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なんども駆け落ちされた伯爵子息カールの行く末は……  作者: 星野 満


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ダンスパーティーの決死の攻防(2)

※ 2025/10/9 修正済み

◇ ◇ ◇ ◇



その後、パーティーは順調に進んだ。

王太子妃の挨拶の後、自由にパートナーを従えて、高位貴族たちが王室楽団の演奏する軽やかな曲に乗って、美しい弧を描くように男女たちが華麗に踊っていた。


ウェンディ姫も彼等の踊りの輪の中で、楽しそうに踊っていた。

彼女は、特定のパートナーはいなかったので、王太子の後で高位貴族の令息たちから、ひっきりなしにダンスの申し込みを受けていた。


彼女は楽しそうにパートナーと代わる代わる踊っていた。


ウェンディ姫はこの国へきてからずっと後宮内にいたので、久しぶりのダンスが楽しいのだろう。

僕はとても嬉しそうなウェンディ姫の姿を見つめるだけで幸福な気分になった。


無論、護衛としてタイガーマスクの中では、ブラウンの瞳は鋭く、会場内に不信人物がいるかどうかのチェックは怠ってはいなかった。



──できるのであれば、このまま彼女の護衛として、一生仕えることはできぬものか?


僕はふと思った。


危険な姫君を守る剛健な騎士、それだけでいいのだ。

ウェンディ姫のお傍に仕えるだけで僥倖(ぎょうこう)だった。


呪い猫のミケよ、どうか僕の願いを叶えてくれたまえ!



その時だった──。

 

「ガシャーン!!」と大きなガラスが割れる音がした。


見ると一番前の大広間の窓ガラスが2つ、大きく割れて突然、数人の黒装束の者たちが侵入してきた。

ここは2階の大広間である。ロープを伝ったのか、屋根づたいかはわからんが、窓から次々と侵入してきた。


その数、目視で約10人はいるか?


──いや、まだまだ侵入してくる、全員黒装束で口元を隠して目だけしか見えない。


不思議と帯刀はもっていなかった。


「わあ!」

「キャ──!」

「ひぃ──!」


割れた窓の側にいた、食べ終えた皿や、飲み干したグラスの片付けをしていたメイドや給仕たちが悲鳴をあげた!


「であえ~、曲者(くせもの)だ!!」

「気をつけろ!窓から侵入者だ!」

「楽団は音楽をすぐに止めろ!」

「王太子夫妻を守れ!」


ダンスパーティーを警護していた騎士たちが大声で叫ぶ!


楽団たちのワルツの音色がピタリと止まった──。


突然何が起きたのか、ダンスを踊っていた紳士淑女たちが、音楽が止まったので、ザワザワし始めた。


大広間は突然の侵入者たちのせいで騒然となった。


ライナス王太子とアメリア妃も一瞬、驚愕(きょうがく)したが、顔色も変えず冷静に立ち上がった。


さすがは王太子夫妻だと僕は感心した。


後ろにいた警護(けいご)の王宮騎士団たちが10名ほど、すぐさま王太子夫妻を取り囲み、団長が中央に立ち、守備体制をがっちりと整えた。


「であえ~、であええ~曲者だ!」


「良いか、王太子殿下と(きさき)を守れ!」


不埒者(ふらちもの)め、俺が成敗してくれよお!」


広間の両端にいた護衛騎士たちも、一斉に黒装束の間者たちに帯刀から剣を抜いて切りかかる。


黒装束の男たちは軽業師のように、大広間内をトントンと跳び移るように宙返りをするので、護衛騎士たちの剣を上手くかわす。


「ち、なんてすばしっこい奴らだ!」


男たちは、なにやら手から掌サイズの星形の投武器を投げつけて、王宮騎士団の膝元や顔をめがけて攻撃し始めた。


「ウエッ!」


「ギヤー!」


「気をつけろ、投げた武器には刃が付いてるぞ!」

星型の投刃が騎士団の足に刺さると、バッと血飛沫が飛びちった!


──くっ、なかなか侮れない奴らだ!


とにかく身軽な者ばかりで、剣を振るうにも彼らの動きが早くて近づくことができない。


だが……


──まずい、ウェンディ姫が危ない!


「マルコ、ネロ不法侵入者だ、この場は騎士たちに任せてすぐにウェンディ姫を確保しろ!」


「「はい、カール隊長!」」


僕は、側にいたマルコとネロに指示して、剣を(さや)から抜いた。


僕に向かって星型の投げ刀が飛んできたが、難なく交わした。

そのまま剣を振り上げ1人、そしてまた1人と間者を一瞬で斬りつけた。


「ウゥゥ、」

「てぇっ!」


男達は肩を斬られて痛そうに(うずく)まる。



──殺しはしない、首謀者を捌かす(はかす)ためにお前たちには、痛手を与えるだけだ。


我ながら鬼神の如く、そのまま姫を探すために中央へ突進した!


大広間後方には談話席が何か所か設けてあり、若い男女のカップルがその場にいてゴチャついていた。


侵入者が現れたのも、ほんの何十秒か前なので、彼らはこの騒動が余興か何かの催しと勘違いして呆けた者もいた。確かに既に酒に酔っている者もいたから無理もない──。


まさか間者が2階の窓から堂々と王宮の大広間に、侵入するなんて夢にも思わない!


そのために、混雑していてなかなか行く手が(はばか)れて、直ぐにウェンディ姫が見つからない!



僕は、徐々に焦った!


姫はどこだ、 どこにいる!?!



その時、僕のタイガーマスクの瞳から姫の姿を見つけた!


いた──!


彼女は数メートル先に侯爵子息と2人で、憮然とした顔をして突っ立っていた。



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