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第三十一話 小さい組

なんとか回復しました。

 その日、俺はあおねに呼び出され、ハンバーガーショップへと訪れていた。

 なにやら重要な要件があるとかで、俺一人で来るようにと。

 東栄祭も近いということで、今は準備で大忙しだ。

 

 学校も大分その色に染まってきており、今か今かとわくわくしながら生徒達は毎日遅くまで残っている。

 俺もそのうちの一人だ。

 俺達のクラスはコスプレ喫茶。

 コスプレはまあよしとして、今はメニューの試案で頭を悩ませている。


 本格的! とまではいかないものの、やはりやるからには来てくれたお客さんに喜んでもらいたい。

 俺もみやのところで手伝いをしているうちに、自然と客の顔を思い浮かべながら料理とかを作るようになっている。

 

『つまり、毎日私のことを考えて料理を作ってくれているということだね。やーん! 困っちゃうー!!』

 

 このジャージ神は、また人の思考を勝手に。


『まあ正直、お前が同居するようになってからは料理を作るのも苦にはならなくなったな。その点に関しては感謝してる』


 一人だとどうも楽な方向に考えてしまう。

 なまじ料理を仕込まれたから、ついつい今日は何を作ろうか? あ、でもカップ麺があったからそれでいいかな……なんて考えになる。

 

『うむ! 感謝したまえ!!』


 とはいえ、楽をしたい時は楽をする。

 今日も昨日作ったカレーをキュアレの昼にしたし、夕飯もカレーだな。


『二日、三日のカレーは美味しいよねぇ。四日、五日とかどうなるんだろ?』

『さあな。食べたことがないからわからん』

『あ、そういえば粉チーズ切れたから買ってきて。ついでに食後のアイスも』

『はいはい。アイスは適当でいいのか?』

『まかせるー』


 こんな脳内会話も慣れたものだ。

 スマホいらずというのは楽。

 まあ、勝手に人の思考を読んだり、視界をジャックされるのはどうにも慣れないが。こっちから遮断できないものか。


『無理』


 どうやら無理のようだ。

 

「あ、おーい! パイセンこっちこっち!」


 キュアレと日常会話をしているうちに目的地に到着。

 店に入るとすぐソファー席からあおねが呼びかける。

 とりあえず、コーラのMを注文する。

 それを受け取り、あおね達が待つ席へと向かった。


「ちびっこ達が集まって何をしているんだ?」


 ソファー席に座っていたのは、あおね、ここね、エルさん、それと楓だった。

 四人で仲良くポテトを突きながら、俺と迎える。

 

「零さんはこっちです」


 エルさんと一緒に座っていた楓は、エルさんの肩に密着するぐらい詰めて俺の場所を開ける。

 体が小さい分とはいえ、少しギリギリか。

 

「あ、それとも膝に乗りましょうか?」


 と、腰を下ろした俺の太ももをいやらしく触ってくる。


「やらんでいい」

「いてっ。あー、虐待ですよそれ」


 軽く頭をチョップしてやると、全然痛いはずがないのに頭を両手で抑え、痛がるふりをする。

 確かに、外面だけなら小さな女の子に暴力を振るっているように見えるだろう。

 やはり外見って大事だな……はあ。


「さて、最近よく見るお二人のやり取りも見たところで、さっそく本題です」


 いつにもまして真面目な雰囲気で喋り出すあおね。

 テーブルに両肘をつき、口元を手で覆い隠す。

 まるでどこかの司令官のように。

 

「かむらの誕生日を祝う計画の相談」

「ここね……せっかく真面目な感じで語ろうと思ったのに、それはないですよ」


 マイペースなここねは今日も正常運転である。

 さすがのあおねも、若干落ち込んでいる。

 

「まあ、そういうわけなんですよ。零先輩はかむらちゃんにもう何かをやることは言っているんですよね?」

「ああ」


 コーラを飲みながら頷く。


「実は、このメンバーでかむらちゃんを祝おうと思っていましてね」

「正直、俺は全然仲良くないけど、いいのか? あおねちゃん」


 周囲に人がいないのを確認しつつ、声を抑えて素を出す。

 

「いいんですよ。あれです。年齢も、身長も大体同じ少女達で祝う! これが重要なのです!」


 ―――私、十八歳なんだけど。


 そんな言葉が書かれた小さなプラカードが机から生えてくる。

 身長はともかく、この中だと一番年上なんだよなこの人。

 というか、まだメイド服を? 気に入っているとは言っていたが……。

 完全に目立ってるよな。


「え? メイド?」

「なんでメイドが?」


 小声だが、中学生ぐらいの男子二人がレジの方でこそこそと話しているのが聞こえる。

 

「エルさん。実年齢のことは置いておきましょう」


 いや、置いちゃだめだろ。


「見た目だけなら十二歳とか十三歳って言っても誰も疑わないから大丈夫」


 確かに、見た目だけなら十八歳なんて誰が思うだろうか。

 

「かむらちゃんは、同年代との遊びに飢えています。ツンデレさんなので、表には出しませんが」

「そういえばこの前、兄ちゃんのところで特撮映画を観ていた時、後ろのほうでなんかがたがたと騒がしかったな」

「かむらは特撮好きだからな。多分、見えないところで興奮していたんだろ」

「マジか。特撮好きとはいい趣味してるねぇ、かむらちゃん」

「まあ、特撮好きではありますが。かっこいいものが好きなんです」

「昔から、かっこいい必殺技を開発するのが趣味のひとつになってるぐらいだから」


 そういえば、そうだったな。

 最近は真面目な感じしか見ていなかったけど、まだ十三歳。あ、いや今月で十四歳になるか。

 それでもまだ遊び盛りな年齢だ。

 普段から真面目な仕事人って感じだから、誕生日の時は少女らしく楽しんでもらいたいところだ。


「すでに誕生日プレゼントは用意してあります。後は、渡すまでのレクリエーションをうまくやるだけ」


 ―――うむ。とりあえず実年齢は置いておくとして。


 あ、置いてくれた。


 ―――かむかむとはもっと仲良くなりたかったから、全力で手伝おう。


 か、かむかむって……。

 

「ありいがとうございます、エルさん!」

「私もお手伝いします。これから長いお付き合いになりそうだから、少しでも仲良くなりたいですから」


 近くの席に他の客が座ったことで素はここまで。

 楓は、エルさん同様かむらの誕生日会を楽しいものにするため手伝うことを誓った。


「ありがとうございます。あ、ちなみにかむらちゃんのお兄さんも当然のように祝うそうですので」

「……大丈夫だよな?」


 かむらの兄である霧一さんは、かむらが関わらなければ比較的常識ある人だと思っている。

 しかし、かむらが関わるとなれば……。


「大丈夫大丈夫……たぶん」


 ……不安だ。

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