第十七話 接触せし裏
早いもので、もう六月だ。
梅雨、ジューンブライド。
梅雨の月とは言うが、去年はさほど雨が降った覚えがない。最近は環境の変化からか、夏だってさほど暑くない日が続き、いつの間にか秋になっていたなんてこともある。
果たして、今年はどうなるか。
俺にとっては色んな意味でどうなるのかが心配だ。
能力を授かる前の俺だったら、仲間達となんとなく過ごしていただろうが……。
「ふふ。来週の結婚式楽しみだね」
「ああ。君のドレス姿をしっかりと目に、記憶に焼き付けないとな」
「もう、恥ずかしいってば」
この季節に結婚式をあげるのか。
俺は、そこまで詳しくはないが、結婚式をあげるには金がかかる。
父さんと母さんは、婚姻届を出しただけで結婚式はあげていないって言っていたし。
そういう考えをする人達が、最近は多いなんてことをキュアレが言ってたっけなぁ。
「……すでにやってるか」
反射的に、俺は先ほどの二人に能力を使った。
その結果、結婚する前からすでにやっていることはやっているようだ。
ここまでくると、俺も大分手慣れたものだ。
最初は、能力を使うのだって悩んでいた。
レベルが上がり、あまり見たくないような情報も開示されるようになった。
テスターとしては良いのだろうが。
『零も成長したねぇ。お姉ちゃんは、嬉しいよー』
『誰がお姉ちゃんだ。お前のことをお姉ちゃんなんて思ったことはない。どっちかといえば』
『お母さん!』
『手のかかる妹だ』
『なんで!? 私のほうがずーっと! 年上なんだよ!!』
年上ってレベルじゃないんだけどな。
今までのキュアレを思い出しても、お姉ちゃんと思った時なんて一度もない。
どう考えても、手のかかる妹だ。それか気を許せる女友達と言ったところか。……うん、年上のお姉ちゃんはないな。
出会った時は、一瞬感じたと思うが。
『というか、早く帰って来てよ! お腹空いたー!!』
ほら、これだ。
こんなことを言う奴を、どうやってお姉ちゃんとかお母さんなんて思えるのか。
ちなみに、俺は久しぶりに男だけで遊んだ帰りなのだ。
先月偶然再会した慶佑の誘いで、康太も加えた三人で本屋に行ったり、ゲーセンに行ったり、飲み物片手に男同士でしか話せないような会話をしたり。
久しぶりに、慶佑の愚痴が爆発して俺も康太も苦笑した。
慶佑も高校生で、姉である優菜さんは美人な大学生。
二十歳にもなって、弟と添い寝をしようとしてきたり、抱きついてきたり。
平気で下着姿を晒したりと。
それを聞いて康太は叫んだ。
久しぶりだったが、声変わりをしていたためキーン! とくる感じはなかった。
まあ、それでもうるさいのは変わらないのだが。
童貞を卒業し、変な性癖に目覚めても、康太は変わらない。
そんな康太に対して、慶佑は童貞ではあるが、性欲はかなりのもので。
自慰は結構な頻度でやっているようだ。
ちなみに康太は、週三回程度でやっている。
遊ぶよりも会話で時間が潰れた感じだな。で、日が落ちたのに気づいた俺は、そろそろ解散しようと提案し、今に至る。
慶佑は、自転車で急いで帰宅し、康太は借りたいDVDがあったのを思い出して、レンタルビデオ屋へと向かった。
『はいはい。今帰ってるところだから。静かに待ってろ』
『大至急お願いします!』
キュアレのことをなだめていると。
「やーやー、幼馴染くん!」
「みや?」
みやに話しかけられた。
「どうしたんだ? 確か今日は、女子同士で遊んでるんじゃ」
俺達が男同士で遊ぶということで、みやも対抗しようとしたのか。女子同士で遊んでやるー! と、あおねやここねを誘ってどこかへと遊びに行ったのだ。
そうそう。白峰先輩は、家族と用事があるとかでみやの誘いを断ったとのこと。普通に白峰先輩のことを女子としてカウントするのはおかしいと思うのだが……まあ、可愛いから仕方ないか。いや、
「解散したんだよ。今、何時だと思ってるんじゃ?」
「そういえば、そうだな」
俺も日が暮れたから解散したわけだし。
何もおかしくはないか。
「で、帰っている途中で俺を見かけて話しかけてきたと」
「そのとーり!!」
「じゃあ、途中まで一緒に帰るか」
と、進もうとしたが。
「待ちなはれ!!」
みやに呼び止められる。
「実はさ、零と行きたい場所があるんだけど」
「今からか?」
……まあ、少しならいいか。
「少しだけだぞ」
「いえーい!! そんじゃ、こっちですぞ!」
嬉しそうに俺の手を掴んで引いていく。
それからしばらくみやに連れられ俺は移動した。
『……零』
『なんだよ、キュアレ』
いつになく真剣な声だ。
『そのみや。なにか違和感がある』
『違和感?』
キュアレの言葉に、俺はみやのことを見てから、周囲を見渡した。
そろそろ移動して十五分。
さっきまで街中だったのに、いつの間にか自然が目立つ場所を歩いていた。
「みや。まだつかないのか?」
「もーちょっとだよ」
こちらを向かずに返事をするみやに、俺は能力を使った。
……なんだこれ。
最初は、表みやがまた暴走したんだと思っていた。だが、能力を使ったことで理解した。
こいつは、みやじゃない。
表でも裏でもない。
明らかに、みやとは思えないほどの性行為の項目の数々と回数。
なにより、名前が違う。
一気に背筋がぞっときた俺は、ごくりと喉を鳴らす。
「零?」
俺は立ち止まる。
そして。
「悪い! 急に尿意がきた!」
「ええ!?」
「だから……な?」
と、茂みの方へと視線を送る。みや? は少し考えた後、手を離してくれた。
「しょうがないなー。ちゃちゃっと済ますんじゃぞ?」
「お、おう!」
俺は漏れそうな演技をしながら、茂みへと駆け込む。
そして、木で自分の姿を隠し、そのまま駆け抜けていく。




