029 運送屋の女社長①
こんにちは~! 私、アイリーン・ベルヘルト。29歳独身!
物心ついた頃から一人ぼっちで王都の日曜学校でもずっと一人ぼっちだったの!
15歳の成人の式で秘められた才能が明らかになるかと思ったら商人ジョブEランク認定されて馬鹿にされまくった私は見事、引きこもりになりました。きゃはっ!
はぁ……。
それから14年。
引きこもりを極めた私はどこに出しても恥ずかしいクソコミュ症ぼっち喪女となってしまったのです。
まー小さい頃にお母さんは死んじゃったけど、お父さんのスネかじっていければいいかなーって。
あ、お父さんは運送屋【ハヤブサ】の一人社長をしてるんですよね。
収入悪くないし、一応会社の経理や業務的なことしてたので貢献はしてたのですよ。
だ・け・ど。
お父さんが死んじゃいました。
「お父さぁぁぁん、なんで死んじゃうのううう! 私生きていけないよぉぉぉぉ、スネかじらせてよぉぉぉぉっ! 私と変わってぇ! 私が死ぬからぁぁぁ!」
葬儀屋の人からすげー子だなと驚き、ぼやかれるくらいには錯乱してたと思います。
まずいです。正直かなりまずいです。
今すぐ死ぬレベルではないですが寿命が尽きるまでに貯金は間違いなく尽きると思います。
別の会社に就職する? 無理無理無理。
14年引きこもりコミュ症女が就職活動なんてできるはずない。
声はまともに出ないし、挙動不審になるし、人間怖いし。定期的に発狂モードになるし。
そもそも商人Eランクの私を誰が雇うのか。人生終わりだぁ。でも死ぬ勇気はありません。
そうなると運送屋【ハヤブサ】を続けていくしかない。
正直父の代わりとなる運び屋になってくれる人が現れたら会社は建て直せる。
求人を出そう! 運び屋になってくれる人を募集するんだ。
このハヤブサはお父さんと私だけでやってきたようなものだから運び屋は最低一人いればいい。
女の子は無理! まともに就職できる女の子が私みたいなクソぼっちコミュ症女を社長だなんて思ってくれるはずがない。
最近キラキラしている成人したての十代女子とか見ると動悸と発作で発狂しかける。
私は10代後半の記憶が無いのだ。だって引きこもってたし。
そうなると男性一択だけど、20歳以上は会社を乗っ取られそうで怖い。
それに襲われたりする可能性もある。私みたいなのは誰も襲わないと思うけど、非力な私は絶対抵抗できないと思うし!
だから私が10歳以上年上なら襲われることはないだろう。なので15歳くらいを募集条件に追加した。
……そして最後に神託でDランク以上の子も排除した。
だって社長がEランクって恥ずかしいもん! 社長がEランクなんてウケるっ! なんて馬鹿にされたら死ぬ。
そんなわけで男性で15歳で才能Eランクで募集することにした。
……この募集で来るんだろうか。ちょっとレアすぎる?
やっぱり条件を緩和すべき? それとも就職すべき?
無理無理無理絶対無理!
それができるならこんな年まで引きこもってない。
「たのもーーー!」
そんな時だった。彼と出会ったのは。
事務所兼自宅の扉を開けると……幼い顔立ちながら言葉のはっきりとした少年が現れた。
「儂の名はクロス・エルフィド。御社の求人を見させてもらった。是非とも面接頂きたい!」
こんにちは、ようこそ!
「……」
「うむ?」
しまった! 父の葬式終わってから誰とも話をしてないから喉から言葉が出てこない。
変なやつが出てきたって思われたに違いない。どうしよ、どうしよ。
「安心なされ。おぬしの前にいるのはどこにでもいる柔な若造じゃ。小さな声でいいから出してみるといい」
「あ……」
穏やかな顔での言葉は私の混乱がひゅんと飛んでいくようだった。
お父さん……いえ、子供の時に亡くなってしまった優しいお祖父ちゃんが放った言葉かと思った。
もう一度ゆっくりと声を出した。
「あの……アイリーン・ベルヘルトです。ようこそ、一応ここで社長してます」
それでも声はミニマムってほどに小さかった!
「アイリーン殿じゃな。宜しく頼む!」
ちゃんと聞き取ってくれた、とても良い子だ!
そんなわけでクロスくんを家に入れることにした。
せっかく来てくれた子だ。逃がさないようにしないといけない。
下手だけど、ゆっくりと業務内容を説明した。
「ふむ、社長は業務担当で儂が実働係として物を受け取り、物を渡しに行くということか」
運送屋【ハヤブサ】は小型配送オンリーで即日配達を基本としている。
昨今、機械化により大きいものを少人数で手軽に配送できるようになったが、発送する量に配送屋が追いついていないのが現状である。
また物流倉庫に一度納めて、配送を行うため時間がかかることも問題になっている。
そのため手紙や手荷物程度であれば【ハヤブサ】のような小回りの効く配送会社が担当することで1日に4件、5件と対応することができるのだ。
結果的大手配送屋と差別化できるようになっている。
今までは父が王都中の小型輸送物を配送していたのでクロスくんにはそれをお願いする形となる。
「業務内容はあい分かった。しかし配送の受付などはどうするじゃ。アイリーン殿はその……内気なのじゃろう」
言葉を選んでくれた優しい。いい子だいしゅき!
それはいいとして、引きこもりコミュ症の私は絶対的に人と話したくないのでそのあたりの業務ツールを開発することにした。
配送の依頼先を全て一本化し、それぞれの配送屋が選んでいく。大手の事務所の受付で運び屋が担当案件を見て、客先に伺うという手はずだ。
冒険者ギルドで冒険者がクエストを選ぶみたいな感じとしたら分かりやすいだろうか。
王都の配送屋の構成上そのやり方がマッチしており、他の会社もそれを受け入れてくれた。
他にも経理関係もなるべく書類提出だけで済ませられるように王都の役所の担当者に書面で説明し、合理してもらう形とした。
全てはなるべく人と喋りたくない、外に出たくないを究極を極めた結果がこれだ。
「アイリーン殿、商人の才能Eランクとお聞きしたが」
私は頷いた。
「なるほど……。誤判定の被害者がここにもいたか」
よく分からないけど……褒めてくれてるならいいなぁ。
さっそく試用期間ということでハヤブサの制服をクロスくんに着用してもらう。
「ふむ、ぴったりのようじゃな」
幼さがまだ残っていて可愛い! 駄目だ、私は社長! ショタコンの性癖を出してはならぬ。
頭を何度も打ち付けてその煩悩を打ち消した。
「……アイリーン殿、大丈夫か」
「大丈夫。いつもの発作だから。あ、血が出てきた」
「発作と言われると不安しかないが。まぁええじゃろう。仕事内容は分かった。では行って参る!」
初めてだから1件か2件ぐらいこなせればいいかな。
私の主な仕事はクロスくんが帰ってからの経理処理なのでのんびり待つことにした。
1章始まっての新キャラとなります。
女社長のイメージはあの人気作品のぼっち系キャラです。
ギター持たずに10年以上経ったらこんな感じになのかなって思いながら書いてます。





