43.
「みんなよく集まった、まずは初対面だからな、名乗りを上げろ」
主催者であり最高権力者なので俺が進行する。こんなお祭り騒ぎになるなら司会進行役とか決めときゃよかった。第一の子分であるピーパーティンもルビィも、完全にお祭りを楽しんでいるからぜんぜん役に立たない。
今のとこ一番俺の言うことを聞くザランが堂々と前に出た。
ダークエルフたちからはごくりと息を飲む気配があった。ザランは見た目だけは立派だからな。一応実力もあるけど中身はただの猫だけどな。大型の魔物も多い樹海にも、こんな美しい毛並みと角を持つ大型獣はいないだろう。
しかし、見た目も実力も立派なのに、喋ったら残念なのがザランである。
「我は草原の王ザラン、ダークエルフどもが頭を下げて頼んできたというから勝負を受けてやろう」
頭を下げたなんて言ってないんだけど。何故か俺がヤオレシアに睨まれたが、言ってないよと首を振っておく。ザランは後できつく叱っておこう。
次に負けじとヤオレシアが前に出てきた。こちらも威厳と実力だけは確かだ。外見の良し悪しなんてどうでもいい魔物どもだが、オーガたちも「良い体格してんじゃねーか」みたいな目で眺めている。
だが、短気で損気な性格はザランに勝らずとも劣らないのがヤオレシアである。
「私はダークエルフの長ヤオレシアである、獣が泣いて乞うてきたというから勝負を受けてやる、有難く思え」
あ、これダメかも。もう獣たちとダークエルフたちがブチギレたヤンキーみたいな顔でガン飛ばし合ってる。ダークエルフもなんやかんや言って喧嘩っ早い。
それでも、周りがお祭りモードだからそこまでピリピリしない。いいぞやれやれと戦意満々の野次が飛びかうけれど、賭け事というものもあまり広まっていないから、雰囲気もただのどんちゃん騒ぎだ。
「うんうん、どっちもヤル気があって良い、今回は公式試合だから審判を置くか、クーラン暇してんだろ」
「任された!」
俺が頼まずとも勝手に任されてくれた。岩場の雑魚どもだと審判どころじゃなく戦闘に巻き込まれて死ぬ恐れがある。クーランならば身を守りつつ戦況を見極められるだろう。
「じゃあルールは五回勝負で多く勝った方が勝ち、武器も魔法も使っていいけど殺すのは駄目だぞ」
草原の獣たちは相撲を知っている。ダークエルフにも事前に魔界流相撲のルール説明はしてある。人型のダークエルフと獣たちでどれだけ戦えるかはわからないが、最低限死んでいなければ俺がいくらでも治療できる。
出場選手はそれぞれ四名ずつ腕に自信のあるものが選出されてきている。最後はボスであるザランとヤオレシアの取り組みで計五試合あるから、三勝取った方が勝ちということになるが、例え部下たちの試合で勝敗が決したとしてもボス戦をしないわけにはいかない。結局はザランが勝てば草原チームの勝利、ヤオレシアが勝てば樹海チームの勝利ということになるだろう。
じゃあ最初の部下たちの試合いらないじゃんということになるが、これはあくまでも親睦会だから、勝ち負けなんか二の次なのだ。試合をすることが大事なのだ。
「勝っても負けても恨みっこ無しだからな、良い勝負を期待している」
俺は偉そうに言うだけ言って、土俵の真正面に座り込んだ。審判はクーランに任せたが土俵を示す結界を張っているのは俺だ。今回は観客が集まり過ぎているので、武器や魔法攻撃が土俵外へ飛んで行かないようにもしておいた。
読んでの通りただのお祭り騒ぎなので、バトルは期待しないでください。
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