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第十一話 早朝の遭遇

「ごちそうさん」

「うむ。よくぞ、食べた。余り物を挟んだだけだけど、どうだった?」

「そうだな……ハムカツサンドがどっしりと胃にきてよかった。喫茶店のやつには、マスタードが入っていなかったけど、今日のは入ってたよな?」

「眠気覚ましにぴりっとくるやつをと思って。本当は豆板醤を塗ろうかと思ったんですがね」


 と、豆板醤って……どうなんだろう。

 合いそうな気がするけど、正直進んで食べたくはないな。

 

「ふう……」


 今日の朝は冷えるから、温かいお茶が身に染みる。


「……」

「な、なんだ?」


 満足感に浸っていると、みやが俺のことをじっと見詰めているのに気づく。

 よく俺のことを見詰める時があるけど、今回はなんだ?


「べとべとする」


 と、俺の髪の毛に触る。

 しまった……キュアレのよだれをそのままにして出てきてしまっていた。

 いや、だがまだ誤魔化しようがある。

 例えば、生ゴミの処理をしたまま髪の毛に触ってしまった、とか。


「くんくん……こ、これは!?」


 今度はなんだ?

 手についたキュアレのよだれの匂いを嗅いだみやは、眼を見開き声を上げる。


「女の臭いがする!!!」


 な、なにぃ!?

 みやの発言に、俺の心臓の鼓動が激しくなる。よだれだぞ? よだれを嗅いだだけで、性別がわかるのか?

 いや、俺が知らないだけで嗅覚の凄い者には判別できる、のか?

 

「なーんて、適当に言ってみただけー。昨日、ドロドロの恋愛アニメ見てたからさー」

「なるほど。それに影響されて言ってみただけってことか」


 などと、冷静に喋る俺だが、心臓の鼓動は激しく高鳴りっぱなしだ。


「びっくりした?」

「そりゃあな。お前、昔から演技力が半端ないから、マジに聞こえるんだよ」

「にゃははー。将来は女優になれるかもね」


 みやの容姿と人柄ならば、可能性はあるだろう。

 ……あー、びっくりした。

 少し残ってた眠気も飛んでいってしまった。


「んー! こうやって早朝にまったり歩くのもいいもんですな」


 昔は、これが普通だったんだがな。

 喫茶店近くにあるアパートは、学生が一人で暮らすには家賃が高いし、広すぎる。

 探しに探した結果が、あのアパートだ。


「……」


 しばらく無言が続く中で、能力を使いみやを見る。

 最初見た時から、なにも変わっていない。

 変わっているところと言えば、手繋ぎの回数ぐらいだろうか。

 

「どったの?」


 自然とみやの唇に視線が集中する。

 

「あのさ」


 と、思いきって聞いてみようかと考えた刹那。


「あれー? パイセンじゃないですか!!」

「この声は」


 聞き覚えのある声に、俺は振り返る。

 そこには、中二病っぽいポーズをとっていたあおねが居た。


「くっくっく。運命に導かれ、我ら、再会せん!!」

「おはよう、あおね」

「あ、はい。おはようございますです。って、中二病台詞に突っ込んでくださいよー!!」


 うぇーい! と、朝からハイテンションなあおね。

 まさか、こんなところで出会うとは。

 確か、あおねの学校は逆方向だったはずだが。


「むむむ!? 謎の美少女! 誰かね、幼馴染くん!」

「ややや!? 謎の美少女! 誰ですか、先輩!」


 この二人、これが初めてだよな? なんで、打ち合わせしたかのように似たような台詞を。

 

「えっと、こっちの白いのが俺の幼馴染である出暮みやだ」

「どうも! 白い幼馴染こと出暮みやだぞ!!」


 先ほどの中二病ポーズに対抗しているのか。みやは、自己紹介をしつつ右目の横でピースサインを作る。


「で、こっちの二色が先週の日曜日に偶然知り合った自称後輩の朱羽あおねだ」

「二色な後輩こと朱羽あおねです! まさか零先輩に幼馴染が居るなんて! それもこんなとびっきりの巨乳美少女!!」

「こっちも驚きだったよ。まさか、零がこんな可愛い後輩ちゃんが居たなんて!」


 似たような性格をしているから、気が合うのだろう。

 俺だったら、少し距離を置くか、突き放すところだ。


「自己紹介もしたところで、あおね。お前、どうしてここに居るんだ? 学校は逆方向だろ?」

「日課というやつです。あたし、人間観察が趣味みたいなもので。今日は、先輩が居る町の人々の朝の様子を観察していたのですよ」


 パンパン、とファミレスでも見せたメモ帳を叩く。

 人間観察が趣味、か。

 てことは、俺も観察されているかもしれないってことか?


「あっ、もちろん先輩のこともしっかり! 観察してますよ!」

「できればしないでほしいんだが……」


 俺が言えたことじゃないんだけどな。


「ふっふっふ」

「み、みや?」


 などと言っていると、みやが突然笑い出す。


「零の観察なら、私もやっているのだよ」

「な、なんと!?」

「しかも、三年の溝はあるが、少なくとも君よりは零のことを観察している!!」

「こ、これが幼馴染の特権……!」


 この二人、本当に仲良しだなぁ。

 実は、俺が知らない間にすでに出会ってて、ここで出会う予定だったんじゃないか?

 

「ま、負けませんよ!」

「幼馴染の意地を見せつけてやる!」


 これは、どう反応したらいいのか。


「あ、みや先輩。連絡先、交換しません?」

「いいよー」


 これは、出会ってはならない二人が出会ってしまったのかもしれないな……。

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