034 王国の闇②
「侵入者?」
この場所は幹部とエージェントしか入ることはできない。
そのため配下の者からの連絡は天女帝より配られている通話宝珠を使わなければならない。
遠くからでも言葉を送ることができる通話宝珠。この世ではまだ広まっているものではなく結社のみが運用している特殊な技術だ。
結社が非常に恐ろしい組織なのは強力な技術を持っているからに他ならない。
どうやら王都にある結社の秘密基地に侵入者が入ってきたようだ。
「王国騎士団か冒険者ギルドかどちらにしろ動きが思ったより早いようだ。まぁ私の予測内だがね」
「だけど奥まで入られたら面倒だろ。実験に使う導力器具もあるし」
ミドオルズの言葉にグロイツェルは一理あると頷く。
「紅蓮の剣聖姫がいるかもしれないな」
エーベの声に全員が反応する。
「王国の希望、シャルーン・フェルステッドか」
グロイツェルは通話宝珠を操作して、目の前にモニターを映し出す。
そこにはシャルーンの全体像が映し出されていた。
「エーベ、アリューシュ。君達はクリムゾンドラゴンを単独で倒せるのかな?」
二人のエージェントはふっと笑った。
「当然だ」
「多少苦戦はするだろうがな」
「ただ」
エーベは続ける。
「15才での討伐は不可能だ」
「……」
アリューシュもその言葉を否定できなかった。
シャルーンはクリムゾンドラゴンを15才で討伐したと思われている。
エーベもアリューシュも現在は達人クラスの実力だが成人したての15才はそうではなかった。
今、現在その実力を持つシャルーンがさらに成長したらどうなるか。二人の達人は想像できずにいた。
「今であれば制圧もできるが、時が経てば分からないというわけかな。今の間に始末しておいた方が良いのかもしれないね」
「ハッ! 才能があるっていっても所詮は姫だろ。殺しの場で全力が出せるかよ」
グロイツェルの言葉にアリューシュは吐き捨てる。
魔獣戦と対人戦はまた違う。
アリューシュは他のメンバーに背を向けた。
「騎士共は俺が味見してやる。まぁ【赤の骸】相手じゃ……王国騎士も大半が終わりかもしれねーが」
結社は猟兵団【赤の骸】と契約をしている。
アジトは猟兵に守られており、大軍で攻めたとしてもほとんど残らないだろう。
【赤の骸】は練度が高く、一人一人が非常に強い。
「団長【赤の破虎】エドウェルはエージェントに匹敵する実力を持っているからね。アリューシュが手を出す頃にはシャルーン王女も瀕死になっているかもしれない」
「なら逃がさないようトラップを仕掛けておきたいね。捕まえたらあたしに王女をくれないかい。あの綺麗なツラを発狂させてやりたい」
ミドオルズは笑い、趣味が悪いとアリューシュは吐き捨てる。
侵入者達との対応が終わればいよいよ王国異界化計画が始まる。
グロイツェルは笑った。
「ふはははは。最終計画の準備運動をしようじゃないか。さぁ……王国よ。震えるがいい」
「あ、あの……」
言いずらそうに通話宝珠より結社の構成員が呟く。
「じ、実は侵入者は王国騎士でも冒険者でもなく……」
それは耳を疑ってしまうような言葉だった。
「運び屋を名乗る……たった一人の子供なんです」
「は?」
全員の口から変な声が出た。
◇◇◇
半日時が進み舞台は再び王の会議へと戻る。
「結社【サザンクロス】は4人の幹部と実行部隊隊長のエージェント。さらに多数の構成員が実験にかり出されているようです」
騎士団長は話を続ける。
「フェーエスト地方では【毒薔薇】ミドオルズの実験を阻止しようとして王国騎士300人が壊滅。ムーカイラ地方では【剣帝】エーベにより冒険者50名、王国騎士200名が壊滅。そしてハスクベルウ地方では【剛拳武人】アリューシュにより王国騎士が500名が壊滅しています」
「結社のエージェントは恐ろしい実力を誇るんですね」
シャルーンはその被害状況を聞き、ごくりと唾を飲む。
「単体で対抗出来る者はおそらくシャルーン様くらいだと思います。ですが奴らは対人戦に極めて特化した力をを持っており……シャルーン様が相手でもただではすまないかもしれません」
それほどの実力者を多数所属させている結社の恐ろしさを皆が実感していた。
「報告では【剛拳武人】アリューシュが王都に入ったという情報が入っています。王都で何か実験をするのかもしれません」
「全員警戒態勢に当たれ、何としても奴らの実験を防ぐのだ!」
「はっ!」
王の命令に全員が敬礼をする。
「エージェントが三人いるということは幹部もいるんじゃないか」
王の言葉に騎士団長が苦い顔をする。
「ミドオルズと対峙し、生き残った兵からの情報ですが【異界人】グロイツェルだと聞いています」
この場にシャルーンを除く全員に戦慄が走った。
「グロイツェルとはどういう人物なのですか?」
「最低最悪の男ですよ。気まぐれでいくつもの村を滅ぼし、二国の感情を煽って戦争を引き起こしたと言われています。本人も禁忌の魔法を使って異空間から悪魔を召喚すると言われています」
「そんな人物がいるのですか……」
「間違っても一人で対面してはなりません。心を利用され、悪魔に作り替えられると噂をされるほどです」
そんな人物が王国に来ていることに場は静まってしまう。
下手をすれば王国の国民が実験の被害者となってしまう。
王や幹部達には緊張な対応が求められた。
「会議中ではありますが申し上げますっ!」
突然、一兵士が会議中の部屋に入ってきた。
「何用だっ!」
「……報告にあった。結社、サザンクロスの幹部【異界人】グロイツェルが!」
「現れたのか!」
王の大声に一兵士は強く頷いた。
まさかこんなに早くと……恐れは現実となる。
一兵士はさらに言葉を繋げた。
「ですが……その、見て頂ければ」
歯切れの悪い言い方をする一兵士達に連れられて、王を含む幹部達は王城の前まで歩いて行く。
そこで見た光景に全員が言葉を失った。
「……あへ……あぐぅ……」
「今朝、【異界人】グロイツェル、【毒薔薇】ミドオルズ、【剣帝】エーベ、【剛拳武人】アリューシュの4名がボコボコにされた状態で縛られ、放置されていたのです」
顔がはれ上がり、白目をむいたグロイツェルの顔を見て、王達は何も言葉を発することができなかった。
この4人の相手だけで王国の兵士千人以上が被害を受けただけに……混乱極める状態だ。
「と、とりあえずひっ捕らえよ! 牢屋に縛り付け、厳重に警戒するんだ」
「は、は!」
兵士達は結社の幹部、エージェント達を運び出していったのだった。
「誰がこのようなことを……いったい」
王の言葉をよそにシャルーンは口元に手を当て、考える。
「こんなことができる人は……一人しかいないけど。まさかね……」
次からその空白の半日のエピソードが語られることになる。
フラグクラッシュその② 秘密組織の壮大な計画のフラグをぶった切る。
今までの数々のRPGをプレイしてきましたが、敵組織が行う実験系イベントを防げた試しがないので、事前に壊滅させて防いだらどんな反応になるか書いてみました。
モデルは作者の好きな作品のあの組織です。プレイしたことある人はああ……ってなるかもしれません。





