表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/187

第二十五話 その間に

「思っていたより、スムーズにことが進みましたね」

「正直、恥ずかしかったぞ……」


 かむらとの接触後の夕方。

 俺は、あおねとここねの二人とファミレスで作戦会議をしていた。

 飲み物だけを注文し、周囲に人がいないことを確認しながらも、若干声は押さえ気味に。


「必要なことだったんです。かむらちゃんのペースを崩すために」


 かむらはいつも冷静沈着。

 そのため、それを崩すためにあの特撮攻めをしたのだ。台詞ならまだ大丈夫だったが、シーンの再現。

 それもわざわざ市販で売っている玩具を手にやる。

 今思い出してもため息が漏れる。


「零でも恥ずかしいって思う時あるんだね」


 つんつんと頭を抱えている俺のことをつつきながら言ってくるここね。


「俺だって人間だぞ? それも十五歳の」

「あっ、そういえば十五歳だった」

「おい、それはどういう意味だ?」


 確かに、年上に見られることが結構あるけど……。


「頼りになるって意味ですよ」

「頼りに、ね……」


 まあ、そういうことにしておこう。


「さて、かむらちゃんは五日ほど時間をくれと言ってきたんですよね?」

「ああ」

「では、その五日を使い作戦の確認とより良い結果を出すための話し合いをしましょうか」

「【欲魔】についても忘れずにね」

「もちのろんです。この五日間で襲ってこないとも限らないですからね。いやはや、大変ですよ先輩」


 本当に大変だ。

 まさか命を狙われることになるなんて。


「では、最初にDK大作戦についてですが」

「ああ。まず、大事なのは俺がどれだけかむらの好感度を上げられるか、だよな」

「はい。これは恋愛ゲームで言うかむらちゃんルートに入るための一イベント。ゲームのようにセーブ&ロードで戻ることはできません。一発勝負です」


 そのために作戦は練りに練る必要がある。

 でもなぁ……。


「今更なんだが」

「はい?」

「本当にこの作戦で大丈夫か?」


 いい考えが思い付かない俺が言えたことじゃないが、うまく行くか不安になっている。

 やるからには全力でやりきるつもりだ。

 つもり、なんだが。


「零先輩のことを知ってもらうには、一対一のぶつかり合いが一番なんです。しかも、今回はあまり時間がない」

「かむらは、私と同じように観察していたけど、零のことはあまりよく思っていなかった。加えて【欲魔】を倒したことで、その印象は悪い方向にいっちゃったからね」


 だから、その悪い印象を変えるべく今回の作戦を成功させなくちゃならない。

 

「ご心配なく! かむらちゃんはマジマジの真面目子ちゃんですが、意外と抜けてるところもある可愛い女の子でもありますから! しかも、条件呑んでくれたんですよね?」


 にやりと笑むあおねに、俺はああと頷く。


「それで、かむらの反応は?」

「恥ずかしそうというか、今にも俺のことを襲ってきそうな目でにらんできたというか……」


 よほど嫌で、恥ずかしかったんだろうな。あの時は、マジで襲われるんじゃないかと冷や汗が流れたからな。

 

「よしよし」


 まるで子供を安心させる母親のように頭を撫でてくるここね。相手は、エリート忍者。

 純粋な身体能力だったら、完全に俺より上だ。

 主神様の加護とやらが、どこまで俺のことを護ってくれるのか不明だから、危ない橋は渡れない。


『ねえねえ、年下の女の子に頭を撫でてもらうってどんな気持ち?』

『今は真面目な話し合いだから、シャットダウンしてくれないか?』

『はーい』


 まったく好き勝手に人の視聴覚に繋げやがって……。


「かむらちゃんも勝負をしてくれると言ってくれたんです。後は、先輩の頑張り次第です」

「……ああ。頑張ってみる」

「あたし達も作戦実行の間は、影ながら監視兼護衛をします。まあかむらちゃんと一緒ですから、よほどのことがない限り先輩に危険が及ぶことはないと思いますが」


 確かに。けど、かむらが俺のことを護ってくれる、か?


「いいですか? かむらちゃんと集合次第、まずは」


 その後、俺は飲み物を飲むのを忘れるぐらい話し合いに集中した。

 結局、今日話し合ったのは作戦のことについてだけになってしまったため【欲魔】対策は後日ということで、暗くならない内に解散した。


 決戦へ向けて俺も俺で考える。

 何が起こるかわからない。

 この世界は、俺なんか予想なんて軽く超えるようなことが起こるはずだ。

 特に【欲魔】とかが、何かをしてくるかもしれない。直接狙ってくるか、それとも。


「よう、青少年! 今帰りかい?」

「あ、はい。ただいまです、かなみさん」

「ほい、おかえり。……ふーむ」

「な、なんですか?」


 少し遅めにアパートへ帰ってくると、管理人であるかなみさんが出迎えてくれた。

 買い物袋を持っているところを見ると、夕飯の買い物の帰りだろうか。軽い挨拶を交わすと、俺のことをじろじろと見てきた。


「うん。また新たな青春の道に進もうとしているようだね」

「え?」

「そんな青春くんに、おばちゃんから特製のあめちゃんをあげよう!」


 そう言って、ポケットから取り出したのは、いつも食べている棒つきの飴だった。

 

「ありがとう、ございます」


 特製か。確かに、この飴結構うまいんだよな。もしかして、本当にかなみさん特製なんだろうか。


「うむ。では、頑張りたまえよ。若者は、今の内青春しておかないと人生損するからね。はっはっはっはっは!!」

「が、頑張ります」


 かなみさんの応援を受け、何だか頑張ろうという気持ちが湧いてきた。貰った飴を制服のポケットに仕舞い、俺は玄関ドアを開ける。


「おかえりなさい! お腹空いた!!」

「……」


 同じ大人でも、こうも違うとは。

 年齢で言えば、圧倒的にキュアレの方が上なんだけどな……。

 完全に、親の帰りを待っていた子供だぞ、さっきの言動。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 零が年下ってこと忘れそうになる
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ