028 フラグの根は断つべし
騒動が終わってしまったとしても何か大きく変わったことはない。
スティラは結局ポンポーティル家から出て行くし、ポンポーティル家も悪い評判が広まり、将来的に少しずつに衰退していく形にはなるだろうか。今すぐ家が取り潰されるわけでもない。
だけど全体的に良い方向に進み、才ある若者達が正当な評価を受ける。
儂は成人後の人生をこの生き方で歩んでいくべきなのかもしれん。
前世200年でも……もっと上手くやればたくさんの若者を助けてやれたんじゃ。
今世では未来を担う若者達を人知れず救っていきたいと思う。
騒動後消えようと思っていたらシャルーンとスティラに捕まってしまう。
思ったより儂のことを見ていたらしい。
「そう簡単に逃がさないわよ。あなたには言いたいことがたくさんあるんだから」
「そうです。そうじゃなきゃ気がすみません!」
「儂のような才能無しのE級剣士に何を言うんじゃ」
シャルーンが一歩前へ出た。
「クリムゾンドラゴンを討伐したことで私は国王から勲章を頂くことになったわ」
「ほぅ、おめでとう。めでたいことじゃないか」
「あのドラゴンはあなたが大半のダメージを与えたでしょう。勲章を授かるのは私じゃなくて、クロス……あなたよ」
「だがトドメを刺したのはおぬしじゃシャルーン。それにおぬしを補佐した騎士もあの村の者達も皆、あの赤トカゲはシャルーンが倒したと思っておるよ」
「ええ、あなたが吹聴したせいでね!」
気を失って村に運び込んだ時、儂は通りがかりの旅人を装った。
シャルーンが赤トカゲのトドメを刺して気を失ったので、助けたという話にした。
何一つ嘘は言っていない。
「クロスさん」
「スティラ。おぬしはあの時言ってたようにポーションの会社を作るのか? 出来上がったら是非とも使わせてもらおうかのう」
「わたしはしばらく瓶ポーションの研究を控えようと思います」
「なぜじゃ。王家も認める最高性能のエリキシルポーションを生み出したのはおぬしじゃろう」
「ええ。でもエクスポーションもエリキシルポーションもクロスさんのレシピを元に生み出したものです。あなたならもっと早く生み出せたんじゃないですか。第一人者の名前はクロスさんが得るべきだったんです」
「だが作成し、鑑定人や王家に認可されたのはスティラ、おぬしじゃ。あの観衆も皆、ポーションはスティラが作り出したと思っておるよ」
「あれは勝負事の勢いでっ! そんなの駄目じゃないですか!」
S級の才能を持っているスティラならいずれエクスもエリキシルも作れたと思うぞ。
ただ儂の方が早く理解しレシピを作っただけなんじゃ。
「それにクロスさんがE級のプローフカードを持っているのはおかしいです」
「そうね。私が掛け合ってあげるわ。私より強い剣士がEだなんてありえないわ」
「それがありえるんじゃよ。才能がなくたって年月さえかけえば誰でも経験は積める」
だから儂は才能Eランクで間違いないのじゃ。
そこははき違えてはならぬ。
儂はこの子と同じような才は持ち合わせおらん。
「だとしてもあなたも私達と同じように正当な評価を受けなきゃだめよ!」
「必要としておらん」
前世であれば得ても良かったのかもしれない。
儂はすでに第二の人生を歩んでおる。前世の儂の力を使用しているだけなんじゃよ。
もし正当な評価を得るのであれば儂ではなく、前世の儂の名で得なければならぬ。
だから今のクロス・エルフィドに名声はいらん。
「儂は名誉などいらん。だからおぬし達に成果を押しつけた。それだけのことじゃよ」
「クロス」「クロスさん」
200年生きていなければありのままの喝采を受け入れたのかもしれん。
しかし儂は本来風来坊のように生きる男。例え新しい人生になったとしてもその生き方だけは変えたくない。
だが才ある若者の手助けだけはしたいんじゃ。200年自分勝手に生きてきた男の世界に対する恩返しなんじゃよ。
表の英雄を支えていけるようにしたい。
「だから二人とも儂の代わりにもっと偉くなれ。そしてたくさんの人の手助けとなってくれ。困ったことがあれば儂が助けに入ろう。じゃが時代を作るのはおぬし達じゃ」
「同い年とは思えないセリフね」
「クロスさん達観しすぎです」
人生二度目であることを言う必要はない。
苦笑いで収めておこう。
さて、問題はこの後じゃな。
「おぬし達はこの後どうするんじゃ」
「私は当然王都に戻るわ。来月から王立学園に入学するからそれに通うことになるわね」
「王立学園! 世界でもトップレベルの授業が受けられる学校ですよね!」
「スティラも入学するなら大歓迎よ。まだ後期入学できるはずだし」
「あはは、学園はちょっと……。お金も足りないですし、研究もしたいですから」
王都にあるんじゃったな。
王国だけでなく、他の国からも生徒を集める政治、剣術、魔法の全てを学ぶことができる学園じゃったか。学校へは行ったことがないからちょっと興味が引かれるが。
「スティラはどうするのよ」
「わたしは王都の冒険者ギルドに行こうと思っています。S級になってさっそくお誘い頂いたので……」
「ふふ、当然ね」
「そこで特級薬師になって薬術の研究をしようと思ってます。素材などを冒険者経由で優先的にまわしてもらえる代わりに回復薬を提供するという形ですね。特にヒーリングサルブに興味がありますから」
そういえばスティラはあれに興味があると言っていたな。
儂も王都に行ったら、自分以外の作成者のことを聞いてみるか?
いやどうでもいいな。若者が頑張ってるのを邪魔するわけにはいかん。
しかし冒険者ギルドか。昔父上が所属していたと言っていたな。
前世ではまだ無く、出来た頃には人と関わらず生きてきたからな。
魔獣を倒したり、素材を採取したりしてランクを上げて、世界中の未探索地に出かけて踏破していく。
前世でも一人で旅をしていたからぴったりといえばぴったりだ。
「それで?」
「クロスさんは王都で何をするんですか」
いきなりシャルーンとスティラに問い詰められる。
「うーむ、ひとまず家を探して……そっからどうするか決めようかのう」
シャルーンが大きな声を出してきた。
「だったら一緒に王立学園に通いましょ。今なら受験も間に合うし、剣術だけで受かる学科もあるから!」
「しかしかなりの学費が必要じゃろう? 勉強には興味あるが」
「奨学金があるし、何だったら私が持ってあげるから!」
「なんでおぬしが払うんじゃ」
「そ、そんなの……。もう! あなたの実力をあなたの側で勉強したいの。もっと私は強くなりたいんだから!」
シャルーンは王立学園へ招待してくれる。
確かに学園ならたくさんの若者もいるし、才ある者もいるじゃろう。
身分差などで不当な目に合う若者を助けてやれるかもしれん。
学園受験……してみるか?
「そ、それか冒険者ギルドなんてどうでしょう!」
心が動きかけた所でスティラが言葉を差し込んでくる。
「クロスさんが冒険者ギルドに入ってくれたらすごく心強いです。魔獣の素材とか取ってきてほしいです!」
「うーむ、じゃがそれは他の者でもできるんじゃないか」
「それだけじゃないです。一緒に薬の研究もできるじゃないですか! クロスさんの知識を勉強に役立てたいです!」
「儂も薬作りは好きじゃからのう。合っているかもしれんな」
スティラは冒険者ギルドを薦めてくれる。
確かにギルドなら年齢バラバラだがたくさんの若者がおるし、才ある者もおるじゃろう。
最近は追放される若者の話も聞くし助けてやれるかもしれん。
冒険者ギルド……に登録するか。
「クロス!」
「クロスさん!」
シャルーンとスティアが迫ってくる。
「私と王立学園に通おう!」
「わたしと冒険者ギルドに行きましょう!」
二人からのお誘いを経て、儂は決めることにした。
儂は……。
◇◇◇
「運び屋になることにした」
「なんでよ!」「なんでですか!」
儂、クロス・エルフィドは小型オンリーの爆速運送屋【ハヤブサ】に就職することになった。
フラグクラッシュその①:お約束の学園モノや冒険者ギルドへのフラグをたたっ切る。
1章からいろんなフラグを折っていこうかと思いますのでお愛読頂ければと思います。





