第二話 彼女の正体は
「ーーーとまあ、そんなことがあったわけだ」
俺は、白峰先輩の誕生日会でどんなことがあったのかを語り終え、三人の様子を伺う。
「ほう、それってつまり楓ちゃんは普通じゃないと」
「ああ。見た目こそ可愛い少女だが、見たものから推測するに、元男、なんだと思う」
俺の言葉に【欲魔】の擬態ってことは? とエルさんがプラカードを出す。
が、俺は首を横に振る。
「それはないと思います。【欲魔】なら【欲魔】でちゃんと表示されますからね」
実際に見ているからこそ断言できる。
俺はそのままキュアレに視線を向ける。
「キュアレ。お前はどう思う?」
「そうだねぇ……まあ、一番可能性が高いパターンとしては転生者じゃないかな」
転生者。
一度死んだ者が、別人へと転生するってやつか。ネット小説で異世界転生ものが流行って、そこから商業化に展開し、一気に浸透。
昔からあったワードだが、流行ったのはネット小説が大きな要因だと言えるだろう。
「この世界だからそこまで驚かないことだが、初めてだな転生者を見るのは」
これまで能力を使って色んな人物達を見てきたが、あんな項目は初めてだったのだ。
「まあねぇ。こっちの世界でも珍しいんじゃない? 一応転生専門の神が居るんだけど、私と同じで暇を持て余すぐーたらだからねー。男の娘好きの神も入れて、よく遊んだなー」
それは意外だ。
神様と言えば転生みたいな認識。
ま、これも異世界転生ものの影響だろう。そういう感じの神様も居るのか……というか。
「俺達の世界の神様。基本暇なんだな」
「そんなことないよー。ちゃんと働いてる神様だって居るしー」
そもそも神様の仕事というのが何なのか理解できていない。
基本的に、働いているイメージがないからだろうか。
いや、もしくは目の前のぐーたらなジャージ神を毎日見ているからだろうか。最近ではフラグ神になりつつあるが。
「なにぃ?」
テーブルと一体化してしまうんじゃないかと思うほど、だらけているキュアレを見て、俺は話にあった男の娘好きの神様と転生専門の神様とやらに会ってみたくなった。
こんなにもぐーたらなキュアレが、いったい他の神様と集まってどんなことをしているのか。
「話を戻しますが。こっちの世界で転生したか。あっちの世界から転生してきたか、どっちなんでしょうね」
あおねの言う通りだ。
もし転生者だったとしたら、パターンが二つあるのだ。
俺達が過ごしている二次元世界か、もう一つの三次元世界か。もし、三次元世界から転生してきたのなら、もしかするとあっちの世界のことを聞けるかもしれない。
まあ、記憶が残っていたらの話だけど。
「なあ、その転生専門の神様なら知ってるんじゃないか?」
「えー? まあ、知ってると思うけど」
どうにもめんどくさそうな感じだ。
だが、すぐスマホを取りだし、たたた、と親指を素早く動かす。
それからしばらくして。
「……既読しない。これは寝てるね」
「神様って基本睡眠や食事はしなくてもいいんじゃなかったか?」
今のキュアレのように人の肉体を持っているならば必要だが、神様は人間には見えない、触れない精神体のような存在。
そのため、睡眠や食事も基本しなくてもいいのだ。
「ふっ、どうして私がすぐこの世界に慣れたと思う?」
「……もしかして、普段から肉体を持って生活をしてるんですか?」
「そのとーり! だってさー、毎日毎日ずーっと起きてるだけなんてつまんないでしょ? だから、今の私のように肉体を得て生活をしている神も居るわけなのだよ」
てことは、寝ているっていうのは本当なのか。
「ま、起きたら返信してくれると思うから」
「それまで、楓ちゃんが転生者なのかわからない、か」
そういうことなら仕方ない。
ま、そもそも知ったところでどうしようってわけでもないから気長に待つとするか。
「パイセン」
「なんだ?」
とりあえず話はこれで一旦終わりだ、と言ったところであおねが俺の服の裾をくいくいと引っ張ってくる。
「今度のヒロインは楓ちゃんで決定ですね!」
と、親指を立てる。
「パターンとしては、そうだね」
それに同調するかのようにキュアレも親指を立てる。
「勝手に決めないでくれます? そもそも今度のってどういうことだよ」
「またまたー。この前のセリルさん然り、ひとつのイベントにつき一人のヒロインは必ず存在しているじゃないですか! ちなみに、あたしは、今のところサブヒロインの立ち位置ですね!」
あおねの発言に、ならば私もサブか、と書かれたプラカードを取り出すエルさん。
「じゃあ私は?」
「キュアレさんは……」
「マスコットだろ」
「それです!!」
「ひどい!? 神様をマスコット扱いするなんて!!」
抗議の声を上げながら立ち上がったキュアレは、俺達のことを見渡し、胸元へ右手を添える。
「どう見てもメインヒロインを狙える容姿なんですけど!」
「まあ、容姿だけならな」
乱れた髪の毛、素朴なジャージ姿のせいでかなり軽減しているが。普通に容姿は良いからな、キュアレは。
「そうですね。よく考えたら常に先輩と一緒に居るっていうか。同棲をしちゃってますし」
「なんだったら一緒にお風呂にも入ったし!」
「おい待て。そんな事実はない!」
自分がメインヒロインになりたいがために話を盛り始めたぞ、こいつ。
「膝枕だってしたし、耳かきだって! あっ、一緒の布団で添い寝だってしたし! というか毎日のように一緒にご飯食べてるし! 寝てるし!!」
それは……事実だから、なんとも言い返せない。
だが、一緒に風呂に入ったというやつは絶対にない。
……ない、よな?
「私は、メインを張れるヒロインなのだー!!!」
「おお!!」
あれ? いったいなんの話をしていたんだっけ?




