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第十四話 どうしても気になって

「いやぁ、今朝はごめりんこ!」

「気にするな。どっちのみやも俺にとってはみやだからな」

「どういうことだ?」

「あ、いやなんでもない」

「ねー」

「なんだよ、気になるだろ! そういうとこだぞ! 二人だけで通じあってみたいな! 俺も混ぜろよー!!」


 その日は、結局二人のことが頭から離れないまま下校時間になった。

 あんなところを見て、気にならない方がおかしいだろうが。

 あんまり首を突っ込むと逆に二人の関係を悪化させてしまう恐れもあるしな。


「っと、俺はここで。めんどくさいが、母さんに買い物を頼まれているからな。小遣いを減らされるわけにはいかないのだ!」

「おう。頑張れよー」

「車に気を付けてねー」


 しつこく聞いてくる康太は、途中で別れた。

 その後、俺とみやは仲良くいつもの道を歩き、いつもの横断歩道へと辿り着く。

 そこで、見覚えのある人を発見する。

 

 衛藤先輩だ。

 珍しいな。いつもだったら、この辺りでは見かけないのに。

 なんだか、足取りが……なにかを考えながら歩いているように見える。


「って!」


 悪い予感が当たる。

 うつ向きながら歩いていた衛藤先輩は、信号が赤になっているのに気づかずそのまま渡って行こうとする。


「衛藤先輩!!」

「え?」


 近くに居た俺は、衛藤先輩の腕を掴み強引に後ろに引っ張る。

 その後、走り去っていく車がクラクションを鳴らし、衛藤先輩も自分が危なかったことを理解してくれた。


「ご、ごめんなさい!」

「あ、危なかったですなぁ。だめですよ? 信号赤だったんですから」

「本当にごめんなさい! 私、考え事してて……」


 周りの状況が見えないほどか。

 重症だな、これは。

 

「助けてくれてありがとうございます。えっと、同じ高校の」

「一年の明日部零です」

「同じ一年の出暮みやでーす! 以後お見知りおきを!! 実家が喫茶店をしているので、よろしければカモン! カモン!!」

「よ、よろしく。それで、明日部くんは私のこと」

「ええ、名前だけは」


 まさかこんな風に話す日が来ようとは。


「それで、どうしたんですか?」

「え?」

「周りが見えなくなるほどのお悩みがおありのようで!」


 おぉ、出会って間もない相手に対して。

 さすがみや。

 

「……少し、人間関係で」


 やっぱり木村先生関係か?

 

「お二人は」


 と、俺達のことをじっと見て一度口を閉ざす。

 

「あ、先輩。信号変わりましたよ」


 信号が変わったことを伝えると、衛藤先輩は考えたまま歩き出す。

 そして、横断歩道を渡ったところで口を開いた。


「お二人は、その……恋人関係、ですか?」

「ふふん。そう見えます?」

「見え、ます」

「残念ながら違うんですなぁ」

「そう、ですか。すみません、変なこと聞いて。……失礼します」

「およ?」


 また危うい足取りで歩き出す衛藤先輩。

 俺達は、そんな先輩を心配するように見詰める。


「なにが聞きたかっただろ?」

「さあ」


 いや、わかるような気がする。

 衛藤先輩は、俺達がもし恋人関係だったら、一般的な恋人達は何をしているのか。

 どういう風に関係を続かせているのか、とかを聞きたかったのかもしれない。けど……二人は、普通の関係とは違うからな。



・・・・



「ふむふむ。零先輩は、また厄介なことに巻き込まれているようですね」

「それって、あの黒髪の人関係ってこと?」


 遠くから望遠鏡で零の様子を見ていたあおねとここね。

 彼女達は、仕事柄か見るということが当たり前のようになっている。

 

「そうですね。あの様子ですと、なにかがあったのは確実。うーん、幸薄な文学美少女のお悩み……気になります! 零先輩も気になってるみたいだしー、協力しちゃいましょうかねー」

「あおねは、いつも楽しそうだね」

「世の中、楽しいことがたくさんあります。あたしは、そんな楽しいことを全力で楽しみたいんですよ!」

「その分、辛いこともあると思うけど」

「それは言いっこなしでー」


 世の中、楽しいことばかりではない。辛いこともたくさんある。

 あおねも、そのことは重々承知している。

 楽しいばかりでは、生きていけないと。

 

「あたしは、ハッピーでありたい! もちろん、他の人達にも!! だからこそ、あたしは動くんですよ!!」

「動くのは結構だが、あの男のために動くのはどうかと思うぞ」

「ありゃ? かむらちゃん。おっす、おっす!!」


 拳を握り締め、おりゃー! と叫ぶ中。

 いつの間にか背後に立っていたかむら。

 その表情は、いつも以上に不機嫌そうだったことに、あおねとここねは苦笑い。


「君は、どうしてそこまであの男のために動く?」

「運命に導かれて!」


 運命眼を被い、決めポーズをする。


「ふざけているのか?」


 いつも通りのあおねだとここねは思っているが、かむらはふざけていると感じ、眉をひそめる。


「ふざけてなんかいませんよ。かむらちゃんだって、知っていますよね? あたしの運命眼を」


 と、あおねは自分の左目を指差す。


「十分にな」

「だったら、零先輩が過去一でこの運命眼が疼いた相手だってことも知っているはずです。というか話しましたもんねー」

「嫌と言うほどにな。だからこそ言わせてもらう。あの男に、それほどの価値があるとは思えない」


 かむらは、あおねのことを認めているからこそ、どうしてそこまでただの高校生である零に関わるのかがわからないのだ。

 彼女も彼女なりに、零のことは調べた。

 家族構成、友人関係、性格、運動能力、成績などなど。徹底して調べた。


「確かに、厄介事に巻き込まれたり、変わった人種と関わりやすいようだが。それだけだ。彼自身は、普通の高校生となんら変わらない」

「わかってませんねぇ、かむらちゃん」

「なにがだ?」

「こういうことは、遠くから見ているだけじゃわからないものなんですよ。あたしとここねのように近くで、実際に関わることで見えてくるものがあるんです」


 あおねの言葉に、ここねも同意するかのように何度か頷く。

 

「……そこまで言うのなら、もう少し様子を見させてもらう」


 踵を返しながら言うかむら。

 

「変なことしなければいいけど」


 姿を消したかむらを見て、心配になるここね。


「かむらちゃんだって馬鹿じゃありません。たまーに、年下だって忘れちゃうぐらいしっかり者さんですから」

「そういえば年下だった」


 かむらが年下だということを思い出し、ここねは自分の胸に視線を落とす。


「何を食べたらあんなに大きくなるんだろ」

「大丈夫ですよ、ここね! あたし達はまだまだ成長期! これからバーン! と成長しますって!」

「まあ、成長したらしたで動くのに邪魔になりそうだけど」

「どっちなんですか……」

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[一言] ここねちゃん、気にしてるのか、してないのか
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