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第九話 スケッチ

「ふんふんふ~ん」

「……」


 俺は、ベンチに座り込み青空を見上げている。

 缶コーヒーを片手に、ただただ空を見上げている。

 その隣では、楓ちゃんが楽しそうにスケッチブックへ絵を描いている。


 なぜこのようなことになったのかと言うと。

 あれは、今から一時間ほど前だったか。

 久しぶりに出暮家の手伝いをした帰り道。

 楓ちゃんを先頭に、数人の小学生と遭遇した。


 すると、楓ちゃんは丁度良いとばかりに笑顔で俺にこんなことを言ってきた。


「これから森にスケッチに行くんですけど。保護者としてついてきてくれませんか?」


 どうやら保護者としてついていくこととなっていた人が急な用事で来れなくなってしまったようだ。

 だから、当初予定していたスケッチは中断しようと思っていた矢先に俺と遭遇。

 どうしたものかと少し考えたが、小学生達のうるうるとした目にやられ、了承した。


「無理言ってすみません、零さん」


 と、さっきからスケッチに集中していた楓ちゃんが言う。

 ちなみに、俺のことを監視兼護衛をしていたここねもスケッチになぜか参加している。

 小学生に混じって、黙々とスケッチブックに何かを描いている。

 こうして見ると、小学生だって言っても疑われないかもな。


「別にいいって。丁度暇していたところだったし」


 そう言って俺はぐいっとコーヒーを飲む。


「それにしても、どうして俺を?」

「え?」


 小学生だけで森に行くのは危険だ。

 だから保護者が必要だということは理解できる。

 だが、それを高校生である俺に普通頼むだろうか。


「今日は休日だし、他にも大人は居たんじゃないか?」


 高校生よりもよほど頼りになる大人がな。


「そうですねぇ……なんとなくなんですが」


 少し考えた後、楓ちゃんは笑みを浮かべながら。


「あなたにはシンパシー、というんですかね。そういうものを感じるんです。だからこう、自然と?」


 シンパシー、か。

 もしかすると、彼女は神の力によって転生したからか、神の力が宿ってる俺に何かしらを感じているのかもしれない。

 ……とはいえ、まだ相手も完全には理解していないようだな。

 

「なんだそれ」


 と、俺は感づかれないように苦笑いをする。


「自分で言っていてちょっと変だとは思ってますけど。大事ですよ? こういうの」

「楓ちゃんは、直感タイプなのか?」

「そういう時もありますね。……ふむ」


 話終えると、楓ちゃんは何かに反応し鉛筆を走らせる。

 

「……うまいな」

「得意なので」


 スケッチブックを覗くと、描かれていたのは一緒に来ていた小学生達とここねが仲良さそうにスケッチをしている姿が、描かれている。

 さすが漫画家。

 小学生とは思えないほどの画力。


「そういえばさっきから何枚も描いていたが」

「見ます?」

「いいのか?」

「どうぞ」


 楓ちゃんは、恥ずかしげもなく俺にスケッチブックを渡してくる。

 受け取った俺は、一枚一枚丁寧に捲りながら描いていた絵を見詰める。

 どれもこれもとんでもない画力だ。

 やはり漫画家ということもあり結構そっちよりになっているが。

 まあ、この世界自体が二次元だし、そこまで違和感がない。むしろこの画風が普通なのだ。


 それにしても。


「なんか若干密着した感じの絵だな」

「そうですか?」


 どれもこれも現実のより体が密着した感じに描かれている。

 ……というか、描いているもの自体は同じだが、一枚一枚微妙にアレンジが加わってる。


「今日は風景を描きにきたんじゃないのか?」

「描いてますよ。ほら」


 確かに風景もちゃんと描かれている。手抜きなど一切見られない。

 そういえば今日は女子だけだな。

 そして、この絵……まさかとは思うが、前世で描いていた漫画って。


「楓ちゃんは、絵を描くのが好きなのか?」


 スケッチブックを返しながら俺は問いかける。


「大好きですよ。家でも時間があれば描いてます」

「だからこんなに絵がうまいんだな」

「将来的には漫画家になるのもいいかなーと思っていたりします」


 将来的にか。

 前世はかなり有名な漫画家だったようだが、こっちでは受けるんだろうか?

 

「そういえばもうひとつスケッチブックがあるんですけど。零さんもどうです?」


 予備だろうか。

 横に置いてあったスケッチブックを俺に渡してくる。

 丁度コーヒーも飲み終わったし……たまにはいいか。


「じゃあ、描き終わったら見せ合いをしましょう」

「おいおい。さっきの絵を見た後だと、恥ずかしいんだが。画力的に」

「別に笑ったりなんかしませんよ。ですから、零さんが思った通りに描いてみてください。それじゃ、スタート!」


 結局こうやってかかわることになってしまう。

 だが、これは何にでもない日常。

 これまでのようにとんでもないことにはならないだろう。

 そう思いながら、俺は思うがままに鉛筆を走らせた。


「ねえ、ここねちゃん。木に焼き鳥なんて生えてないよ?」

「絵とは自由だと思う」

「じ、自由だからってさすがにそれは」


 いったいなにを描いているんだ、ここね。

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[一言] 焼き鳥の生えた木 何それめっちゃ見たい
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