第十六話 勘違いは続く
なんとかあおねの行動を止めるべく、俺は必死に説明をした。
ここでみやが参加したら更に状況が悪化する。
「ーーーて、ことなんだよ」
「なるほどー。では、パイセンは儚げ美少女ちゃんを人気のない路地に連れ込んで、無理矢理エッチなことをしようとしていたわけじゃないんですね?」
「そういうことだ」
なんとか理解してくれたようで、スマホを下げるあおね。
が、その後に。
「まあ、なんとなくわかっていましたけど」
「おい」
どうやら、俺はからかわれていたようだ。
みやもそうだが、名演技過ぎるだろ、最近の女子はどうなってるんだ?
「零先輩って、クールキャラじゃないですか? だから、ちょーっと慌てる姿が見たくて」
「俺は、別にクールじゃないぞ」
「うっそだー。だって、あたしやみや先輩と一緒に居ても、顔色一つ変えずじゃないですかー」
「それは、あれだ。お前達を信頼しているからだ」
「おー、なんて心地いいお言葉。まあ、そういうことにしておきます。それで、さっきからぽつんっと放置気味のかわいこちゃん」
一通りの会話を終えたところで、あおねは俺の後ろに居るかわいこちゃんというなの女装男子へと視線を移す。
「は、はい」
ずっと俺達の会話が終わるのを待っていたため、その間、呼吸の乱れもだいぶ収まっている。
「いやぁ、本当に可愛いですね! お名前は、なんと言うのでしょうか? あたしは朱羽あおねと言います!」
「ぼ、僕は」
と、そこで口を紡ぐ。
おそらく、一人称がやばいと思ったのだろう。しかし、もう遅い。
「僕!? おー! 僕っ子ですか! これは貴重ですよ!」
まあ、あおねだな。
彼女にとっては、これはいい属性だ! と思っているのだろう。
「……僕は、りょ」
また口を紡ぐ。
「リオです」
が、すぐ偽名を作り発言した。発音的に、ギリギリだったな。
「リオちゃんですね。それで、本当に先輩にはなにもされていないんですか?」
「おい」
わかっているうえで、まだ言うか。
「な、なにも変なことはされてません。普通に、助けて頂いただけなので」
微笑みながら喋るその姿は、マジで男子とは思えないほどの可憐さだ。なんか、一瞬キラキラなエフェクトが見えたような。
「くっ! 眩しい……! 凄い輝き具合ですよ! パイセン!!」
どうやら、あおねにも見えてしまったようだ。
当の本人は、どうしたんだろう? と首をかしげているが。俺達がおかしいのか?
「これは、ナンパされてもおかしくないですね。しかし、ここまでの可憐な少女と今まで出会わなかったなんて……」
普段は男子として生活しているようだからな。
さすがのあおねでも、見逃していたのだろう。
「しかし! これも何かの縁! 運命眼も疼いているので、間違いありません!」
「運命眼?」
「気にするな。ただの中二病だ」
「は、はあ」
「そんなわけで、これからも交流をしたいと思っているのですが」
さて、どうする?
連絡先を交換すると言うことは、正体がばらすということだ。
偽名のリオということもすぐ嘘だとなる。
この後の行動は当然。
「す、すみません。今、携帯を持っていないので」
そうなるよな。
「なら、あたしの連絡先を紙に書いて教えますね」
あおねは、本当に積極的だ。
「あおね。少し落ち着け。さすがに、強引過ぎないか?」
「……確かに、そうですね。最近は、いつも以上に楽しいことが起こるのでテンションがおかしくなっていました。すみません、リオさん」
「い、いえそんな」
「さて……リオ。まだあいつらが、近くに居るかもしれない。そっちが良ければ、一緒に行動しないか?」
さすがに、さっき会ったばかりの子? を、そこまでしつこく追いかけるようなことをするわけがないと思うが、念のためだ。
「そういうことでしたら、あたしもご一緒しますよ」
「い、良いんですか?」
「放っておけないからな」
ここまで関わったからには、もうなにも言うまい。
ここで、はいさよならなんてやったら、食事中も気になってしまうこと間違いない。
「ヤダ、パイセンイケメン」
「あ、うん。ありがとう」
『パイセンイケメン』
『……』
『無視しないでー!』
なにやら幻聴が聞こえるが、気のせいだろう。
「じゃあ、途中まで俺達がボディーガードをするってことで」
「ついに、あたしの格闘技が火を吹くときがきたようですね」
「お前、格闘技なんてやってたのか?」
「なんでもできちゃう美少女を目指してますので!」
その場でしゅぱしゅぱとシャドーをする。
うん、本当なのかどうかわからない。
鋭いジャブっぽくは見えるのだが、あおねはテンションのまま、フィーリングでやることが多いからな……。
「それじゃ……よ、よろしくお願いします!」
「姫はあたし達が守る!」
本当は姫じゃないんだけどな。
見た目は完全に姫っぽく見えるから、そう言われても違和感がない。
「じゃあ、行きますか」
そんなこんなで、路地でのやりとりを終え、俺達は移動を開始した。
「なっ!?」
「ん?」
そして、タイミングよく今度は康太と遭遇してしまった。
「おや? この人はあの時の」
「お友達、ですか?」
「な、ななな、な……」
わなわなと、体を震わせかなり引き吊った表情で、俺達を指差す。
あ、これは。
「なんだその美少女達は!! そして、路地で何をしていたぁ!!! 羨ましいぞぉ!! この野郎!!! 二人同時とか、レベルの高いことをぉ!!!」
本当に、運命操作とかされてないのか? これ。
次回辺りから主人公以外の視点も取り入れようかと思ってます。
ちなみに三人称の予定。




