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なんども駆け落ちされた伯爵子息カールの行く末は……  作者: 星野 満


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ゴメンなミケ

※ 2025/11/6 タイトル変更&修正しました

◇ ◇ ◇ ◇



ミケはライ老人の言う通り、刺客が放った投げ刃で一瞬にして命を落としたと、ライナス殿下の手紙から分かった。


殿下が僕に手紙を寄越したのは、僕の怪我が思った以上に重症だった為だ。


解毒がなかなか進まず、2週間くらいは病室のベッドから出ることはかなわなかった。

その間、ライナス殿下やウェンディ姫たちが、お見舞いに来てくれても会うことは叶わなかった。


正教会の医師とライ老人は僕の面会も謝絶したのだ。



王宮殿から僕の大怪我を、実家のマンスフィールド伯爵家に直ぐに連絡したらしい。


その夜、僕の命が助かるようにと、祖父と父は無神論者のくせに寝ずに神に祈願したそうな。

僕が助かると泣いて神に感謝したそうだ。


それを後で聞いた僕は、祖父も父もいくらか僕に愛情はあるのだなと実感した。



◇ ◇



ライナス殿下の手紙によれば、ウェンディ姫はミケをとても可愛がっていた為、今回のミケの壮絶な最期は相当ショックだったらしく、2,3日は寝込んでしまい、その後も放心状態が続いたという。


それでも自分を助けてくれた勇敢な猫として、王族専属の画家がミケの肖像画を描写した絵を見て、心が慰められたそうだ。


その後丁重に自分の手でミケを埋葬した。

埋葬場所はウェンディ妃のたっての願いで、亡き母アクアリネ妃の霊廟に埋葬して欲しいと希望した。


さすれば、姫がミケの命日にお墓詣りをできるからだという。


ライ老人が僕の纏っていた猫の邪気はすっかり消えたといった。


(ごめんよカール、あチキは君をとても苦しめたんだね)


僕はあの襲撃時、ミケが僕の側に擦り寄った時の事を思いだした。



──そうか、ミケはあの時、僕と分かれる決心をしてウェンディ姫の盾になったんだ。


だから、ミケの死と共に、光の邪気はあの夜、僕から消えてしまったんだな。


あの日を境に、ミケからの心の声は何も聞こえなくなった。


なんだかなぁ……


僕は脱力したがクスッと苦笑した。


ミケ、猫のくせに“あちき”なんて言葉遣いをして、お前は本当に風変わりだったよ。


カレンの墓にいた置き物猫から転生したミケ。


最初は、生意気で過去の異世界のウンチクばかりたれていたっけ。


あの時はいくら僕と風子嬢の縁を結ばせたいとはいえ、僕のフィアンセ3人の令嬢に駆け落ちを誘導したと、自慢げに語ったミケに僕は怒りの頂点に達した。


だが──ミケがウェンディ姫が刺客が襲われた時、自ら命をはって姫を助けてくれた。


その事に僕は感謝と感動さえ感じていた。


もともと猫好きでミケ猫が大好きだった僕だ。


僕がミケの顎を撫でてやると、嬉しそうにゴロゴロと声を鳴らした。

ふわふわのお腹周りのモフモフ感が気持ち良かったのが忘れられない──。


「はあ……」


僕は大きな溜息をついた。



──こんなにあっけなく別れがくるのだったら、もっともっとミケを優しく撫でて可愛がってあげればよかった。


ごめんなミケ。

お前のこと化け猫なんて揶揄して……


お前はウェンディ姫の命の恩人だ。


ミケの雄姿を、優しさを、僕はけっして生涯忘れないぞ。



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