第二十四話 今後の付き合い
一度は言ってみたい。
そんな台詞を叫んだ俺は、黒いオーラを纏ったみやが突撃してきた。
あ、これ死んだかも、と思った時にはもう遅い。
あばらが砕けるか、最悪死んでしまう。
そう思ったのだが。
「え?」
みやを抱き締めた刹那。
俺の体が白い光が溢れ出す。
完全に視界を奪われ、次に目を開けると……みやの黒いオーラは消えており、俺の体もなんともないまま尻餅をついていた。
「零くん、零くん、零く~ん!」
俺に抱きついているみやは、殺気がすっかりなくなり、甘えた声で顔を埋めていた。
「先輩! だ、大丈夫ですか?」
「どこかお怪我は」
状況を理解できていない俺のところに、あおねとセリルさんが心配した様子近づいてくる。
「あ、ああ。なんともない、みたいだ」
「それにしても、何だったんでしょう? さっきの光。おそらくあの光のおかげで、先輩は助かったんでしょうけど」
それにしても、こうして見ると本当にボロボロだなあおね。
ツインテールも赤髪の方だけ解かれていて、服のあちこちに焼け焦げたような痕。
いったいどんなおもてなしをされていたんだ……。
「あの光は、まさしく浄化の光。あの光で、みやさんの闇を浄化したのでしょう」
「なるほど。実際に見るのは初めてですが、あんなに殺気立っていたみや先輩をこうもあっさり……まあ、先輩だからこそでしょうけど」
そういえば【欲魔】に襲われた時も……光は出なかったけど、感覚としてはあの時と同じような気がする。
『うむ。それは徐々に体が馴染んできた証拠だね』
『それって、俺も普通じゃなくなっているってことか?』
『いんや。そもそも零は、主人公だから、最初から特別なのだよ』
キュアレと出会うまで、特別凄いところなんてなかったと思うんだが。
「そういえば、あおね。他の皆は?」
と、俺は今もなお甘えてくるみやの頭を撫でながらあおねに問いかける。
セリルさんの話だと、あおねはここねとかむらの二人と一緒だったようだ。
「ここねちゃんとかむらちゃんは、あたしを先に行かせるために殿を。くっ! 二人の犠牲は無駄にはしまいと、急いで来たのですが……」
「おい、勝手に人を死んだかのように言うな」
「まったくもって。そもそも、あおねが先に行ったのはじゃんけんで勝ったからなんだから」
ぐっと拳を握り締め、あおねが涙を流していると二人が姿を現す。
あおねと同じくぐらいボロボロだった。
その後ろには、さすがに苦戦した、と書かれたプラカードを持ったメイド服姿のエルさんも居た。
「で? なんで君はそんなにボロボロなんだ?」
ん? どういうことだ。
「一度も攻撃が当たってないのに」
「えへへ。こっちの方があたし先輩のために必死になって来ましたよ! って感じが出ていいかなーと」
「雰囲気のためにわざと、ということか」
「まあ、途中まで無傷のまま登場して、あたしは先輩を護りし最強忍者! て感じでいこうか。迷ってたんですが」
随分と余裕だな、この子。
「やん、そんな熱い視線を向けられたら困っちゃいますよー!」
「雰囲気は確かに大事だが、普通に助けに来てくれませんかね?」
「いえっさー! 次からは、そうします!!」
不安だ。
「まさか、エルから無傷で逃げるだなんて……」
「まあ、こんなふざけた奴だが、実力は本物だからな」
「いえい!」
「本気を見たことはないけど」
「くっくっく。あたしが本気を出したら、マジやばいですよ?」
本当にやばいのか、まったくわからない。
でも、あおねのことをよく知っている二人がこうまで言うんだから、本当なんだろうが。
これまでのあおねを考えると、まったく想像できない。
「よいしょっと」
みやが張り付いたまま、俺は立ち上がる。
まるで親に張り付く子供コアラのように離れないみや。
裏になれば離れてくれそうだけど……これはしばらく切り替わりそうにないな。
「ぴったりですね」
「引き剥がすか?」
「いや、とりあえずはこのままでいい」
落ち着いたら、自分から離れてくれるだろうからな。
「それで? 私達と零を無理やり引き剥がして、なにをしていたの?」
事情を知らないここねは、俺の前に立ち、セリルさんを睨む。
「ご安心ください。なにもやましいことはしておりませんので。ただ純粋に、零様と仲良くなりたかっただけ。少々強引な手段になりましたが、こうでもしないと二人きりになれませんので」
「ほう。それで? その男と仲良くなれたのか?」
乱れた髪の毛を直しながら、かむらはジト目でセリルさんに問いかける。
「ええ。とてもとても……より零様に魅了されて、きゅんきゅんしてしまいました……」
と、セリルさんは恋する乙女かのように頬を赤く染め、俺のことをチラチラと見てくる。
「きゅんきゅん……」
「なにをしたんだ? 君は」
これまでのセリルさんの様子とはまったく違うことを感じた三人は、一斉に俺のことを見る。
「いや、俺は普通に会話をしただけ、なんだけど」
「ですが、あの様子。とても会話をしただけじゃ、ありえませんよ。はっ!? まさか先輩には女性をチャーム状態にする力が!?」
「ないって」
『いや、もしかしたら無自覚に発動しているってことも!』
そんな馬鹿な……。
「ん? おお、ここか」
「なんか、扉壊れてない?」
そうこうしていると、みやと一緒に居たはずの康太と白峰先輩が、壊れた扉に驚きつつ、部屋に入ってきた。
「どうやら全員集合したみたいだな」
「くー! 俺の胸に飛び込んでこい! 男だったよ、零!!」
そして、続くように別室に居た両親がなんだか興奮した様子で姿を現した。
「ふふ。では、そろそろお昼ですので。皆さんで、お食事でも。腕によりをかけて作りますから」
「お? セリルさんの手料理か! それは楽しみだ!」
「途中でお菓子とか食べたけど、それからいっぱい動いたもんね」
一時はどうなることかと思ったが、結果的になんとかなった。
セリルさんとも、いい感じに仲良くなれたし、もうあの時のような暴走はないだろう。
今回のことで、セリルさんは意外と優しくされることに慣れていないって知れた。変態チックな印象が強かったから、ギャップで年上なのに照れている姿を可愛いと思ってしまった。
「ところで、どうしたんだ? みや。零に抱きついて」
「コアラの真似ですぞ!!」
「お、おう?」
あ、裏に切り替わった。




