第八話 不安しかない
康太も無事宿題を終え、俺達は予定通り新しくできたレジャー施設へと行くことになった。
電車でだいたい四十分。
その後、駅から徒歩で十分。
計五十分ほどで到着だ。結構人気があるため、早めに行かないと混んでしまう。
そのため早めに行くことになった。
「いやぁ、やりとげたぜ! こんなに初めてかもな!」
「そうだな。お前は、夏休みが終わる数日でやるからな」
「そして、毎回終わらず夏休み終了後も……」
「だが! 今回の俺は頑張った! もう俺を縛るものはない! 高校最初の夏を思いっきり満喫するぜ!!」
集合場所である駅前には、俺とみや、康太、白峰先輩、あおね、ここね、かむらの七人がすでに集合していた。
かむらは、本当にギリギリまで渋っていたのだが、昨日やっと折れたようで。
「まったく、どうして自分が」
「こらー、いつまでぶつぶつ言ってるんですかー」
「自分は、君達と仲良くするつもりはない。今回は、その新しくできたプールとやらで、体を鍛えるためだ」
「などと言いつつ、遊ぶのが楽しみな模様」
「そんなこと思ってない! いい加減なことを言うな、ここね!」
「わー、助けてー」
怒鳴るかむらから逃げるように、俺の後ろへと回り込むここね。
「なあ、俺は会うのは初めてなんだが。かむらちゃんって」
後方にここね、前方にかむら。
二人の忍者に挟まれている中、康太はこんなことを聞いてきた。
「本当に十三歳なのか?」
かむらに聞こえないように。
こそっと。
康太が言わんとしていることは理解している。そもそも康太の視線が、完全にかむらの胸に集中しているからな。
それに気づいたかむらは、キッと康太を睨む。
「どこを見ているんだ、君は」
「あ、いや。おぱ、いやいや。どこも見てないぜ? な、なあ?」
まるで今にも噛みつきそうな威圧感。
それをダイレクトに食らった康太は、視線をそらす。
「まったく……ん?」
「にゃははは」
そっぽを向いたところで、かむらはみやと視線が合う。
そういえば、まだこの二人……。
裏みやはともかくとして、表の方はバチバチのままだろうなぁ。
「と、ところで後は誰が来るんだっけ?」
早朝からピリピリした空気に、白峰先輩がなんとかしようと話題を変える。
「そうですね。後は、慶佑と優菜さん。それに、セリルさんとエルの四人ですね」
あの後、セリルさんが用事を終わらせ、エルさんを引き取りに来た時に、今日のことを話した。
すると、獲物を狙う獣のごとき眼光で飛び付いてきた。
「あのセリルさんが……それに優菜さんも。やったな」
などと言いつつ俺の肩に手を置き、同意を求めてくる。
「なにがだよ」
「んだよ! わかってるくせに!! お前は相変わらずむっつりだなぁ!」
「誰がだよ……」
「ほほう、先輩はむっつりなんですか」
「誤解するな。俺はむっつりじゃない」
「じゃあ、スケベ?」
「スケベでもない」
「てことは……間をとって無関心ってことで!」
「なんでそうなる!」
なんだ、この四方八方からの攻撃は。
「相変わらず騒がしいな、お前達」
「おはよう、皆。早く来たつもりだったんだけど……」
言葉攻めをされていると、慶佑に優菜さんが到着した。
相変わらず仲が良いようで、手を繋いでいる。
「お前こそ、相変わらず姉ちゃんと仲が良いみたいだな!」
「な、なんのことだよ」
「はっはっは! 朝からお手々を繋いでいるではないか!」
「これは、姉さんが無理やり!」
「無理やりじゃありません。慶ちゃんが自分から」
「姉さんは黙ってくれ!」
「え? な、なんで怒るの?」
な、なんとか二人は慶佑の方に行ったか。
さて、これで後はセリルさんとエルさんだけだが。
「皆ー、こっちよー」
「あれ? 改札口前に居るのってセリルさんじゃないか?」
「あの人がセリルさんなの? ということは、隣に居るのが」
どうやらこれで全員集合したようだ。
電車も後十分ほどで出るから、ちょうど良いぐらいだ。
「まさかセリルも来るなんて」
「エルがどうしても行きたいって言うから」
「えー? 本当にそれだけ?」
「ふふ、それだけよ」
その後、切符を買いホームまで行き、電車が来るのを待った。
ここまで人数が多いと色々目立つな。
まあ、人数よりも。
「なあなあ」
「なんだよ」
待っている間、それぞれがこの後のことを話し合っていると、康太がまたもや声を潜める。
「今回の夏はマジで最高だと思わないか? 見ろよ、あの美の領域を……!」
そう。
目立つ理由で一番でかいのは、彼女達の容姿だろう。
美少女、美女揃い。
夏の装いもさることながら、目立たないわけがない。
「慶佑。お前も今回は、弾けろよ!」
「何が弾けろだ。俺は、お前達と違ってバリバリのインドアなんだ。プールに行くのは良いが、俺は読書でもしてゆっくりするつもりだ」
「はあ? お前、遊び場に行って遊ばないってのか?」
「何をしようが、人の勝手だろ?」
俺を挟んで言い争わないでほしいんだが。
「だったらお前、優菜さんを放っておくのか? あんな美人、絶対ナンパされるぞ!」
「だ、だからなんだって言うんだよ」
「まったく素直じゃないな、お前は」
確かに、これだけの美少女、美女が揃っているとナンパをされる確率はかなり高いだろう。
しかも、今は夏で行くのは開放的な気分になれる場所。
最近は、ナンパ男達を見かけなかったが。
『心配いらないと思うけどねぇ。ナンパする相手が相手だし』
……うん、まあそうだな。
正直、ナンパされても彼女達なら容易にどうにかできるんじゃないかと思ってしまう。
それと同時に。
『不安だ……』
『さすが心配性。まあ、これだけのメンバーが集まり、かつ夏のプール。何も起こらないはずもなくってねー。あー、アイスおいち』
ジャージの神様からの不安を募らせる言葉を受けた後、電車が到着する。
俺達は、いざ! と気合いを入れながら乗り込み、目的地へと向かった。




