032 王国の闇①
フィラフィス王国とはその名の通り、王による統治国家である。
当代の王、フェルステッド王は賢王と呼ばれており、フィラフィス王国は周辺国の中でも強国という位置づけとなっている。
特に王都の先進性は目を見張るものがあり、周辺国からも高い評価を受けている。
しかし地方はそうでもなく、王都との格差が指摘されており、将来的にどうなっていくかこの国の課題と言えよう。
経済としては安定しており、人々から笑顔が見られている。
王族や貴族といった上位層と平民との仲は悪くはなく、現在活躍中の第二王女、シャルーンはその美貌と騎士としてのカリスマ性から絶大な人気を誇っていた。
しかしそんな安定したフィラフィス王国にも抱える闇は多い。
今日もまた王は閣議を開き、大臣、宰相、騎士団長、有力貴族を招いて……対策に追われる。
「現状の問題点をおさらいしておこうか」
賢王フェルステッドの声に有力者が頷く。
ざっとまとめられた書類を手に取った。
「人類全ての敵と言えば……まず魔族か」
人族と長年敵対をしている魔界の住人である魔族。
性格には非常に残忍で人族の世界に紛れ込み、虎視眈々と人族の世界を奪いとることを目的としている。
「他の国では魔族の攻勢に耐えられず、国を明け渡したと聞きます」
「人類の敵ではあるが、敵の情報はあまりにも少ない。魔族が住む世界、魔界の情報があれば良いのだがな」
次に宰相が声を挙げた。
「魔族も危険ですが当面の危機は隣国のアルヴァディア帝国ですぞ。我が国にスパイが入り込んでおり、情報を集めていると聞きます」
「ああ、我が国民が拉致されることも報告に上がっている。捨て置けぬな」
敵は魔族だけではない、同種の人族も敵となることがある。
隣国のアルヴァディア帝国も先進国であり、国力は非常に高い。
現皇帝とは表面上友好関係だがいつその均衡が破られるか。
「災いは魔族や他国だけではありません」
次に声をあげたのは大臣だった。
「フィフス教を異教徒と断じる邪教の存在。そしてテロ組織である王国解放軍【エンティス】も見過ごしてはなりません」
「頭が痛い問題ではあるな」
「最近魔獣の数も増えており、我々王国騎士団や冒険者ギルドに依頼をしていますが……」
「魔獣増加は意図的なのかそれとも……」
「巨大魔獣の報告も見られます。国防に予算を頂かないと人々の生活が脅かされてしまいます」
数々の報告に賢王は頭を抱える。
王国はとにかく中や外から敵にさらされている状況だ。今の平和はかりそめのものなのかもしれない。
王国がこれほど大きくなったのは今から120年前のこと。
戦争に諸外国を打ち破り領土を広げてきた。だからこそ今、問題が起こっている。
元王国でない領土の出身の若者が独立運動を起こすために旗を挙げているのだ。
これだけの問題点。皆が静まるのも分かる。
しかし悪い話ばかりではない。
「そうなると否が応でもシャルーン殿に期待が集まりそうですな」
大臣が口を出し、テーブルの奥で静かに座っていた才女、シャルーン・フェルラ・ロギュール・フェルステッドは微笑んだ。
「そのようなことは。私はまだまだ未熟ですから」
その言葉に騎士団長は口を挟む。
「謙遜なさるな。王国でも2例しかないクリムゾンドラゴンの討伐。初めて話を聞いた時はぞっとしましたぞ。しかし……倒してしまうとはさすが紅蓮の剣聖姫。
「仰々しい二つ名だと思います」
「それほどに我々はシャルーン、そなたに期待をしているのだ」
父である王に言われ、シャルーンも納得するように頭を下げた。
「ありがとうございます。国王陛下」
この場では父娘のような会話はしない。
SS級魔獣であるクリムゾンドラゴンを討伐したシャルーンの話は王国以外にも広まっており、王国最強の名を確実とまで言われていた。
騎士団長は語る。
「ここまでの姫様は相手が恵まれないゆえに強くなる意欲が欠けていましたが、しかしここ最近は本当に素晴らしい。勉学に励み、王立学園でも多大な成果を挙げていると聞きます」
シャルーンは成人した直後まで負け知らずだったためか増長気味な所があった。
その才能のために誰も口出しはできず、もったいないと思われていたがクリムゾンドラゴンの一戦後は人が変わったように凜々しくなった。
「超えねばならぬ相手が出来ましたから。今は力を付ける時なのです」
クリムゾンドラゴン戦も楽ではなかったという話なのでその時のことを言っていると皆は思っていたが、シャルーンの願う方向は別にある。
想いを寄せる彼のため、そして彼が表舞台に立った時に支えてあげられるように立ち位置を明確にするためシャルーンは鍛錬に励んでいた。
「それに……希望の星は私だけではありませんから」
「報告にあったEランクの件ですな。Eランク判定を受けた者を再調査した所、1割に多大な才能を持つSランク判定であることが分かりました。補償と共に才能を生かせる場所への紹介をさせてもらいましたよ」
有用な若者への投資。それも重要である。
すでに冒険者ギルドの所属のスティラ・ポンポーティルが新回復薬を開発したという報告が上がっており、未来は明るい方向へ進んでいる。
「それに勇者ルージェの存在ですな」
勇者とは魔を祓うことができる加護を受けた者を言う。フィフス教の大神殿でお膝元で宣誓を受けた勇者ルージュは仲間達と共に旅立った。
シャルーンに匹敵する美貌と実力を持つ戦士だと言われており、王国内を旅する準備をしていると聞く。
シャルーンが単体の王国最強であれば、勇者パーティは複数人での戦いで王国最強となるだろう。この二つが光の矢が王国の希望と言える。
「もう一本あると思うんだけどね」
「シャルーン殿、何か言われましたか?」
「なにも」
シャルーンは彼が表舞台に出る気がないのであれば今は尊重しようと口をつぐむことにした。
そして王はギロリと鋭い目をした。
「ここまでは良い。しかし直近で被害が出ているのは結社【サザンクロス】の存在だ」
1章は秘密結社についてのお話です。
※作者からのお願いです。
「先が気になる」「面白いかも」と思って頂けてたら是非ともブックマーク登録や↓の☆☆☆☆☆から評価をお願いできればと思います。
読者様の応援がモチベーションに繋がりますので是非とも宜しくお願いします!





