第二十八話 祭へ向けて
「えー、というわけで! 熱き話し合いの結果! 我々のクラスでは喫茶店をやることと決定致した!!」
クラス委員長であるみやは高らかに叫ぶ。
刹那。
男達は歓喜する。
それもそのはずだ。
お化け屋敷だろうと誰もが思っていたところ、希望通り喫茶店となったのだから。
しかもただの喫茶店ではない。
コスプレ喫茶。
うん。つまり店員達が何かしらのコスプレをするのだ。
正直ただの喫茶店でよかったんじゃないかという意見もあったが、それでは面白くもないとみやを筆頭に意見が飛び交う。
それによりなんだかんだでそういうのもいいか? ということになっていき……こうして俺達のクラスの出し物はコスプレ喫茶となったのだ。
「では、さっそくではあるが。皆の衆! どんなコスプレをしたいですかな!」
さすがみやだ。
出し物が決まっても油断はしない。
次なる話し合いへと移行した。
「やっぱりメイドだろ?」
「それは男子の願望でしょ? 私は男装とかしてみたいなぁ」
「だったら着ぐるみとかどうよ?」
「それだと仕事し難くない?」
コスプレか……そういえば前に皆でコスプレ専門店に行ったっけ。
……白峰先輩から何着か衣装借りられるかな。
コスプレ喫茶とは決まったが、お化け屋敷よりも難しいかもしれない。
メニューの試案。
コスプレ衣装の準備。
テーブルや椅子の設置。
他にも食器や食材の準備などなど。
お化け屋敷のほうがいくらか単純な作業が多いから楽だったかもな。
「ちなみに私は自前のメイド服を着ますぞ!!」
皆がどんなコスプレをするか話し合っている中、みやは恥ずかしげもなく宣言する。
それを聞いた男子、いや女子もおお!! と歓喜の声を上げる。
そういえば自前のメイド服持ってたな。
そもそもみやは意外と衣装を持っている。なにかの行事やイベントがあると自前のコスプレ衣装を身に纏い接客をしているのだ。
「なんだったら明日、私のコスプレ衣装を何着か持ってきて試着会を開こうではないか!」
「それだと女子だけの試着会にならない?」
それでいいではないか! と男子達は湧く。
「安心するのじゃ。実は男子の衣装も何着かあるのじゃよ」
「なんで!?」
「みやって男装もするの? お店で」
ん? そんなことはないと思うが。
「零の分だぜ!」
「なんでだよ!?」
サムズアップしながら言うみやに俺は思わず立ち上がりながら叫ぶ。
なんで俺のコスプレ衣装なんてあるんだよ。
一度も着た事ないぞ。
「あれだよ。女物ばかり作ってると、なんか男物も作ってみたいなぁって感じになっちゃうの。そこで我が幼馴染の体系に合わせた衣装を作ったのだよ」
「ちなみに何着作ったんだ?」
「六着ぐらい?」
結構作ってるな、おい。
「とはいっても、元々あった服を改造してるだけなのだよ。一から作るとなると色々と大変だからねぇ」
普通に改造するだけでも凄いと思うんだが。
「相変わらず仲がいいわね二人とも」
「さっさとくっついて爆発してくれないか?」
「まったくだな。とりあえず嫉妬の炎に抱かれてくれ」
女子からは見慣れた光景とばかりに生暖かい目を向けられ、男子からは突き刺さるような嫉妬の視線を感じる。
「ともかく! だよ。ちゃんと許可をとってもしオッケーだったら家から衣装を持ってきます! あ、零。その時はヘルプ。助けておくれ」
「……ああ、わかったよ」
・・・・
「へえ、コスプレ喫茶か。結構めんどくさそうなことをやるんだな、兄ちゃん達は」
「委員長が委員長だからな。うまく皆をまとめて、楽しいことをやろうと話し合った結果だ。確かにめんどくさそうだが、やるからにはやる。それだけだ」
文化祭の出し物が決定したその日の放課後。
相変わらず、俺のところに遊びに来るのが当たり前かのようになっているおっさんと、キュアレ、かむらと共にこたつでだらだらしていた。
「文化祭か。当日は、一般人も入れるようだが、油断はするな」
「ん? それって【欲魔】が現れるかもしれないってことか?」
「それもあるが、祭は抑えていたものを開放する。羽目を外し過ぎるなということだ」
「かむらちゃん。祭で羽目を外すなって言うのは、無茶な話だぜ?」
おっさんの言うことは間違ってはいないが、かむらの言うことも理解はできる。
祭だからってあまり羽目を外し過ぎると色々と問題が起きる。
そういうニュースは結構あるからな。
楽しむのは良いが、他人に迷惑をかけるようではいけない。かむらはそう言いたいのだろう。
本当、十三歳とは思えないな。
「あ、そういえば」
「どうした?」
俺はあることを思い出した。
「かむらって今月だよな、誕生日」
「へ? あ、えっと……なぜ君が自分の誕生日を知ってるんだ」
不意を突かれたかのように、若干上ずった声になるかむら。だが、すぐいつもの冷静な感じになり問いかけてくる。
そんな問いに答えようとするが。
「いや、言わなくてもわかってる。どうせ、あおねかここねあたりだろう」
まさにである。
実は、文化祭の一般公開日はかむらの誕生日なのだ。なんという偶然。なんという運命! とあおねが震えながら教えてくれたんだ。
「へえ、凄い偶然もあるもんだな」
「どうせあおねはこれは運命です、とかなんとか言っていたのだろう」
「さすがだな。というわけで、文化祭の時は、あおね達が何かやるようだから覚悟しておけよ」
「……そういうことを言っていいのか?」
「良いんだよ。あおね達も隠すつもりはないようだからな」
そうか……と、かむらは読んでいた漫画に視線を落とす。
「んじゃま、俺も当然行くからな。ちゃんとサービスしてくれよ?」
「おっさんは大人しくしてろ。こっちは出し物で忙しくなるから今みたいに構ってやれない」
「心配するなって。素を出すのは、お前達と一緒にいる時だけだ。文化祭の時は、白峰楓としてそれとなく楽しむって。くう! こたつに入りながらのアイスってのも良いもんだな!」
「だよねぇ。温まった体にこう冷えたものを入れる感覚……うーん、おいち」
本当に大人しくしてくれるんだろうな……。
最近は、それだけが気になってしょうがない。




