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なんども駆け落ちされた伯爵子息カールの行く末は……  作者: 星野 満


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2度目の駆け落ち令嬢(2)

※ 2025/9/28 修正済み

※ ※ ※ ※



元フィアンセの両親が我が家を去った後、祖父は悪びれもなく僕に言った。


「まさか、あの令嬢がそんなふしだらな女だとは思っても見なかった。ほんに人は見かけによらないものじゃな」と。


──何いってんだよ。お祖父様、僕の身にもなれって! 


今回はさすがに僕は腹に据えかねて、祖父と父に怒った。


「2人共一人息子(孫)が侮辱されたんですよ! 平民の異国人とフィアンセが駆け落ちなんて信じられない話だ。伯爵家の娘ともあろうものが情けない。親の教育も悪かったのでしょう。──高位貴族の矜持(きょうじ)は一体どこへいったのか!」


僕はカンカンに怒ったが2人は全く意に介さない。


逆に父上は僕に落ち度があるような発言までしてきた。


「カール、お前は厳ついし、顔も見るからに仏頂面で令嬢たちは内心、お前に恐れていたのやもしれん。──また令嬢たちに花や菓子などの贈り物をケチった事はないか? 女は贈り物をケチる男を嫌うぞ、そもそもお前は朴訥すぎて男と接する場合はいいが、令嬢たちから見るとつまらん男に見える。だからいつも彼女たちに愛想をつかされるのではないのか?」


「は?」


「そうだ、その通りだ!カール私も同じ意見じゃ!」


側にいた祖父まで父上に加担し始めた。


「家長の言う通りだ、どうもお前は顔は仕方ないにしても令嬢に対する笑顔が事足りん。昔からライナス殿下のような愛想がないとワシは常日頃から心配しておった。令嬢たちも厳つい朴念仁(ぼくねんじん)のお前では、愛されている意識が乏しいのじゃろう。だから彼女たちは淋しくて他の男に目がいくのやも知れんぞ!」


「はあ?」


──()()()()()()()たち、何をグダグダとほざいてやがる!


なぜここで僕がライナス殿下と比較されなきゃならない。

殿下は確かに令嬢たちに愛想がいい、というより単に笑い上戸なだけだ。


それに今更僕の顔が厳ついなんて余計なお世話だろう。


そもそも僕は父上の若い頃とそっくりではないか?


おまけに花と菓子をケチっていただって?


失敬な、勿論それなりに工面して渡していましたとも!


量が足りないなんて……だったら小遣いを、もっと僕に渡してくださいよ!


父上たちは、ビタ一文寄越さず、それどころか僕があなた達のポーカーで損したツケを給金で払ってあげたのを忘れたのですか?



実は我がマンスフィールド伯爵家の領地は広大だが、各地域の土地は痩せて貧しく領民の課する税も少ない。その為、税収だけでは事足らず我が家の家計は疲弊していた。

それでも貴族の暮らしともなれば、諸侯とのつきあいは必然で諸々経費がかさむ。これまでは先祖たちが残してくれた貯蓄でなんとか賄ってきたが、それも底を尽きかけていた。


経費削減として仕方なく屋敷の家令も最少人数に減らして、今はどうにかこうにか伯爵家の体裁を繕っている始末だ。実際、親類縁者から少しだが借金もしていた。


だからこそ僕は正騎士となって必死に働いてるのに……


僕の王宮騎士団の給金は全部家に入れている。


父上たちは何も働きもせず、領地経営だけをして昔通りの贅沢三昧の暮らしをしているくせに、我が屋敷だって抵当に入る寸前なんだ。


なのに、ああ〜冗談じゃない!


一体僕が彼女らに何をしたっていうんだ!


少ない小遣いをなんとか工面して、花やお菓子を持って優しくフィアンセとして、彼女たちに敬意を表していたのに!


僕は2人の言葉に無性に腹が立って仕方がなかった。


「お言葉ですが父上、お祖父様、その言い分はとても心外です。元フィアンセたちには花も菓子も十分贈っていました。不手際は彼女たちです。第一僕は貴方たちが勝手に決めた縁談をいつも素直に承諾してきました。それなのに父上たちが選んだ性悪女たちの、無鉄砲な駆け落ちを僕のせいにしないでください!」


僕は2人に本気で怒った。


「よしよしわかったカール。私たちはもう金輪際(こんりんざい)干渉せん。だったら、今度はお前自身でフィアンセを見つけてきたらどうだ?」


「おお、そうじゃそうじゃ!」


父親と祖父は僕の怒りなど気にもせずにさらりとどこ吹く風で返した。


僕は思わず両手の拳を握りしめて発言してしまった。


「ええお祖父様、父上も分かりましたよ。今度こそ絶対に、僕自身で駆け落ちしない淑女(レディ)を見つけてきますとも。そう、僕だけを慕ってくれるとびきりの令嬢をね!」

と僕は意気軒昂に宣言をした。


※ ※


それから2年が瞬く間に過ぎ去っていった。


この間──祖父と父には偉そうに宣言したものの思った以上に、僕のお眼鏡にかなう令嬢は中々見つからなかった。


そうこうしている内に晴れて僕は21歳となった。


成人となった僕は我が家の領地の一部を譲り受け子爵を賜った。


そして僕は若い貴族倶楽部が主催する、ある高位貴族の社交パーティーで1人の美しい令嬢と出逢った。

その時、僕は生まれて初めて真実の恋に落ちたと確信した。


彼女の名は、エリーゼ・フォン・シュタインバッハ。


王室とゆかりのある筆頭侯爵家の御令嬢だった。




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