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なんども駆け落ちされた伯爵子息カールの行く末は……  作者: 星野 満


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姫の決意(1)ウェンディSIDE

※ 2025/10/16 タイトル変更本文修正済み


◇ ◇ ◇ ◇



王宮殿のサンルームテラス。

午後の爽やかな日差しの中でライナス王太子夫妻と、ウェンディ姫がティータイムを楽しんでいた。


「ウェンディ、お前デラバイト父王に婚約拒否の手紙を出したよな?」

「ええ書きましたわ、それがどうかいたしまして?ライナスお兄様」


ウェンディ姫はカモミールティーの良い香りに浸っていた。


「フン、なるほどな。ククッ……やはりそのせいか」

ライナス王太子が笑いながらカモミールティーに口をつけた。


そんなライナス王太子の表情にアメリア妃が気になった。


「何です殿下、意味深な笑い方して?」


「ククク、アメリア……悪い。いや先ほど父王から明日、デラバイトの親善大使としてレフティ伯爵がこちらに来ると聞いたんだ」


「あらまあ……」


「な、表向きは親善でもウェンディの想い人の“タイガーマスク”を観察してこいと、デラバイト国王に言われたんだろう、よほど国王とフィアンセはライバル(カール)が気になるらしい、これは愉快、愉快だよ、ワハハハハ!」


ライナス王太子は、事の顛末が面白くて仕方ないようだ。




──変ってないわ、ライナスお兄様の笑い上戸は!


お兄様が一旦、笑いだすと中々止まらないんだから。

ほら御覧なさいな、お兄様の周りのお付人のげっそりとした顔を!


ウェンディ姫は瞬間、白目を向いた。


とはいえ、さも初めて知ったといわんばかりに私はすっ呆けた。


「まあ、レフティ伯爵様がこちらに来るのですか?」

と白々しくもカップを慌ててソーサにガチャンと敢えて強く置いた。


ふ、こうすれば、さも私が驚いたように思ってくれるだろう。



──そうだ、お父様ならやりかねない。


カール様を一目見ようと、使者をつかわして偵察するくらい分かってた。

それでもレフティ伯爵様、直々お見えになるとは意外だったわ。



ウェンディは瞼を閉じてカモミールティーをごくりと飲んだ。


逆に驚いたのはアメリア妃の方だった。

「まあ、レフティ伯爵って、確か宰相のご令息でウェンディの婚約者がいらっしゃるの?」


「そうだ。リチャード国王もせっかく溺愛していた娘を手放す気になったのに肝心の娘が婚約者を拒否するとはな。流石にいい気はしないだろう。だから当人を直接こっちに寄越してどういう男か見て来いと葉っぱをかけたのだろう。ワッハハハッ!これは愉快、愉快!」


ライナス王太子の爆笑は止まらない。


「ライナスお兄様ったら、笑いごとではないですわ!」


「うふふ、ウェンディどうするの? フィアンセがカールを観にくるってよ、何だか面白い展開になってきたわね!」


アメリア妃も扇を広げてひらひらと揺らしながら、クスクスと笑い出した。


「もう、アメリア姉様まで!」


ウェンディはあきれた。



──どうも()()()()は、人の恋路が(こじ)れるのを面白がってるわ。


ふたりは共に絵に描いたような笑い上戸だし、まったく似たもの同士だわ、


とウェンディ姫はため息を(こぼ)した。



それにしてもあのレフティ様がいらっしゃるなんて……お父様ったら、私に宣戦布告なさる気だわ。


お父様の目論みは、私を降家するにしても国内の貴族でなければって事ね。

娘を助けた男とはいえ、異国の男と結婚するのを許さないのね。


せっかくタイガーマスク様……カール様のお気持ちを私に向けさせたばかりなのに……


ウェンディ姫は地団駄を踏みながらも、レフティ伯爵と会うのは気が引けた。



レフティ伯爵はけっして悪い御方でない。


だからこそ私は彼に会いたくなかった──。





※ ポイントつけてくださった優しい方、いつもありがとう御座います。

とても書くモチベーションになります。

深く感謝致します。m(__)m

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