ウェンディの告白
※ 2025/10/13 タイトル変更及び修正済み
◇ ◇ ◇ ◇
「カール様は、私の婚姻を知って誠におめでたいと思っておりますの?」
ウェンディ姫は僕に問いかけた。
「それは……」
僕はいいかけたが、ウェンディ姫の真っ直ぐなブルーアイズから眼を逸らしてしまった。
──なんだろう、姫は僕に何を言わせたい?
「カール様──」
今度は僕の両手をすかさず握りしめるウェンディ姫。
「え、ウェンディ姫、何を──」
「はしたないことは重々承知です。でも私、カール様をお慕いしております、貴方だって既に私の気持ちをおわかりのはずでしょう?」
「!?」
「みゃぁ~」
とミケがさも嫌そうにウェンディの膝から横にずれた。
「ウェンディ姫……お手をお離しください、こんなところ誰かにみられでもしたら……」
「いいえ離しませんわ。私はあなた様に命を助けられたのです。まだきちんとお礼すらいってませんでしたわ、カール様は私の恩人です、本当にどんなお礼をしても足りませんわ!」
「そ、そんな……僕は護衛として当たり前の事をしただけです。本当に姫様が助かって安堵いたしました」
「カール様──!」
ウェンディ姫の瞳は最高にキラキラと、いやキラキラ通り越してギラギラとなった。
「はいぃ?」
──おい、ミケよ、これは困った、なんとかしてくれ!
僕は女性からこんな風に積極的に迫られた経験はないんだ!
「にゃあ~ご」
と泣くだけでミケは素知らぬ顔をして、ペロペロと毛づくろいに励んでいた。
──こいつ、化け猫のくせに、こういう時だけネコのふりすんな!
僕は、ミケがうらめしくて仕方がなかった。
ウェンディ姫は僕の手を更に強く握りしめてきた。
「私は何故かカール様を見てると、自分が何か行動せずにはいられなくなるのです。これってとても不思議だと思いませんか?──正直、あなたのこと何一つ知らないのに……そもそも一体、何故私はあなたを見ると失神するのかしら? そこからして自分でもわからないのです」
「そ、それは……以前、ライナス王太子と私の話を聞いた前世のせいでしょう!」
僕は何とかこの場を変えたくて必死に訴えた。
「なんでも僕は日本という異国に生まれて“モーニング3”という歌劇舞踊団に属してるカレンと言う者で、あなたはJKというなんだったかな?──ああ、そうだ女子学園生で風子嬢という名で僕の崇拝者だったそうです、きっと前世のせいでしょう!」
「ええ、ライナスお兄様からも、そのくだりはあの後で質問攻めにして全て聞きましたわ。でも私には、まったくフウコ嬢という自覚がないのです!」
「ごもっともで、僕もカレンなんて男の記憶ないですよ。第一、歌って踊る職業なんて貴族にはあるまじき行為だし今の自分には検討もつかない……」
「でも、私がこんなにあなたをお慕いしてしまうのは、よほどフウコ嬢は前世はカレン様でしたっけ?──あなたの事をお好きだったのではないかしら?」
とウェンディ姫の柔らかな手を強く握りしめる。
僕はその手の柔らかさにドギマギしっぱなしだ。
「ま、まあ……そうでしょうね。なにせあなたはカレン(僕)が病で亡くなってからも、ひたすら毎日お墓に通ったというのですから……」
「まあ、毎日も?」
「ええ、なんでもこいつがいうには……雨の日も雪の日もかかさずに通ったといってましたよ」
「まあ、何て事かしら。それほどまでフウコ様はそこまでとは。ならば私はあなたのことを本当に愛していたのね」
「僕というかカレンにですけどね」
「分かりましたわ。ならば私もあなたを愛します!」
「ええっ?」
僕は驚愕した、慌ててウェンディ姫の手を離した。
「ウェンディ姫、お戯れはやめましょう!」
「いいえ、カール様。フウコ嬢は今世で私になったのならば、願いをかなえてあげるのが本望ではなくて?」
「あいや……それは、少し可笑しくないですか?──実際、今のあなたはウェンディ姫だ。フウコ嬢の生まれかわりという自覚すらもない、恋愛はあなた自身の気持ちで、自由に殿方を愛せばいいのではないですか?」
「まあ、素敵な貴公子的なご意見ね。流石カール様ですわ。ならば再度、私はカール様、あなたをお慕いしております。私はあなた以外とは誰とも結婚いたしませんわ」
ウェンディ姫は、にこやかに微笑んだ。
「!?」
僕は、もう顔中汗まみれになっていた。




