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第三十話 あおね出動

「お? 出てきましたね」

「大体三十分……情報から察するにまだまだみたいだね」

「まあ、軽いジャブですからね。これで堕ちちゃったらさすがにチョロイン過ぎて心配になりますよ、友達として」


 零とかむらが入っていった玩具屋からさほど離れていない場所で、動きがあったとメッセージを受け取ったあおねとここねは、動き出す。


「それにしても、相変わらずあおねのお友達は凄いね。ここまで協力的なんて」

「運命によって出会った友達ですからね」


 今回の作戦において、あおねは動ける友達を集め、各地で監視と情報を送る役を与えている。

 最初から、かむらには自分達が監視をしていることはばれている。

 かといって監視を止めるわけにはいかない。

 とりあえずは、かむらにも気配を悟られない距離を保ちつつ、自分達は護衛のほうに力を入れることに。


 監視に関しては、素人達に任せている。

 下手に気配を消すとかむらが、それを察知しようとして気が散り、勝負を妨害する恐れがある。

 そこで、気配駄々漏れな素人達の方がまだマシ。

 

 追跡はさせない。

 そもそも予め行くところは決まっているので、追跡する必要がない。

 行く場所に、情報を送る者達を配置させるだけでいい。

 一瞬だけなら、いくらかむらとて気のせいだと思うだろう。


 そもそも、今日は日曜日だ。

 普段より人が多いうえに、最初の時点で注目されていると印象付けた。そのためまた見られてる……と思うだけで、その視線の中に、あおねが送り込んだ監視役達が居るなどとは思わないだろう。


「ちゃーんと報酬もありますからね! ついでに、この作戦が終わったらお疲れましたパーティーを開く予定です!!」

「ほんと、人を動かすのが上手だね」

「そんなことないですよー。あたしはただ皆と楽しく、騒がしく、過ごしたいだけですから。さて、怪しい人物はっと」


 あおねがメッセージを確認している間に、ここねは望遠鏡で周囲を確認しつつマスクをずらそうと指をかける。


「な、なんと!?」


 と、あおねの驚いた声に望遠鏡から目を離す。


「どうしたの?」

「やはり来ましたか。不確定要素……」


 ここねも何があったのかとメッセージを確認する。

 そこには、見覚えのある名前が表示されていた。


「みや? 近くに居るの?」


 各地に配置している運命の友の一人からの情報により、みやが近くに居るとの情報が入った。

 しかも、どんどん零とかむらの方へと向かっているように見えると。


「むむ……今日はお店のお手伝いでこの時間帯は動けないはずなのに」


 当然みやだけではなく、零に関わる友人達の行動は把握している。

 その中で、一番厄介なのがみや。

 みやは、前かむらが接触した時に悪い印象を与えてしまった。そのため、零と一緒に居ることが知れればどうなってしまうか。

 

「ここは、あたしがフォローに向かいます! ここねは引き続き、護衛を!」

「わかった」


 このままでは、作戦は台無し。

 下手をすれば、中止という可能性もある。零ならば、うまく立ち回る可能性はあるが、この世は何が起こるかわからない。

 

「あおね! 出動!!」


 少しでも不安要素があるなら、それを退ける。

 あおねは、みやが目撃された場所へと疾風の如く駆けていく。



・・・・



「むむ……なんでだろう。今日はやけに胸がざわざわする。表よ、何があるというのだ」


 本来であるなら、喫茶店で注文を承り、料理を作っているはずだった。しかし、妙に胸がざわつく。

 みやは、このざわめきの正体はなんだ? と考えた時に、すぐ頭に浮かんだのが零だった。

 そこから、今日の零の予定を思い出し、自然と足が動いていた。


「今日は、あおちゃんやここねちゃんと買い物だって言ってたけど……」


 二人のことはみやも信用している。そもそも二人から荷物持ちとしてお借りしますねーと言いに来ていた。

 零の様子も、いつもと変わらない。

 その時は、みや自身もいつも通りの態度で了承をした。

 なにもない……なにもないはずだ。


「でも、このざわつきは……うがー! どこじゃー!! 零ー!!」


 やはりここは零に連絡を取り、それで判断しようとスマートフォンを取り出すみや。

 が、そこへ。


「みや先輩!!」

「あおちゃん!? なんでここに!? それも一人で」


 あおねが姿を現す。

 みやは、零やここねと一緒に居るものだと思っていたため驚きを隠せないでいる。


「いやぁ、実はですね。突然の急用ができてしまいまして、一時退散していたんですよ。ですが、すぐに終わらせてこうして舞い戻ってきたわけです!!」

「おー、それはご苦労様じゃ! で、なんでこっちに?」


 用事が終わったのなら零とここねのところへ戻ればいいのでは? ともっともな疑問をぶつける。

 それに対してあおねは。


「み、みや先輩のことを見つけて体が勝手に……」


 恥ずかしそうに頬を赤らめ、上目使いで見てくる。

 そんなあおねに、みやの心は撃ち抜かれた。


「あおちゃーん!!」

「みやせんぱーい!!」


 人目も憚らず、抱き合う二人。

 近くに居た者達は、そんな光景を見て思わず立ち止まってしまう。

 

「な、なんだなんだ?」

「ほう……なんと素晴らしい光景か」

「いや、なに言ってんだ? お前」


 しばらく抱き合った二人は、満足したように離れる。

 

「それで、みや先輩はどうしてこんなところに? 今は、お店のお手伝い中では?」

「そうなんだけど……なんか妙な胸騒ぎが、我が足をここへ導いたのだよ」

「みょ、妙な胸騒ぎ!?」

「この胸騒ぎの正体を知るために、零に会わなくてはならぬ! さあ、あおちゃん! いざ行かん!!」


 あおねが零のところへ向かっているのなら丁度いいとみやは、手を握り締め歩き出そうとする。

 しかし、あおねはあぐっ!? と苦しそうな声を上げる。


「ど、どうしたの?」


 苦しそうに腹部を押さえ、表情を歪めるあおね。

 

「お、お腹が……!」

「苦しいの? 大丈夫?」

「は、はい……たぶん、少し休めば。それに、薬を持ってます、ので。あっ、でも水が」


 バッグから取り出した腹痛に効く薬を出すが、水がないことに気づき困った表情をする。

 それを見たみやは、任せて! と拳を握る。


「確か、あっちの通りにコンビニがあったはず! すぐ買ってくるから! そこで大人しくしておるのじゃよー!!!」


 通行人の妨げにならないように道の端へあおねを座らせてから、みやは水を求め駆けていく。

 小さくなる後ろ姿を見詰めながら、あおねは呟く。


「これで、なんとか……とりあえず零先輩に連絡を」


 完全に姿が見えなくなったところで、あおねは零にメッセージを送った。

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― 新着の感想 ―
[一言] 零に関することでの表みやのスペックが高すぎる…
[一言] みやの勘すごいな
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