結界が破壊されたようだ。
まさか、あおね達が!? セリルさんとエルさんが消え、俺が中々戻ってこないことを察して助けに来てくれたのか?
「……」
そこに立っていたのは……みやだった。
正直、勢いのまま書きました。




