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第二十四話 作戦開始

 作戦実行にともない、俺はあおねやここねからかむらに関する情報を叩き込まれた。

 そして、今現在かむらと接触するためにとある場所に立っている。


 かむらへの連絡はあおねがつけてくれた。

 まあそんなことをしなくてもかむらは普通に接触してくるだろうと言っていたが、念のためだそうだ。


「待たせたな」


 俺が待っていたのは、真夜中の公園。

 決闘の待ち合わせと言ったら公園ですよ! とあおねが言うが、なぜ真夜中。

 俺も学生だから、あんまり深夜の外出は控えたいんだが。

 それにかむらだって、まだ十三歳だし……十三歳か。


「本当に来てくれたのか」

「どうやらあおねやここねと組んでいるようだが、いったい何を企んでいる?」


 十三歳にしては、雰囲気がかなりある。

 いったいこの歳でどれだけの修羅場を……忍者の中でも、エリート中のエリートらしく、四歳の時にはもう訓練を受けていた。

 四歳って……漫画かよと突っ込みそうになったが、この世界だからなぁ、と自己で納得してしまう。

 

 それにしても、あおねはここねやかむらの上司みたいな感じらしいけど……あおねって何者なんだ? 今のレベルでは忍者ってことだけしかわからない。あおねもあおねでそこまでは詳しく話してくれなかった……いや、今は。


「だいたいお見通しって感じだな。だったら」

「ふむ」


 身構えるかむらに俺は。


「細かいことは抜きだ」

「ん?」


 俺の言葉にぴくりと反応する。


「この俺と真正面からぶつかれ!!」

「そ、その台詞は!?」


 先ほどまでかむらとは違い、なにかを言いたそうにうずうずと体を震わせている。

 

「かむら。お前、特撮が好きなんだよな?」

「な、何を言う。特撮? そんなもの自分が好きなわけがない」


 うーん、嘘が下手だなぁ。

 普段は、冷静沈着な性格らしいが、ちゃんと年相応なところもある。

 昔から忍者として訓練に明け暮れていたかむらが、唯一好きになったのが特撮。かっこいい技、かっこいい武器、かっこいい台詞。

 元から忍としての才能があり、訓練にも真面目に取り組んでいたかむらは、特撮を好きになったことで更にやる気が上がった。


 特撮に出てくるかっこいい技を再現してみたい。かっこいい武器を使ってみたい。かっこいい台詞を言ってみたい。

 これによりかむらは、十三歳にしてトップの忍となった。


 実際、特撮に出てくる技をいくつも再現しているらしい。……いや、再現って。できるとしたら昔のエフェクトもないキックやパンチぐらいだろ? と思ったのだが、普通にこの世界の忍者は二次元に出てくるようなことをできるみたいだ。

 正直、もうこの世界がわからなくなってきた。


「これで、決める!」


 ここまでは、想定内。

 俺は次なる段階へと移行した。俺は、背後のベンチに置いてあったバッグから派手な配色をした玩具の剣を取り出し、右手に持つ。


「そ、それは!?」


 そして、切り上げる動作から、そのまま振り下ろした。

 俺がやったのは、今放送中の特撮ヒーローが最新話でやってみせた決め技。敵を浮かし、そのまま追撃の切り下ろし。

 テレビでは、派手なエフェクトと効果音、主人公の格好も合わさり、観た時は俺も年甲斐もなく拳を握り締めた。


 ちなみに、俺が持っている玩具は、そのヒーローが使っている武器。スイッチを押せば当然効果音が鳴り響くが、今は夜遅いので止めた。再現率から言えば、効果音がない分見劣りすると思うが……。


「……」


 正直に言うと、めちゃくちゃ恥ずかしい。

 なにせ、わざわざ玩具を手に、十三歳の少女の前で、くそ真面目に、夜の公園でテレビの中のヒーローが使う技を体で再現する。

 一桁ぐらいの幼子だったら、恥ずかしさなどなくやっていたのだろう。もしくは、仲の良い友達同士でふざけ合いながらやるとか。

 

「えーっと」


 反応してくれないかむらに、俺は更に恥ずかしさが込み上げてきた。作戦を成功させるためとはいえ、もっと他の方法はなかったのかあおね!

 

「なってない」

「ん?」


 やっと喋りだしたと思えば、無言で俺に近づき。


「貸せ!」


 貸せと言われたので貸すと、見ていろとばかりに構える。


「いいか! さっきの技は、剣の構えから違う! 君は、真横に構えていたが、本来は刃が斜めになるように構えるのだ! そして、ここで縦に切り裂くのではなく、右斜めで切り裂くのだ!! わかったか!?」

「お、おう」


 思っていたより圧が凄い。

 作戦として、わざと間違って見せたのだが、予想以上に熱のある指導だった。

 

「そして、敵が爆発四散した後に、剣をこうやって二回ほど回転させ……はっ!?」


 その後の動きも再現しようとするが、ハッと我に帰り、固まってしまう。

 こほんっと一度咳払いし、丁寧に玩具を俺に返してくれた。


「それで、何のつもりだ?」


 何事もなかったかのように、俺から距離を取って話しだす。


「俺と、勝負をしてくれないか?」


 と、玩具をバッグに仕舞いながら言う。


「ほう、自分と?」

「まあ、勝負と言っても血が飛ぶような物騒なものじゃない。平和的な勝負だ」

「あおねの入れ知恵だろうが、自分と勝負をして君が危険ではないということを証明させるという魂胆か?」


 さすがだな。あおねやここねの言う通り察しが良い。


「ああ。命を狙われるなんて真っ平だからな。この勝負で、白黒つけようじゃないか」

「……良いだろう。その勝負とやらで、君のことを危険かそうじゃないかを判断しよう」


 よし、勝負に乗ってくれた。

 ここまでくれば後は。


「なら、今から勝負の内容を説明する」

「ああ。自分の命を護るための勝負だ。勝負内容は、そちらで決めてくれてもいい」

「ありがとう。じゃあ、さっそくだが」


 俺は、あおねが提案した勝負内容と、それにともないひとつの条件を説明した。

 最初は余裕そうだったかむらだったが、説明を終えると。


「な、な、なん、だと?」


 明らかに動揺していた。

 が、俺はそんなかむらに追撃を入れる。


「こっちが決めても良いんだったよな?」


 にやりと笑みを浮かべる。

 くっ! 自分の命を護るためとはいえ、十三歳の少女を脅しているようで心が痛む……!


「……わ、わかった。その勝負、受けよう。だが!」

「ん?」

「二日、いや三日……五日ほど待ってくれ! 色々と準備が必要だ! その間、君に接触することも、上に報告することだってしない!」


 顔を赤くしながら言ってくるかむらに、俺は首を縦に振る。


「わかった。じゃあ、準備ができたらここに連絡してくれ」


 と、俺は連絡先を書いたメモ用紙を渡す。

 

「了解。……くぅ」


 去っていくかむらの後ろ姿を見送り、一人になった俺は深く息を吐く。


「なんとか、なったか」

 

 しかし、これはまだ作戦の序盤にすぎない。

 本番は、五日後。

 それまで、色々と対策を練らなければ。

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