051 自己紹介
「は、初めまして! 今日から3週間お世話になります。冒険者ギルド所属の薬師、スティラ・ポンポーティルです」
スティラの精一杯の挨拶に生徒一同明るい拍手に迎えられる。
特に男子生徒達から喜びの視線が送られているような気がした。
儂とスティラは2週間の短期入学のためシャルーンが学んでいるクラスにお邪魔することになった。
担任教師から自己紹介するように言われ、前に出てこんな感じに挨拶である。
「えっとせっかくなので宣伝させて頂きますね」
スティラは鞄から一つの容器を取り出す。
皆がそれに注目する。
「わたしがいるギルドの研究チームで作ったポーションスプレーです。従来のポーションよりも回復量が高く、傷を負った部分に振りかけるだけで使えるので是非とも街で見かけたら手にとってください」
「ウチのおとーさん、騎士なんだけど活用してるよ~!」
「これ作ったのスティラさんなんだ。すっげー!」
「S級薬師ってほんと凄いんだな。可愛いし無敵じゃん」
「回復術師として薬師には負けられません!」
ここのクラスは騎士など実戦系を目指す生徒が多く、戦技を学んでいるらしい。
ゆえに有名な回復薬であるポーションは当たり前に触れているものである。
塗り薬であるヒーリングサルブに対抗するように作られたポーションスプレー。
用途も効能も似ており、塗るか振りかけるの違いしかない。
選ぶのは人ぞれぞれということで結果的には飲むポーションの売り上げがさらに下がったという事実だけが残った。スティラを追放した実家は大混乱となっておるじゃろうな。
「ポーションスプレ-。儂も使ってみたが良いデキじゃった。腕を上げたな」
「えへへ、わたしはもっと成長したいです!」
非常に生き生きしている。
能力を適切に評価され、スティラはもっと伸びていくじゃろう。
あの時に救えて本当に良かったと思う。
「じゃあ次はクロスくん、自己紹介してもらえるかしら」
「うむ。儂の名はクロス・エルフィド。運び屋をやっておる。剣士才能Eランクゆえに諸君から学ばせて頂こうと思っている。宜しく頼みたい」
ざわざわと生徒達が騒ぎ始めた。
「Eランクって最低ランクじゃねぇかよ」
「なんでそんな奴がこの学校に来れるんだ?」
「でもシャルーン様が推薦されたって話だし……」
さすが王立学園。表立って馬鹿にしてくるものはおらんようだ。
シャルーンが推薦してきたのも大きいか。
Eランクであることを言う必要は無かったかもしれんが隣のSランクと同じと思われては不都合があるかもしれんしな。
儂らを推薦した女は後ろの方の席でニコニコしていた。
予め用意してもらった席に座り、前世では縁の無かった学校の授業というものを体験する。やはり学んでこなかった教科については新たな発見が多くて楽しかった。
しかし、真面目に聞いてる生徒もいれば居眠りしている生徒もいる。
15歳程度ではやむを得ないか。
学問ってやつは大人になってからあの時もっと学んでおけば良かったと後悔するものである。
授業の合間の休み時間。
「クロスってノートを綺麗にまとめられるんだね。意外かも」
「記録ってのは読み返すことを前提にしておるからな。そこはこだわらねばならんよ」
「あはは、耳が痛いなぁ」
ジュリオが儂の席の側に寄る。
性別を偽って男子として振る舞っているがやはり顔の造形や体格が他の男子とは違うな。
本人は気づいておらんし、まだ許容範囲内だがさらに年を重ねて体つきに丸みを帯びたら隠すのは難しいかもしれんな。
それより……。
「ジュリオ、おぬし良い匂いがするな」
「へっ! な、何を言ってるの」
驚いた様子を見せる。何というか仕草も含めて勘違いされそうな振る舞いだ。
無意識かもしれんし、言っておいた方がよさそうだ。
「やはりおぬしは可愛いと思うぞ」
ジュリオの顔がかぁっと赤くなっていく。
うむ、男として振る舞っているのにそれだけ可愛いのはまずかろう。
時代錯誤かもしれんが男らしさというやつを学ばせるべきか。
「ちょっと、男同士で何をやっているのかしら」
少しだけご立腹のシャルーンとスティラも一緒にやってくる。





