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なんども駆け落ちされた伯爵子息カールの行く末は……  作者: 星野 満


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タイガーマスクの護衛騎士(2)

※ 2025/10/7 挿入修正済み

◇ ◇ ◇  ◇



アメリア王太子妃、元侯爵家の長女。

おおらかで公明正大、明るく楽しいお人柄でユーモアも長けた御方だ。

ただ1つ欠点があるとすれば……


「アメリア、俺が人にはない特別な邪気を感じ取れる力があるのは、俺が王族出身だからだ。つまり由緒あるスミソナイト王室の血脈だからだ!」


とライナス殿下はアメリア妃に当然の如く言った。


「だがカールはともかく、なぜデラバイト王国の王女ウェンディが、過去世とはいえ平民なんだ。そこからして俺は納得していない!」


「まあまあ、ライナス。流石に私も不思議だとは思うけど、過去世は異世界なのでしょう。元平民ならば来世は貴族に生まれたいと願うのは道理よ──それに考えてご覧なさいな。こんな怖い虎の被り物した護衛騎士が、ウェンディの側にいたら、この子に危害を加えようとする者はそれこそ恐れをなすわよ。私はグッドアイデアだと思うわ! ね、お2人さん?」


アメリア王太子妃はチャーミングな笑顔で、僕とウェンディを交互に見た。


「そう、そうですわ、アメリアお姉様の言うとおりです!」


「は、アメリア様、確かに抑止力にはなりそうです……」


ウェンディ姫と僕は同調した。


「ウフフ、それにしても面白いわぁ。クスクス!」


アメリア妃は、僕らがよほど可笑しいのか、扇で口を隠しながらも、先程からクスクスと笑ってばかりいる。



──そう、この方の欠点というべきなのか、夫のライナス殿下と同じく()()()()であった。


それにライナス王太子夫妻と僕は同年齢で、アメリア妃は僕を学生時代から良くご存じだった。

勿論僕もよく存じていて、アメリア妃は侯爵令嬢の学園時代からハツラツとした性格で、貴族令嬢のリーダー格だった。


容姿も燃えるような金褐色の豊かな巻き毛、ハシバミ色の瞳は光の加減で7色に変化する。

美しく聡明で、学園時代は下位貴族の令嬢に対しても対等に接していた。

良心的で部下たちからも信望熱いアメリア妃。


ライナス殿下は昔から彼女の崇拝者であり、聡明なアメリア妃には頭が上がらなかった。


僕もアメリア妃を尊敬している。

王太子妃になっても昔と変わらない、弱者に手を差し伸べる自愛があり、この御方が未来の王妃になる事に異存がある者は、誰1人としていないだろうと信じていた。


だが先程から、アメリア妃は僕とウェンディ姫の様子をずっと直視して、扇で口を隠しながらクスクス笑ってばかりだ。



──あ〜、何だろう。アメリア様の悪戯小僧みたいな笑顔。


とてもむず痒くていたたまれない!



◇ ◇



「陛下、そろそろ宴のお時間でございます。広間にお渡り下さい」


ライナス殿下の従者が来て開場の支度が整ったと知らせに来た。


「相わかった、では行こう!」

「はい、分かりました」


ライナス殿下一行は席を立った。


「カール、いやタイガーマスクよ、しっかりウェンディの護衛を頼むぞ、何せこっち(我が国)にきても未だに姫は命を狙われているからな!」


「は!殿下承知致しました!」



──そうだった。


冗談ではなくウェンディ姫は、スミソナイト王国に来てからも、密かに王女暗殺を図る使者がいると殿下の情報網から内密に報告があった。


その為に剣技の才があると僕が護衛騎士に抜擢されたのだ。

ウェンディ姫を警護する事に集中しなければならない。


僕は部下の護衛騎士2人に向かって

「おい、ネロとマルコ。分かってるな、パーティー会場内でもウェンディ姫の姿を、一度たりとも見失うなよ!」 


「「はい隊長!」」


「誰か少しでも不審な行動する輩がいたら、即座に私にいつものように目と手で合図しろ!」


「「はい、隊長!」」


「まあ、タイガー様。とても勇ましくて素敵ですわ」

と側にいたウェンディ姫が碧い瞳を輝かせて僕に囁く。


「え? いや……任務ですからね。ははは」

と、僕はみるみる顔が赤くなるのが自分でも分かった。


虎の被り物をしててほんとに良かったなと思う。



──だが、何だ、このウェンディ姫の囁き(ささやき)は。


このマスクを着けてから僕とウェンディ姫は、会話がスムーズにできてる!


いや、ウェンディ姫が積極的に僕に話しかけてくるのだ。



──やはり、彼女は僕のことを好き……なのか?

僕の胸の動機は彼女が微笑む度に、さっきから高鳴るばかりだ。



目前にいるウェンディ姫のローブデコルテドレスの麗しい背中の美しさが眩しすぎた。

どうも気がせって仕方がない。



──いかんカール、しっかりしろ!


ここからは一時たりとも気は抜けんぞ、ウェンディ姫の護衛をしっかりと果たさねば!


僕はタイガーマスクの仮面下で、自分の私情を叩き出した。




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