第四話 今後の対策
『で、作戦ってのは?』
それは、一時限目の授業に入る前のことだった。
数学の教科書やノートを用意していたら、ここねが俺が住んでいるアパートに侵入してきたという知らせをキュアレから受けた。
まさかとは思っていたが、こんなにもすぐに。
そして、部屋にまで侵入するほど調べられる対象になるとは思わなかった。
普通に不法侵入だろ。
普通なら通報ものだが……どうしたものか。
というか、俺の住んでるところ侵入され過ぎじゃないか?
幼馴染だったり、神だったり、忍者だったり。
……幼馴染以外普通じゃありえない存在だから、更にどうすればいいのか。まあ、神のほうは今では同居してるんだが。
そんな頭を抱える問題を、とりあえずは後回しにし、俺はキュアレと今後の対策についてを話し合っている。
『簡単に言えば、攻略! つまり、彼女を惚れさせるのだよ!!』
『却下』
『えー! いい作戦だと思ったんだけどなー。恋愛の神的に』
『あ、そういえばお前恋愛の神だったな』
『え!? ちょ、ちょっとー! そんな忘れてましたみたいな言い方やめてよー! どこからどう見ても恋愛の神でしょ?』
おっと、考えていたことがつい。
それにしても、こいつはまだ自分は恋愛の神だと思えるとは。
普通に考えて、今までのキュアレを振り返っても、誰もが恋愛の神だなんて思わないだろう。
ずっと部屋に引きこもり。
ネットやゲーム、漫画、アニメを楽しみ、一切家事手伝いをせずに、サポートをする対象である俺にわがままの嵐。
しかも、出会った時から人のジャージを勝手に着て、現在までずっと過ごしている。
……どう見ても、考えても、恋愛どころか、神だということだって信じてもらえないだろう。
俺も、最近はキュアレの世話役が板についてきたなぁ、なんて思ってしまっている。
『……あ、うん』
『あの、さっきの間は』
「よーし。お前ら、席につけ。授業を始めるぞ」
おっと、先生が来てしまった。
『じゃあ、俺は学生として授業に集中するから。お前は、大人しくしてろよ』
『待って! せめて、零が私のことを神だって思っているかどうかを!』
『大丈夫だ。俺はお前のことを神様だって思ってる』
うん、ちゃんと神様だってことはわかってる。
『よ、よかった……』
『そうだ。実は、食後のデザートと思ってプリンを手作りしてみたんだ。後で感想を聞かせてくれ』
『わーい、プリンだー!』
これでしばらくは大人しくしているだろう。
さて、俺なりに、今後の対策を考えるとするかな。
・・・・
「ごめんね、こんなこと頼んじゃって」
「別に構いませんよ。丁度暇でしたし」
とある休日の昼時。
いつものようにキュアレの相手をしていると、珍しく白峰先輩から連絡がきた。
どうやら一緒に買い物に行ってほしいというものだった。
結構遠慮がちな文面だったが、今日はみやも康太も用事があるということで暇だったのだ。
え? キュアレ? まあ、あいつとはいつでも遊べるから呼び止める声を聞かず、白峰先輩のところへ来たのだ。
ちなみにみやは、喫茶店の手伝い。
康太は、大好きな声優達の握手会へと行っているらしい。俺も誘われたのだが、今回はパスした。
「それにしても、まさかそっちで来るとは思ってませんでしたよ」
「そ、そう?」
普通に白峰涼先輩と買い物をするとばかり思っていた。
だが、集合場所へ向かうと、そこに居たのは女装をしていた姿であるリオだった。
「それに、いつもと違って少し派手さがなくなりましたね」
俺達が知っているリオは、西洋人形が着ているようなフリルの多い洋服姿だった。
しかし、今回は一般人に紛れるかのような服。
白のパーカーに、水色の短パンに黒のタイツ。背には小さめのバッグを背負っている。
「えへへ。こういうのもいいかなって。それにあの服は可愛いけど、その……目立つから」
確かに、この世界が二次元世界だったとしてもあれほどの洋服は目立つ。
周囲を見渡しても、あれほどフリルがある服を着ている人は今のところ見当たらない。
「それに、家族がボーイッシュな女装も見てみたいって……」
白峰先輩の家族は、女性が多く、母、姉、妹と三人とも可愛い好きで、白峰先輩がこうなったのも彼女達の影響が大きいらしい。
「このキャスケットも姉さんがわざわざ買ってきたんだよね」
「へえ、それってキャスケットって言うんですか」
普通のと違い、もこっと膨らんでいる帽子。
アニメや漫画とかでは見たことがあるけど、名称までは知らなかった。
「リボンか帽子かって論争が一時間以上続いたっけなぁ……」
と、遠い目をする白峰先輩。
先輩は先輩で色々大変なんだな。
「てことは、今日は気晴らしってことですか?」
「ご、ごめんね。一人で行こうと思ったんだけど……その」
恥ずかしそうに頬をかき、白峰先輩は言う。
「友達と一緒のほうがいいかなって」
うーん、やはり男だとわかっていてもこれはとてつもない攻撃力だ。白峰先輩にとっては心の底から思っていることを言っているだけなんだろうけど。
「零くん以外にも誘ったんだけど、皆用事があるみたいで」
「そういうことでしたら、今日はデートってことですね」
「で、デート!?」
「ははは。冗談ですよ」
「び、びっくりさせないでよ! 零くん!!」
『やっぱりそういうことなの?』
『違う』
決して、俺はそういう趣味はない。
「で、買い物をするのはいいんですが。ひとついいですか?」
「なに?」
これだけは言っておきたかった。
「なんで女装を?」
「……えっと」
空気が壊すようであれだが、どうしても聞きたかった。
別に気晴らしで買い物に行くのなら、女装をしなくてもよかったのではと。
そんな俺の問いかけに、白峰先輩はしばらくの沈黙の後。
「こ、この格好で歩いてみたかったから」
「……先輩って意外と大胆ですよね」
「うぅ……」
改めて自分の意外な大胆さを感じ、白峰先輩はしばらく顔を赤くしたままだった。
正直、女装の範囲ってどれくらいなんでしょうね。
女の子に見えれば、もう女装ってことでいいですよね?




